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ディンギーノッてる?(KAZI連載)

 

『五輪で目立って!』

 Mar, 2008

 text by Koji Ida

 

 

「オリンピック種目だったら良かったですね。」

 

先日、新聞社の取材を受ける機会を頂戴した。

 

僕たちがスナイプ級の国際大会へ出場することをネタに、会社の広報部が地元の新聞社に掲載をお願いしてくれたのだ。

 

地方紙とはいえ、僕たちのようなマイナー種目が一般のメディアに取り上げられることはナカナカないので、本当に嬉しい経験である。

 

とある日曜日、僕たちの練習している琵琶湖で女性記者さんに話を聞いてもらったり、写真を撮ってもらったり。

 

日頃から、もしもそんな場面に遭遇したときに「セーリング競技の魅力を伝えるために何を話そうか」と考えていたつもりなのだが、やはり喋りは苦手である。

 

結局、思っていたことの1/10も表現することができず、半日の取材が終わってしまった。こんなチャンスはそうそう来ないだろうに、まったくもって情けない。でもまあ、そんな心残りも嬉しい経験の一部なのだ、と自分をなぐさめる。

 

 

しかしながら、今回取材してくれた記者のかたは、北京五輪470代表に内定した松永・上野ペアも何度か取材されたことがあるそうで、最後に「頑張ってくださいね、でもスナイプ級も・・・」という言葉のあとに続けて、冒頭のようなコメントをくれたのだ。

 

普段、職場の同僚に言われたのなら、「そうですよね」と、簡単に受け流してしまうところなのだが、スポーツ記事を担当する新聞記者の口から出た言葉だからか、そのコメントが僕のココロに妙に引っかかってしまった。

 

「オリンピック種目じゃなきゃ、記事の価値が下がるのですか?」

 

そんな卑屈な捉え方をしてしまったのだ。

 

たとえば「ゴルフがオリンピック種目じゃなくて残念」と思う人は殆どいないだろう。ゴルフはオリンピックに採用されなくても、十分にメジャーなのだから。

 

セーリングはマイナーだから、「オリンピックじゃない艇種は可哀想」と思われてしまうのか。

 

しかしながら僕は、注目される五輪艇種を多少うらやましく感じることはあるが、残念と思ったことはないし、オリンピック艇種以外で活動する多くのセーラーたちも同じ気持ちだと思う。

 

 

 

真に競技スポーツを極めようとする人は、突き詰めればその最高峰を目指すことになる。陸上や競泳などのシンプルな競技なら、オリンピックはその最高峰と言って、間違いではない。

 

しかしながら、セーリングのように複雑多種な競技においては、オリンピックはあくまで「最高峰の中のひとつ」だと僕は思っている。

 

アメリカズカップもあれば、ボルボオーシャンもある。各ワンデザイン艇種の世界選手権など、他にもレベルの高い魅力的なイベントは沢山ある。そう考えると、セーリングほど世界のいたるところで、様々なルールにより、いろんな道具(ヨット)を使って、しかもオリンピックにも採用されているスポーツは他にないのだ。

 

北京オリンピック代表選考も続々と終わり、勝ち抜いた選手は本番への準備を進めていることだろう。敗れてしまった選手の皆さんも、長く厳しいキャンペーン本当にお疲れ様です。

 

人・金・時間を必要とする五輪キャンペーンは、人生のうちでそう何度も出来るものではない。結局はオリンピックに出る人も出ない人も、そのキャンペーンが終わった後には、五輪以外のセーリングシーンに戻ることになる。

 

その五輪以外のセーリングのためにも、オリンピック代表選手は北京で目立ちまくって欲しいのだ。目立って目立って目立ちまくって、記者にコメントを求められたときには「セーリングは、五輪以外にもエキサイティングなステージが世界中に沢山ありますからね」と、はき捨てて欲しい。

 

僕たちのセーリング競技は、オリンピックの恩恵にぶら下がっているマイナースポーツではない。

 

その多すぎる魅力の一部だけを、五輪で紹介しているにすぎないのだから。

 

 

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