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徒然なるままに〜(協会WEB連載)

『西半球選手権2002にて』

October,2002

 text by Koji Ida

 

回のテーマは、この前(2002年)に行われた西半球選手権で感じたことについて。

 

と言いましても、今回は南米やアメリカの選手たちのチューニングやボートセッティングを細かく見てきた訳ではありません。

 

前回アルゼンチンでの大会のときは、いろいろ見て廻ったり、聞いて廻ったりしたのですが、今回は自分自身のレースに集中しようと考えていましたので、意識的に他艇を気にしませんでした。

 

前回アルゼンチンでの調査結果は、島津製作所ヨット部のホームページで紹介させて頂いたのですが、管理者(私のパートナー)の怠慢で、ホームページ自体が無くなってしまいました。ごめんなさい。そういう訳で、取り敢えず私の今回のセッティングについて書かさせて頂きます。

 

惨敗した奴のセッティングなんて知っても、意味が無いかもしれませんが・・・。

 

 

今回の西半球では、私達ペアは現地でのチャーター艇での参加を選択致しました。

 

理由は、

@  艇を持って行くお金がないこと

A  持って行っても自艇が速くないこと

B  持って行こうと思っても、持って行く方法を良く知らないこと

C  最近の国際レースでの日本選手の成績は、自艇を持って行った選手よりも現地でチャーターした選手の方が、チャーターした中でも古い艇(悪い艇?)をチャーターした選手の方が、成績が良いというジンクスがあること。

 

やはりジンクスは要チェック。

結局最後は運頼み。

 

最高の運を得る為に、ラピュタの飛行石のペンダントをして行こうと考えたのだが、会社の近所のジブリショップに行ったが売ってなく、やむを得ず出発直前に関西国際空港のおみやげ屋さんでチタンのリストバンドを購入して、更に空港内のゲームセンターでマラカスのゲーム“サンバでアミーゴ”に運試しで挑戦し・・・。

 

これ以上書くとアホ丸出しなので止めておきます。

 

取り敢えず、そういう理由でチャーター艇で参加することとしました。

 

チャーターした艇は、‘97年製の艇番29248のピアソン。

 

一つ前のモールドのピアソンで、‘97年ワールドでデンマークの選手がチャーターして出場しており、その時結構速かったのを私も覚えていたので、その艇に決めました。

 

現地に行ってから分かったことですが、艇のオーナーは余りスナイプの乗らない人であり、結構良い状態で保管されていました。

 

艇体計測での重量はルールミニマムでバッチリ。

 

マストはプロクターミラクル。練習で使用しているのとほぼ同じハードが揃いました。

 

チャーター艇で参加する為、出来うる限り自艇と同じ状態に近づけられるよう、いろいろ備品を持って行きました。

 

メインシート、ジブシートは勿論、スプレッダー、サイドステー、チェーンプレート、バングシステム、ジブリーダー、ランチャーシート、マストホールドコンパス、くさび、アビーム用の短いフットベルト等々。

 

私達の使用しているサイドステーのチェーンプレートは一般に日本で普及しているピン式のものでなく、ネジ式のものなので、決めた数値に対してピッタリとアジャストすることが出来るので大変便利です。

 

でも今回の大会に向けて準備したものは過去に比べると少ない方です。

 

以前はティラーエクステンションや自分でマストステップの位置が測定できるように自作の治具と分銅と水平器なども持って行きました。

 

帰国時には重くて捨てましたが・・・。

 

今回はハーバーの近くに大きなマリンショップがあると聞いていましたので、持参するアイテムを最小限に減らしました。

 

チャーター艇を受け取ったら、まずコントロールロープ類の交換と配置の変更を行います。

 

海外でチャーターする場合、オーナーさんが凄くパワフルだとビックリするようなコントロールロープになっている場合があります。

 

今回もバングシステムが1/4くらいで引くようになっていました。

 

こんなの日本人で引けるのはお相撲さんくらいでしょう。

 

他の日本人選手で「どうしよう?」と悩んでおられた方も居られましたが、私達は自分達のシステムを持って行ったので、そのまま取り替えて2分で問題解決。

 

またジブリーダーのシステムも自艇のものを持ち込んで交換しました。

 

最近の海外の主流は、ジブリーダーのブロックにラチェットブロックを使用しています。

 

そうすると、標準のものよりもイン側にジブセールを引込むことが出来ます。

 

しかしコンディションによっては標準位置の方が良い場合もあるので、バーバーホーラーを使用してアウトに出したりしています。

 

