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ディンギーノッてる?(KAZI連載)

『もっと近くで』

October,2005

 text by Koji Ida

 

 

「ヨットって、もっとメジャーにならないのかなぁ?」

 

 

ハーバーで集う仲間たちや、夜に飲み屋で落ち合う友人たちと、セーリング競技について談義するとき、よく出てくるフレーズである。

 

 

「なんでマイナーなのだろう」

 

「もっとメジャーだったら……」

 

 

これらの話題は、この競技に携わる人間たちにとって、いちばん論争頻度の多いテーマのような気がする。

 

 

 

初めて出会う人に「ヨットやっています」と自己紹介した後、相手は「いいね〜、これでしょ!」といって、オールを漕ぐジェスチャーで自信満々に返してくる。

 

この類を体験したことのないセーリング競技者はいないと思う。

 

すでに僕には「それはボート!」と突っ込む気力さえも残っていない。

 

悔しさに、冒頭の台詞が頭をよぎるシーンである。

 

 

 

でも、メジャーと呼ばれるスポーツの定義は何なのだろう。

 

それが分からなければ、セーリングはメジャー競技になる為に、前進することはできない。

 

競技人口?

観客の数?

選手の収入?

 

おそらく、そんないくつかの要素が重なって、人々に“メジャーorマイナー”のイメージを植え付けているのだろう。

 

でも結局、みんなが思っているメジャー競技というのは、テレビに映るスポーツのことではないだろうか。

 

毎日のスポーツニュースに出てくるのが、メジャー。年に一回くらいしか登場しないのが、マイナー。

 

なんとなく、僕はそんな風に感じている。

 

 

セーリング競技は、一番テレビで取り上げにくいスポーツのひとつと思う。

 

波の上での撮影は困難だし、器材も痛む。

 

風がなければ待ちぼうけだし、撮れる映像も迫力がない。

 

ルールは分かりにくいし、勝負を左右する風の変化は可視化できない。

 

ビックボートのレースなら、まだ絵になってテレビ向きかもしれないが、小さなディンギー種目はやっぱり辛い。

 

テレビの人が取材に来ないのも納得できる。

 

それでも僕は、ヨットレースもどんどん映像に残して、みんなに観てもらえるようにしてもらいたいと強く願う。

 

でも、テレビの放送回数や視聴率で、その競技の発展度合いを評価されることに、少し疑問も感じている。

 

 

 

 

じゃあ、テレビに登場してこないセーリング競技は、やはりマイナーなのだろうか。

 

僕は、セーリング人口が、スキージャンプ人口より少ないとは思わない。

 

殆どの場合、大学のヨット部員数は、同校の相撲部員よりも多いと思う。

 

僕の知り合いに、女子柔道家はいないが、女性セーラーは沢山いる。

 

 

 

そう思うと、セーリングは全然マイナースポーツではない。

 

テレビにも新聞にも出ないのに、こんなに多くの人たちが取り組んでいるのだから・・・。

 

 

 

 

もしかしたら、マイナーだと卑屈に思っているのは、セーリング関係者だけかもしれない。

 

 

巷にはマリンファッションがあふれ、人々は週末になれば、日常生活とは違う風景を求めて、ヨットハーバーや海岸線に足を運ぶ。

 

おそらく、デートコースにボクシングジムの練習風景を求めるカップルよりは、遥かに多い。

 

結構、僕らは観られている。

結構、僕らの仲間は多い。

 

セーリング競技って、僕らが考えている以上に、結構メジャーなのだと思う。

 

ただ、観ている人たちにとっては、遠すぎて解からないだけなのだ。

 

 

 

もっと近くで、もっと沢山の人に観てもらえば、それでメジャー競技になるのだ、と安易に考える。

 

選手の動作や表情が見えるところまで、近づいてもらわないと解からない。

 

 

その為に、ディンギー乗りの僕ができることと言えば、一緒にヨットに乗ってもらうこと。

 

効率は悪いかもしれないが、一番手っ取り早くて、一番ヨットのことを分かってもらえるはずだ。

 

 

僕はヨットをよく観ている。

 

一番近くで観ている。

 

 

だから僕にとっては、セーリングはメジャースポーツなのだ。

 

 

 

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