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ディンギーノッてる?(KAZI連載)

 

『試乗会』

July,2007

 text by Koji Ida

 

  

「皆さん、集合してくださーい!」

 

5月のとある土曜日。

僕の会社のヨット部で、体験ヨットスクールを開催した。

 

目的は、その年の新入社員にセーリングを体験してもらい、できればヨット部に入ってもらうこと。つまり、新入部員の勧誘である。

 

この企画の隊長を自ら買って出た僕は、スロープ前でハンドマイク片手に参加者を引率するのだ。

 

いまの会社に入って十三年目。

ずっとヨット部のお世話になってきたのだが、全日本や世界選手権などの目標に向かって自分の競技活動だけに専念してきた。

 

なので、部員の勧誘なんて全然してこなかったのだが、あまりにホッタラカシにしすぎたので、気がつけばオジサンばっかりのヨット部になっていた。

 

これではマズイと感じ、クラブへの恩返しのつもりで、積極的に新入部員を勧誘してみようと思ったわけだ。

 

 

 

僕の会社のヨット部は、一応は実業団の大会などには参加しているが、中身はまるっきり同好会。練習したい人が練習して、レースに出たい人がレースに出る。チャランポランな僕にとっては、なんとも有難いクラブである。

 

レースに出場する以上は良い結果を残したいが、その結果のために無理やり部員を増やす必要もない。一緒に楽しめる仲間を増やせればいいだけなので、勧誘といっても気が楽だ。

 

体育会ヨット部で修行僧のような日々を送った学生時代、僕はブドウ狩りなどの企画で楽しんでいるテニスサークルに憧れた。折角なので、あの頃に夢見た“楽しいサークル活動”を実践してみたいと思い立った。ヨット部に入ってもらう、というよりは、セーリングを通じて楽しんでもらえるような試乗会をしてみたかった。

 

 

 

という訳で本番当日。

試乗会には絶好の五月晴れである。

 

その天気のお陰か、新入社員を中心に十数名のお客様が来てくださった。

 

スナイプ級ヨットにコーチ1名+ビギナー2〜3名で、交代しながら乗艇してもらう。そして、単にヨットに乗るだけでなく、ヨットの操船を体験していただいた。ビギナーの皆さんに、ティラーだけ、メインシートだけ、といった感じで役割を分担したのだ。

 

たった一日では何も分からないだろうが、「もしも自分でヨットが操船できるようになれば、すごく楽しいだろうなぁ」 と、少しでも感じてもらえれば大成功。

 

そんな期待を含んだ試みであったが、当日は少し風が強すぎて、一艇が開始五分でいきなり沈。ビギナーのお客様を泳がせた挙句、通りがかったラバーボートにレスキューされるという大失態。ありゃりゃ。

 

まあ、予定外のハプニングもあってヒヤヒヤしたが、その後もスクールを続行して、なんとか無事に一日を終えることができた。参加者の笑顔からするに、沈体験も含めてセーリングを楽しんでいただけた模様である。

 

セーリングのあとは、ヨット部員でタコヤキを焼いておもてなし。ヨットだけでなく、ヨットハーバーでの楽しい過ごし方も体験して欲しかった。タコヤキだったら、コストも安くて気軽に振舞える。

 

缶ビールを片手にタコヤキをつまみながら、今日の感想を話してもらったり、そこに集まった仲間で友人を増やしてもらったり。

 

アハハ。

なんだか楽しいのだ。

 

みんなにセーリングの楽しさを知ってもらおうと思って企画した会なのに、実は自分のほうが楽しんでいる。

 

“セーリングを知ってもらう”っていう楽しみ方もあるんだなぁと、僕にとっても新発見。

 

自分の好きなことを知ってもらうために企画を練ったり、準備したりするというのは、なかなか楽しいものである。

 

しかしながら課題がひとつ。

他のヨット部員から、「もうタコヤキ焼きすぎて疲れた!次回は違うものにしてくれ!」とのご意見。

 

そんなことを言われても、僕の挑戦はまだ始まったばかり。部員たちの苦言はサクッと無視して、憧れの“楽しいサークル活動”に相応しい、新たな企画を考案するのだ。

 

だって最終的な目標は「ヨットスクール&ブドウ狩り」なのだから。

 

まだまだ道のりは遠い。

 

 

 

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