BACK NUMBER  esseys of sailing and life.

 Back to index

ディンギーノッてる?(KAZI連載)

 

『ハイスクール・ララバイ』

Oct,2007

 text by Koji Ida

 

 

 

年の夏、例年になくテレビ中継で高校野球を観戦する機会が多かった。

 

会社の夏期休暇と我が家の第二子出産が重なったので、夏休みのほとんどを奥さんが入院する病院の待合室で過ごすことになったからだ。

 

去年のハンカチ王子みたいに特別なヒーローがいたわけではないのだが、高校球児の真剣でハツラツとしたプレーにのめり込んでしまった。そんな若者たちの姿から、ふと自分が高校生だった頃を思い出す。

 

三年生のときのインターハイは仙台だった。スキッパーとして初めての全国大会だったので、準優勝という好成績に大満足。そのときの記事が、福岡国体の遠征中に発売されたセーリング月刊誌の最新号に掲載された。驚いたことに見開きのページには、僕の上マーク回航シーンがアップで使われていた。実際には10位くらいの場面だけど、あたかもトップ回航のように写っていたのが嬉しくて、その雑誌を仙台で知り合った他県のライバルたちに見せびらかしたのを覚えている。

 

そういえば若い頃は、セーリング雑誌に自分が載ったかどうかというのが、大きな関心ごとだったように思う。レースに出場するたびに、その記事が載る最新号の発売をドキドキと待っていた。

 

最近、インターハイや国体などの現場から遠ざかっているので、いまどきの高校生がどうなのかは知らないけれど、おそらく昔の僕たちと大して変わらないだろう。自分のことが雑誌に載ったりするのが励みになって、さらに練習に打ち込めたりするものだ。高校野球のように、高校生セーラーのためにも、もっと周囲に注目されるような舞台がつくれないだろうか。

 

高校スポーツで、全国大会がテレビ中継される種目は限られている。硬式野球、サッカー、ラグビー、バレーボールくらいだ。その中でも硬式野球は人気が特出している。なぜなのだろう。僕が思うに、「いつの時代も変わらない風景」が、そこにあるからではなかろうか。

 

それに比べて高校セーラーの全国大会は、日本のセーリング界の中で最も変更を繰り返しているカテゴリーだ。FJにトラピーズやスピンがつき、スナイプがなくなり、デュエットができ、シングルハンドが増え―――。そのたびに選手や指導者たちが対応を余儀なくされた。そして本年度の国体からは、少年種目がFJ級からセーリングスピリッツ級へ変更となるそうだ。「とうとう高校生がFJに乗らなくなるのかぁ」と思ったら、インターハイはFJのままらしい。いろいろ考えられた上での変更だろうが、高校野球に例えると「春の選抜は硬式で、夏の甲子園は軟式」みたいなもので、他の競技じゃありえない。僕が高校生のときじゃなくて良かった、と正直に思う。

 

このフォーマットでは、高校からセーリングを始めた経験の浅い選手にはトレーニングの焦点がしぼりづらく、更にジュニア出身セーラーの上位独占傾向が強まるのではないか。

 

どの艇種がいいとか悪いではない。それなりの負担をいまの高校生に強いるのだから、僕たちも含め、これを決めた大人たちは今以上に高校生に魅力を感じてもらえる舞台を用意しなければならない。

 

テレビで放映される競技なら、テレビ局が盛り上げてくれる。しかしながら、セーリングはそうではない。JSAFでも、高体連でも、舵社でもいい。できればインターハイを地方予選から取材して、高校セーラーの頑張りをもっと紹介して欲しい。

 

甲子園には「いつの時代も変わらない風景」がある。だが、その舞台の盛り上げ方は時代にあわせて変化している。高校生のセーリング競技に必要な変化とは、一体なんだろう。艇種やフォーマットなのだろうか。今一度みんなで考えて欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 Back to index

 esseys of sailing and life.  BACK NUMBER