私達もそうすれば交換する必要はないのですが、大きな問題があるのです。

 

私達はバーバーホーラーの使い方が分からない。

 

また使い方が分かっても使うのが面倒くさい。

 

だから標準のものに戻します。

 

どうです、立派な理由でしょう。

 

 

 

しかしながら、国際レースの場合は、オリンピックコースの場合、正三角形にマークを設定するのでウイスカを張れないリーチングの場面が多く、またコースも長いので、そのことを考えるとちゃんとバーバーホーラーが使えるようにならないといけないでしょう。

 

とまあ、そういったことも含めて、艤装品を殆ど全て交換していきます。

 

元々ついているシートの寿命がちゃんと持つかどうか分かりませんから。

 

目に見えないところで、中の芯が途中で切れかかっている可能性もあるからです。

 

マストのハリヤード類もちゃんとささくれてないか調べます。

 

実は借りたマストのメインハリヤードはささくれまくっていたのですが、なんとか持つだろうと判断して、そのまま使用しました。

 

ちょっぴり恐かったです。

 

日本の場合はメインハリヤードを当然のようにワイヤーを使用していますが、海外の場合はそうとは限りません。

 

ロープの場合があるのです。

 

今回もいくつかのチャーター艇がロープでした。

 

なるべく伸びないロープが使用されているのですが、強風時にカニンガムをガンガンに引いてくると、やっぱり下に下がってきます。

 

前回アルゼンチンのときに借りたボートはロープで、下がってくるのが気になったので、マストトップのグルーブに詰め物をしてブラックバンド以上にメインセールのトップが上がらないようにして、ハリヤードロープにテークルを組んでガンガンに引いて下がってくるのを防ぎました。

 

まあ今回はワイヤーでしたので、その必要はありませんでした。

 

 

そういった風にコントロールロープのフィッティングが完成したら、次はチューニングです。

 

最初にすることは、メインハリヤードの上げる位置をマストを倒した状態でメインセールを通してみて、ブラックバンドピッタリの位置を確認します。

 

そこをしっかりと確認しておかないと、メジャーを上げても正確性に欠けてしまいます。

 

マストを立てた状態で何処まで上がるかを見上げて確認するのではなく、マストを倒した状態でしっかりと確認します。ここで手を抜いたらいけません。

 

 

次はマストステップの位置を確認します。

 

正確な計測をするのは難しいので、取り敢えずピアソン標準のピンの位置であるかを確認します。

 

それからマストを立てます。

 

フォアステー、サイドステーの取付位置を計測して自艇と同じに合わせ、ジブセールをアップします。

 

これでやっとチューニングをとる為の準備が完了です。

 

今回の私達の採用したセールは、ノースセール・ジャパン製で、ジブはラジアルカットマイラーを練習用の古いものとレース用の新しいもの1枚づつ、メインはV−9とV−7を1枚づつ。

 

マストの種類が現地で借りるまで判明しなかった為、深いもの(V−9)と浅いもの(V−7)の両方を準備しました。

 

結局、普段から使用している柔らかいタイプのプロクターミラクルでしたので、V−9を使用し、V−7は用なしに終わってしまいました。

 

スプレッダーはプロクター標準の青い可変式のもので、付根のピンからシュラウドまでを約400mmにしました。

 

南米の選手に比べれば少し長めかと思います。

 

長めにしている理由は、私達の不得意な軽風以下でのコンディションで、サイドベンド量を減らし、少しでもパワーを得ようとした為です。

 

プロクターの場合はブラケット取付け穴が、前と後ろの二箇所あるのですが、私達は前側を使用しディフレクションを調節するボルトは使用していません。

 

フォアステーの取付位置はチェンプレの一番前、サイドステーの取付位置も一番前にしています。

 

レーキのセッティングは、シュラウドレーキ→レーキ(単位mm)という風に書くと、

 

@微風用 6450→6570

A順風用 6420→6540

B強風用 6380→6500

 

という数値で合わせました。

 

そこからが今回の味噌なのですが、3パターンのチューニングを風域別に使い分けようとするのですが、マストのデッキレベルでのポジションは、@の微風用のニュートラルポジションに合わせてフォアプラーとアフタープラーで固定しました。

 

未だ実験レベルなので、その理由や根拠はここでは記述致しません。

 

結果的に今回使用したセッティングはAの順風用のみでした。

 

事前練習では結構強い風が吹いたのですが、本番ではそれほど風速が上がらず、逆に微風用にセッティングしたら良かったかな?とちょっと後悔したレースも数回ありました。

 

