BACK NUMBER  esseys of sailing and life.

 Back to index

ディンギーノッてる?(KAZI連載)

 

『 眠れぬ夜 』

 December, 2008

 text by Koji Ida

 

 

 

日本インカレが僕の自宅から徒歩2分のヨットハーバーを会場に行なわれている。

 

参加艇数は片クラス24チーム72艇、470・スナイプの両クラスで144艇。全国から31大学のヨット部員と監督コーチスタッフや卒業生たちが集まっているので、それは それは 大賑わいだ。

 

僕は、朝の出艇前にハーバーへ行って、母校の選手たちに頑張れよと声を掛けて、久々に出会う先輩後輩や他校の知人などと話を弾ませ、出艇風景を眺めて、それから家に帰って普通の週末を過ごす。

 

着艇時にまたハーバーへ行って、その日のレースの様子などを聞き、また家に帰って普通の週末を過ごす。夜は、大学の同期生が母校のコーチをしており、大会期間中は我が家に泊まってもらったので、彼にその日のレースのことなどを聞きながら、インカレって大変だねぇ、なんて、そんな話題で盛り上がる。

 

この原稿を書いているのは、大会最終日の朝。

 

昨日もその日に起きたケースの審問が夜遅くまで行なわれ、その審問結果を踏まえた成績が大会ホームページにアップされたのは、つい先ほどの朝5時40分。総合成績の優勝争いは大混戦になっており、どこが勝つのか分からない。そんな歴史的な接戦なのに、僕は今日も同じように、海へは出ずにインカレを応援するつもりだ。

 

母校のOB会が用意している観覧艇に乗ることはできるが、それはしない。理由は、緊張しちゃうから。

 

インカレというレースを観ていると、どうしても自分が出場した頃を思い出して、感情移入し過ぎてしまう。選手にたくさん声を掛けてやりたいなぁと思っても、せっかくの集中を邪魔しそうで遠慮してしまう。静かに遠くで祈っているのが一番いいのだ。

 

インカレの陸の風景を観て、13年前の自分を思い出す。

 

ひとつひとつのスタート。すべてのレース。出艇前の掛け声。翌日のことを考えて、それまでの4年間を振り返って、眠れなかった夜。体中の血が溶けるような想い。

 

 

 

先日、僕の勤務する会社で新卒採用活動についての現況を聞く機会があった。そこでお話しされた()リクルートさんのアンケート調査によると、現在、体育会やサークル活動などに参加している大学生は全体の2割程度なのだそうだ。体育会だけに限定すると1割を切るのだろう。

 

インターネットや携帯電話などの通信端末が普及したことにより、今の学生は幼少期からそれらを通じてコミュニケーションを取っている。それゆえに直接的な対人関係を苦手とし、グループ活動に消極的なのではないか?と要因を推測されていた。

 

じゃあ、ここに集まっている学生や若い卒業生たちは何者なのだろう。彼らはきっと、僕の見たインカレと同じものを見て、同じものを欲し、同じような想いでこの夜を過ごしている。

 

彼らは最終日のレースに挑むため、いろんなものを背負って、これから出艇していく。この原稿の締め切りはまだ数日先なので、最終結果を待ってからでも執筆の時間は十分にある。でも、あえてそうはしたくなかった。

 

どの大学が栄光を掴むのかは分からないが、そんなことよりも、僕の13年前と同じような気持ちで昨夜を過ごした若者たちが、ここにいる。それが一番大切なことだと感じたのだ。

 

 

 

 

 Back to index

 esseys of sailing and life.  BACK NUMBER