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ディンギーノッてる?(KAZI連載)

 

『 ヨット部とヨットクラブ 』

 December, 2008

 text by Koji Ida

 

 

 

「君たちは同じクラブなの?」

 

僕がディンギーレースで海外遠征をした際、レセプションの席などで日本人同士が歓談していると、よく異国のセーラーからそんなことを訊ねられる。

 

はじめてその質問をされたときには、彼らが訊ねている“クラブ”が何を意味しているのかがピンと来なかった。「クラブって、大学のヨット部のことかなぁ?」という程度に思っていたのだが、見聞を広めるにつれ、彼らの言う“ヨットクラブ”と、僕ら日本のディンギーセーラーが思い浮かべる“ヨット部”とは違うものであることが分かり始めた。

 

辞書で「クラブ」という言葉を引いてみると、「(1)研究や趣味など共通の目的をもつ人々の集まり。同好会。また、学校の課外活動での集まり。(2)社交や遊戯・スポーツを目的とした会員組織による集まり。また、その集会所。」と記されている。

 

高校ヨット部でセーリングを始めた僕が思い付くクラブとは「学校の課外活動での集まり=ヨット部」であり、海外のセーラーが訊ねてくるクラブとは「ヨットを目的とした会員組織=ヨットクラブ」なのだ。

 

そういった文化の違いに気付いたのだが、英会話の実力がゼロと近似値である僕には、「僕たちはヨットクラブには所属していないんだよ」とは言えても、その文化の違いを説明することはできない。質問してきた相手は「ヨットクラブに入っていなくて、どうやってセーリングをするの?」といった感じで首をかしげてしまう。

 

海外でのレースは、その土地のヨットクラブが主催者となって運営される場合が殆どである。僕が見てきたそれらのクラブは、規模の大小はあるが、多くは会員の会費によってハーバー施設の維持管理をまかない、クラブレースや各種イベントを企画運営し、ジュニア選手の育成プログラムも備え、会員がくつろぐためのレストランやバーも経営している。

 

レース活動を中心としたり、休日を家族と過ごす場所として利用したりと会員の目的は多岐に渡り、様々なスタイルのセーリングを楽しんでいる。ヨットクラブのレストランに二十人くらいの大家族が集まって、子供の誕生日を祝って食事する、そんな微笑ましい風景も見たことがある。欧米のすべてのヨットクラブが同じではないだろうが、日本にもそんなクラブがあったらなぁ、と羨ましくなってしまう。

 

 

日本でも、キールボートではそういった欧米式の「ヨットクラブ」の概念が浸透しているかもしれないが、ディンギーではまだ階層や艇種に組織が細かく分かれ、「ヨット部」という単位での活動が主流となっているように見える。

 

このヨット部という文化が悪いとは思わない。逆に、日本が世界に誇れるものだろう。学校の課外活動としてのヨット部があったからこそ、いまの僕のセーリング・ライフが成立している。もしも日本に「ヨット部」がなく、欧米スタイルの「ヨットクラブ」だけだったら、公務員の次男坊である僕が、親に高い会費を払ってもらってまでヨットを始めるわけがない。本当にこの国に生まれてよかったと思えている。

 

ただ、セーリングの場が学校単位でのヨット部しかなかったら、そこを卒業した後にはどうしたらいいのだろう。ジュニアクラブでヨットを学んだ選手が、ヨット部のない学校に入ったらどうなるのだろう。僕はたまたまヨット部のある学校に進学し、ヨット部のある企業を選んで就職したので、いまでもセーリングを続けていられる。しかしながら、それはあくまでも幸運な一例なのだ。

 

そう思うと、日本のディンギーセーリングについても、欧米のヨットクラブ的な組織やグループ作りが必要なのではないだろうか。ただ具体的に何をしていいのか分からない。とりあえず少し考えてみて、また仲間たちとの飲み会のときにでもプランを提案してみたい。とても難しいことだと思うが、いつの日かまた海外に行ったときに「僕たち、同じヨットクラブなんだよね」と答えてみたいのだ。

 

それができれば、この文化の違いを英語で説明しなくてもいいのだから。

 

 

 

 

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