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ディンギーノッてる?(KAZI連載)
『十五年ぶり』 Nov, 2007 text by Koji Ida
「じゃあ、次は俺たちのことを書いてくれよ!」
先日、学生時代の先輩や同期たちと集まって、久々に飲む機会があった。
今シーズンの全日本インカレ開催地は、母校のホームウォーターである琵琶湖だった。その応援のために東京在住組も沢山やってきたので、僕らの一学年上の先輩が幹事役を買って出て、久しぶりの飲み会が企画されたのだ。
集まったのは、ちょうど十五年前の琵琶湖インカレで優勝した、当時の4回生、3回生、2回生のメンバー。僕はそのとき2回生で、スナイプ4番艇のヘルムスマンだった。
なので、そのときのインカレ団体戦には出場していないが、やはり全国制覇というのは嬉しい思い出である。
同期や先輩たちの殆どは、学生生活を終えると同時にセーリング競技から離れてしまっている。それなのに、十五年前のインカレや合宿生活の記憶は色あせることなく、まるで毎週集まって飲んでいる仲間のように盛り上がる。
でも、さすがに十五年も経つと、みんな年齢なりの顔つきに変わっていた。家族を持ったり、仕事が変わったり。
当時は一番頼りない下級生だった僕も、いまでは立派なサラリーマン兼セーリング・エッセイスト(自称)だ。
「いま、KAZIで連載してるんですよ」
そんなプチ自慢をすると、先輩諸氏から冒頭のような感じで攻め立てられる。先輩たちにとって、やっぱり僕は永遠に頼りない下級生のようだ。
笑点の大喜利じゃないんだから、いきなり御題を与えられたって、書けるわけがない。先輩たちは昔と同じように、僕に無理難題を押し付けてくれる。
そんなこんなで本当に楽しい飲み会だったのだが、残念なことに僕はその晩どうしても車で自宅に帰らないといけなかったので、ずっとウーロン茶で、ずっとシラフ状態。学生時代のように酔って騒ぎたかったのだが、素面なのでみんなの話題に対して、ついつい冷静に耳を傾けてしまう。
そんな会話を聞いているうちに、ふとあることに気付き、少し寂しくなった。
みんな、昔のレースや練習の思い出を語るのだが、いま現在のセーリングには話題が届かないのだ。
現役を離れて何年も経つのだから仕方がない。でも僕は、せっかくヨットの仲間が集まったのだから、いま現在のヨットの話もしたかった。
北京五輪は誰が出るのか? ロンドンでの採用艇種は? ニッポンチャレンジが復活する可能性はないのか? 高校ヨットはこのままでいいの? 今日のインカレ、いくらなんでもあのベタでレースは可哀想だよね?などなど。
僕はいまでも毎朝の通勤電車の中で、「今週末の練習はシュラウド半ピンつめようかな?」「スプレッダー伸ばしたら、どうなるだろう?」「乗艇位置をもう少し前よりにした方がいいのかな?」なんてことを考えてしまう。
十五年前と同じことを、いまでも悩んでいる。
他のみんなはセーリング以外の違うステージで頑張っていて、僕だけ子供のままで取り残されたみたい。
そんなふうに少し寂しくなったのだが、昔のヨット談義をしている皆の表情をみると、別に嫌でヨットから離れたんじゃないことがよく分かる。
みんな今でもヨットが好きなのだ。 いまが忙しすぎて、いまのヨットに目が向けられないだけなのだ。
そんな元ヨット部員たちが、いま現在進行中のヨットにもう一度興味を持ってもらうために、いまヨットを出来ている僕たちは、もっと見て、もっと体験して、もっとうまく発信しなくてはならない。
そんな柄にもないセンチメンタルな決意をした矢先に、先輩たちに念を押された。
「次のテーマは、俺たちのことだからな!」。
先輩たちは昔と同じように、僕に無理難題を押し付けてくれる。 ■
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