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ディンギーノッてる?(KAZI連載)
『風待ちの時間』 Jun,2007 text by Koji Ida
「一体いつになったら吹くんだろう」
風待ちの時間。ディンギーだろうとキールボートだろうと、ヨットレースに取り組む者にとって、まったく疲れるはずはないのに、もっとも疲れる時間の過ごし方。
とくに、海の上で風が吹くのを待っているのは、本当に退屈だ。
レースのとき。何時間も風待ちをさせられたあとに、「今日はノーレースにしますので、ハーバーに帰ってくださーい」と運営艇がまわってくると、「もっと早く決めてよー」 なんて、文句のひとつもこぼしてしまう。運営の人たちには、何の罪もありません。
家の中でも外出先でも、くつろごうと思って腰を下ろすのは、ソファーなどの柔らかくて心地のいい椅子である。
スターバックスなどのコーヒーショップに入ったときでも、なるべくそんな席を探してしまう。
じつは僕、結構な椅子フェチなのだ。
妻と街へショッピングに行った際には、小洒落た家具屋さんの店先に風変わりな椅子を見つけると、うずうずして座ってみずにはいられない。
そんな人、僕以外にも結構いるのではないだろうか。
まあ、こんなに椅子フェチであれば、学生時代にもっと机に向かっていてもよさそうなものだが、残念ながら、それは別。
しかしながら、そんなお気に入りの椅子でさえ、読書で一時間も座っていれば疲れてくるものだ。普通の椅子でもそうなのに、硬くて背もたれもないようなところに何時間も座っている人がいるならば、それは余程の変わり者だろう。
なんのクッション性もないFRPのかたまりの上に座って、ずっと風が吹くのを待っている“セーラー”と呼ばれる人々は、変人以外の何者でもない。
しかしながら最近になって、僕はこの風待ちが少し有意義に思えてきた。
歳なりに仕事も忙しくなり、家でも子供の相手でバタバタなので、“静かなところで、何もせずに過ごす”というのは、日常の生活の中ではナカナカ得られない貴重な時間だ。
数年前まで、レースの結果だけにこだわっていた頃は、風待ちの間もピリピリしていた。でも、いまではのんびりと風を待っていられる。デッキの上に横たわって、ボーとするのもいいかなぁ、なんて思えている。
しかしながら、それはあくまで“たまにはいい”くらいのレベルである。いつもいつも待たされるのは、やっぱり嫌だ。レース運営のみなさんには、何時まで待つかの予定くらいは教えてもらえるとありがたい。
次に僕がレースの運営側になったときには、風待ちの時間を少しは楽しくできるように、いろんな企画を試してみたい。
本部船からBGMを流してみたり、運営艇のひとつを“ソフトドリンク&スナック販売艇(着艇後払い)”にしてみたり。風が吹いていないから、海上での商品手渡しも容易にできるはずだ。
海の上では独占ビジネスだし、儲かりすぎたらどうしよう。
この原稿の掲載は、六月始めに発売される号かと思います。天気図には梅雨前線がチラチラと見え出して、うっとうしい季節の前触れを感じている頃かもしれません。
僕が二十歳代の血気盛んだったころ、夏に大きなレースを控えているシーズンなんかは、梅雨の雨ベタを本当に恨めしく感じていた。
いちばん練習したくて気持ちが焦っているときなのに、梅雨前線の停滞で、風がまったく吹かないなんて。
「土日じゃなくて、風の吹いている日を休みにしてもらえませんか」
真剣に、職場の上司にそんなお願いをしてみようかと考えたときもあった。
レースのときでも練習日でも、風を待っている時間をどうやって過ごすべきか。
これはすべてのセーラーにとって大きな課題です。
だから皆さんも考えてみてください。 風を待っているときにでもね。 ■
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