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ディンギーノッてる?(KAZI連載) 『パートナー』 Aug,2006 text by Koji Ida
「続けたいんですけどね、一緒に乗ってくれる人がいなくて・・・」
大学を卒業したばかりの若い選手たちに、競技を続けることを勧めたときに返ってくる、よくある返事。
セーリングを競技として続けていく為には、レースに使うボートやセールなどの道具と、それらを置く場所の確保がどうしても必要となる。
それだけでも結構大変なのだが、ツーマン・ディンギーの場合はこれ以外に「パートナー」というものを確保しなければ、競技活動を続けることはできない。
今さら言うまでもないことなのだが、実はこれが一番難しいことなのだ、と僕は感じている。
高校でヨットを始めたとき、ごく自然に一学年上の先輩とコンビを組んで、クルーを務めることとなった。
当時の高校ヨットは、FJとスナイプの二種目しかなかったので、ヨット部という集団の中にいれば、必ず誰かとコンビを組まなければならない。
でも二年のときの国体が終わり、翌年に向かって下級生と新コンビを組もうと思ったら、一つ下の学年には男子部員がいなかった。次の新入生が入るまで、誰ともコンビを組むことができなかったのだ。
パートナー不在のまま、不安な6ヶ月間を過ごすことになる。その期間、僕が海上練習をできるのは、誰かが余ったときだけ。
たまたまジュニアで経験を積んだ選手が翌春に入部してくれたので、そこからは普通に練習することができ、いい結果も残すことができた。
でも、あのまま誰も入部してくれなかったら、ぼくのセーリング人生は今頃どうなっていたのだろう、と恐くなる。すべてはパートナーのお陰である。
先日、オリンピックを目指している選手から、「いまのクルーが怪我をしたので、回復するまで一緒に乗ってくれる人を探しているんです・・・」という相談をもらった。
申し訳ないことに、いまのところ該当者を推薦できていない。目指すところが高いほど、そのパートナーを見つけるのは困難になる。
ひとりの競技者としては十分な実力を持ちながらも、パートナーを見つけるのに苦労している選手の話を聞くのは、一度や二度のことではない。
目標が高くなれば払う犠牲も大きくなるし、楽しいだけでは続けられない。
道具や置き場はお金で解決できる。 楽しいだけなら誰でもできる。
でも自分と相性がよく、同じ目標を共有できるパートナーは、そう簡単に得られるものではない。
でも逆に言い換えれば、そんなパートナーさえ確保できれば、すべてが揃ったようなものだ。
いま現在、僕には12年間コンビを組むパートナーがいる。同じ鳥取の海でヨットを始めた二つ年上の先輩なので、すんなりとコンビを組むことができた。
何度か大きな喧嘩もしたが、勝ちレースも負けレースも、多くの経験を共有させてもらった。もう二人ともいい歳なので、いつまで続けられるか分からないが、周囲の環境の許す限り、このコンビで上を目指していきたい。
ツーマン・ディンギーというのは、ペアで行なうスポーツの中で、二人きりになる時間がもっとも長い競技ではないだろうか。
1対1という、逃げも隠れもできない人間関係を、この競技を通じて学べたと思っている。
ここだけの話、けっこう結婚生活にも活かされている。相棒も奥さんも、まだ頻繁に怒らせてしまうのだが・・・。
最終的な目標を達成できるかどうかは、時の運も影響するだろう。
でも、信頼できるパートナーと一緒であれば、たとえ結果が伴わなくても、有意義な時間を過ごせたと思えるはずだ。
ツーマン・ディンギーで上を目指す皆さんへ。勝ちたいと思って何かを探しているのであれば、艇でもなく、セールでもなく、スポンサーでもなく。まずは良き相棒を。 ■
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