結果から言うと、クローズのスピードはGOOD。

 

どの風域でも走り負けするといった場面はありませんでした。

 

しかも順風以上の風域ですと、スタート後に艇団の一線から徐々に頭を出すことが出来ましたし、1上までの順位も、前回アルゼンチンの時と比べると格段に良い結果となりました。

 

前回のワールドチャンピオンであるパラデラ(ブラジル)ともクローズのスピードで言えば、互角に走り合えたと思います。

 

しかしながら、微風で波の残っている海面では、他艇と比べてという訳ではないのですが、パワー不足を感じて走り辛い場面が少しありました。

 

ルーズなリグ設定により、波でマストが揺れたりすることなどが原因かもしれません。

 

その辺の対応が、練習でも本番でも詰め切れていなかったことが反省として残ります。

 

 

 

上〜サイド、サイド〜下マークのリーチングレグでのスピードもまあまあでした。

 

リーチングレグがあるのは、順風以上でのオリンピックコースのときに限られるため、波の出やすいロングビーチの海面では、セッティングの善し悪しよりもハンドリング技術で波に乗せられるかどうかがスピードに反映されますので、ハンドリングの調子が良かったのでしょう。

 

上マークを団子状態で回航した後、同時に回航した艇団および後続艇団を引き離して、先行艇団に食いついてサイドマークに向かえたので、とても良い感じでした。

 

ですが、さすがに国際レース。

上には上がいます。

 

ビックリするようなスピードで私達を抜いていくチームもありました。

 

3位に入ったマルコス(ブラジル)と松崎兄弟チーム。

 

この2艇のリーチングは速かったです。

松崎さん、またヨット教えてください!。

 

今回のレースの敗因は、1上順位を維持できなかったことと考えております。

 

国際レースでは、順風以下のコンディションではオリンピックコースではなく、ソーセージコースが採用されることが多くあります。

 

今回は期待通りの風が吹かず、ソーセージコースの採用が多かったのですが、私達の艇は軽風下でのランニングのスピードが明らかに遅く、レグも長いので、その影響をもろに受けてしまいました。

 

1上マークは良い順位で回航しても、さすがに各国の代表選手の集まった大会ですので、艇団が団子状態で回航し、差は殆どありません。

 

シングルで上マークを回航しても、長いランニングレグでスピードが無ければ2〜4艇に抜かれてしまい、25艇という少ない出場艇数なので、シングル確保どころかフリート中盤まで後退してしまいます。

 

たとえクローズのスピードが調子良くても、一度落とした順位を上げていくことは、このレベルの大会では並大抵ではありません。

 

ダウンウインドで落とした順位を挽回しようとし、少し欲を出したコースを引いて思い通りのシフトが来ないと、ドンドン先行艇との差が広がっていきます。

 

まさにミスが許されないレース展開です。

 

国内のレースで、いかに自分たちのミスが結果オーライでなあなあになっているかが分かります。

 

微風下でのランニングでのスピード不足は国内での練習のときから気付いていたのですが、「オクムラとピアソンの違い」「ロングビーチでは強風しか吹かないから」と割り切ってしまい、あまり追求しなかったのが、今回のキャンペーンの大きな失敗です。

 

 

しかし、前回アルゼンチン大会での、河の流速に圧倒されて自分達のセーリングが何も出来なかったことに比べれば、今回も後悔する点は残りますが、十分に自分達の実力を発揮することが出来たのではなかったかと思います。

 

実力を発揮した上で、実力が足りなかったので、結果は12位。

 

そう考えて、次回の挑戦に向けて実力を上げていかなくてはならないかと思います。

 

優勝したディアス(アメリカ)は48歳、7位に入ったイヴァーン(ブラジル)は何と63歳。

 

そう考えると私達も上達するための時間はまだまだ残っています。

 

イヴァーンはまだ上達するつもりでいますから。

 

彼は更に上達するために、来年の3月に日本に来て、マウント富士を拝みに行くんだと言っています。興味のある方は富士山で待ち伏せしてみてください。

 

私も未だスナイプ歴11年、ヨット歴14年しか経っていません。

 

学生の皆さんも、3年や4年の経験だけで自分の可能性を見限ること無く、いつまでも続けてみてください。

 

大学から始めた選手の中には、高校やジュニアからの経験者には勝てないと思い込んでいる人もいるかもしれませんが、60歳まで続ければ、最初の3年や5年の経験の有無なんて、本当にちっぽけなことです。

 

スナイプの奥は、とてつもなく深いですよ。

 

 

 

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