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ディンギーノッてる?(KAZI連載)

 

『報道へのリクエスト』

 September, 2008

 text by Koji Ida

 

「一体どうなったんだい!?」

 

タイムマシーンがあるのなら、いまKAZI誌を手に取っている貴方のところへ行って、この質問をぶつけたい。

 

この号が発売される頃には、すでに北京五輪は終焉しており、日本のセーリング関係者は祭典の余韻にひたっていることだろう。しかしながら、僕の原稿の締め切りはオリンピック開幕直前の8月5日。

 

日本代表はメダルを取れたのか? 取れたのであれば、その数は? その色は? 470級のウィルモット(AUS)は前回大会のリベンジを果たせたのか? グラエル(BRA)が去った後のスター級を征したのは誰?

 

いま読んでいる貴方が、いま書いている僕に結果を教えてくれたら、すばらしくタイムリーな記事が書けるのに・・・。

 

しかしながら、「タラレバ」では原稿執筆は進まない。仕方がないので、五輪直後の皆さんに、五輪直前の僕が感じていることをお伝えします。

 

今回の北京五輪では、近藤・鎌田ペアの世界ランキング1位、セーリング会場である青島での藻の大量発生、この二つの話題によって過去の大会より格段にセーリング競技が注目されている。テレビ番組で選手たちの横顔が紹介され、全国紙やスポーツ新聞、一般の総合スポーツ雑誌にもセーリング関係の記事が掲載された。

 

ただ、それらの記事や映像は、セーリング競技自体の説明までも付け加えなければ意味が伝わりにくく、放映時間や文字数が限定される中では、中途半端な内容になっていたのではないだろうか。セーリング関係のすべての報道を目にした訳ではないので、僕が間違った捉え方をしているのかもしれない。しかしながら、同じように感じた人もいるはずだ。

 

たとえば「スキッパー(舵取りを担当する艇長)の松永選手は・・・」なんて書いてある記事を読むと、あまりに丁寧な表現に違和感を覚えてしまう。

 

そもそも、野球やサッカーのように誰でも知っている競技では、そんな注釈なんてありえない。「バッター(バットと呼ばれる棒を振ってボールを打つ打者)の清原選手は・・・」なんて記事は見たことがない。

 

という訳で、セーリングの記事でも細かい注釈なんて入れる必要はないのだ。分からない単語があるなら、ウィキペディアで調べてくださいっていうくらいの強気で記事を書いて欲しい。

 

いちいち注釈を入れていたら、スポーツニュースの記事ではなくて、ヨット入門書の原稿になってしまう。ヨット経験者しか理解できない言葉があるなら、それをいちいち説明してまで使わずに、皆が分かる言葉だけで表現できるようにしたい。

 

セーリング競技の説明なんて、どうせ小さい原稿スペースの中では不可能なのだから、そんなのは割愛してもらって、もっと選手自身を深くフォーカスしてもらうほうがいい。

 

また協会には、いまからロンドン五輪に向けた4年間、代表選手決定までのドキュメンタリーVTRを制作して欲しい。

 

選手たちが如何に努力してきたか。

どれだけの障害を乗り越えて五輪の舞台に辿り着いたのか。

 

強化合宿や選考レースの風景、選手たちのインタビューなどを映像で残し、五輪前に編集して、それを一般の報道関係者にプロモーションとして観てもらうのだ。

 

まったく我侭な提案をするが、五輪への期待が膨らんでから取材を受けても、その取材の日にいい風が吹くとは限らない。選手たちの本当の表情が垣間見えるのは、代表が決まってからではなく、決まるまでだと思う。

 

このプロモーションVTRと、セーリング報道についてのガイドライン(こんな報道をして欲しい!という御願い)をあわせて、テレビ局や新聞各社に送ってみてはどうだろう。

 

いま北京五輪直後の誰かが、五輪直前の僕には想像できないくらい感動して、オリンピックセーラーになることを決意しているかもしれない。

 

そんな若いセーラーたちのために、検討だけでもして欲しい。何卒よろしくお願いいたします。

 

 

 

 

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