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ディンギーノッてる?(KAZI連載) 『ヨットは長さだ!』 October,2005 text by Koji Ida
「一体、いつまでヨットやるんだい?」
会社に入って10年目。
いままで何度も職場の上司から投げかけられた質問である。
その度に「定年までっす!」とか「会社を辞めた後に、ヨット辞めますよ〜」などと、愛嬌たっぷりに答えている。
上司からすれば、週末明けに練習疲れでポワワ〜ン状態になっている僕の姿が、非常にお気に召さないようだ。
そんな周囲の気持ちも納得できるほど、僕の月曜日は腑抜け具合がスゴイのだ。
でも、本当に僕はいつまでヨットを続けられるのだろう。
レースバリバリでいくのか、それともブルーウォーターでいくのか。
スタイルにもよると思うが、できる限り続けていきたいと思っている。
これから仕事や家庭での責任も増えるだろうし、幾多の障壁が立ちはだかるだろうが、いつまでも海に接しながら生活をしていきたい。
もしも僕が、セーリング以外の競技スポーツをしていたら、とっくの昔に体力の限界を感じて、選手を引退していただろう。
指導者などで競技にかかわり続けることはできると思うが、選手では難しい。
でも、ヨットという道具を利用するセーリング競技では、いまでも選手としてやっていける。
まあ、まだ体力の限界を感じるほど歳は取っていないつもりであるが、スポーツ選手としては若い方でもない。
でも、この歳になっても「スポーツ選手です」と自己紹介できることがうれしい。
他の競技を選択していれば、とっくに「単なるサラリーマンっす」としか言えなかっただろう。
セーリング競技に感謝である。
しかしながら、若いながらも辞めていく選手が多いのも事実である。
僕などは、あくまで恵まれている一例に過ぎない。
“ヨット”という高額な道具を使用しなければならないこの競技は、肉体的に継続が可能でも、経済的には困難なところ多々ある。
野球のグローブを買い換えるのとは訳が違う。
また、立地的な制限もある。
ヨットに乗るためには、海または湖に行かなくてはならない。
住む場所から水辺が遠ければ、移動にも時間と費用が掛かってしまう。
それが嫌だからといって、近所の公園でやる訳にはいかないのだ。
そんな障害をたまたまクリアしている人たち、もしくは、障害を乗り越えてでも続けたいと思うヨット好きたちだけが、競技を継続している訳である。
できれば、その障害が少しでもなくなり、競技を継続する選手が増えることを願う。
その方法を見つけることは非常に難しいと思うが、続けていなければ答えは見つからないし、続けている者の役割でもある。
いつかの宴の席で、親しい先輩選手が冗談交じりにこう言った。
「ヨットは速さじゃない、長さだよ!」
ハルの水線長のことを言っているのでない。
一時期の速さや結果よりも、如何に長くヨットを続けていけるかが重要だ、という意味である。
その言葉が妙に心に突き刺さり、そうだ!そのとおりだ!と酔いが加速していく。
若い選手が、本人の意思とは関係なく、諸事情によって競技を辞めていくのを見るのは、とても悲しいことである。
そんな悲しい気持ちのとき、職場の上司に「おまえ、一体いつまでヨットやるんだい?」と聞かれると、「あなたが居なくなるまでですよ!」などと、イヤミ満点な返事をしてしまう。
そんな自分を嫌悪して、いつも深い反省に入るのである。
だから若者よ、ちょっとやそっとのことで、ヨットを辞めないでおくれ。
オジサンたちと、もう少し一緒に遊んでおくれ。
少し辛いからって、あきらめてはいけないよ。
少し結果を残したからって、満足してはいけないよ。
だってヨットは、速さじゃなくて、長さなのだから。 ■
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