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ディンギーノッてる?(KAZI連載)

 

『 話しがしたい 』

 November, 2009

 text by Koji Ida

 

 

学ヨット部で4年間をともにした同期が、誰にも別れを告げずに逝ってしまった。急性心臓血栓という病気らしい。卒業してからは新聞記者をしていたので、皆と休みが合わず、殆ど会うことができない奴だった。最後に会ったのは何年前だっただろう。覚えてなくてゴメンな。

 

大学からヨットを始めたお前だったけど、最後のインカレは同じスナイプ級のスキッパーで出場して、優勝にはもう少しのところで届かなかったけど、本当に最高のインカレだった。

 

「お前は主将かもしれへんけど、エースは俺やからな」。

 

お前は、いつもそんなふうに言ってたっけ。最終レースが終わっても負けを認めたくなくて、正式結果が出るまでは絶対に泣かないって決めていた。なのに、着艇したスロープでお前の顔を見たら、どうしても涙が止まらなかった。

 

 

 

申し訳ないけど、この歳になっても人の死を理解できていない。お前がまだ生きていたからって、忙しいお前にいつも会えるわけじゃないし、野郎同士だから、いつも会いたいっていうのも変だし。

 

でも、大学時代の想い出、いまでこそ笑えるけど、いろんな失敗や、辛かったことや、悔しかったこと。もちろん楽しいことも沢山あったし。そんな想い出話をできる奴が一人いなくなったと思ったら、涙があふれ出てきた。こんなに泣いたのは、あのインカレの最終日以来だよ。まさか今年のインカレ最終日に、お前の葬式に行くなんて。

 

 

でも、お前のお陰で久しぶりにみんなと会うことができた。同期だけじゃなく、先輩や後輩たちも沢山集まってくれたんだ。そんな昔の仲間で学生時代の話をするのは本当に楽しかった。でも、お前とはもうできないんだ。たまに会って、あの頃の話をする。たったそれだけのことも出来なくなるのが、死ぬってことなんだな。奪われて初めて気付いたけど、お前ともっと話がしたいよ。みんなで話がしたい。ここに集まった皆が、そう思ってる。来られなかった連中だって、そう思ってる。ただいつもじゃないぞ。たまにだ。

 

 

葬儀のときに初めて会ったけど、可愛くて、しっかりした奥さんじゃないか。子供たちだって、お前に似ているくせに、すっごく可愛いじゃないか。こっちは人見知りする性格なんだから、お前が紹介してくれないと話しかけることもできやしない。あんなに家族を泣かせやがって。どうやったらそんなに愛される父親になれるのか、いまからでも教えてくれよ。うちにも可愛い娘たちがいるんだけど、お前に紹介できなかった分、これから他の連中にしっかりと自慢してやるつもりだ。お前も記者として頑張っていただろうけど、こっちだってまだヨットの世界で頑張ってるんだっていうことを聞いて欲しい。自称だけど、セーリング・エッセイストって肩書きなんだ。お前に話したら「勝手に言っとけっちゅーねん!」って、昔みたく馬鹿にされるだろうけど。

 

ごめんな、確かに ここ数年は忙しくてサボってた。学生のときと違って、いまは携帯電話や電子メールもあるのに、「みんなで会おうよ」の一言が出せなかった。本当にごめん。これからはもっとみんなで会うようにする。同期の中でヨットを続けている奴は少ないから、自分がいまの大学ヨット部やセーリング界のことを教えてやらなきゃな。こんなところでお前のことを書いて申し訳ないけど、他の大学や高校ヨット部を卒業した連中にも、しばらく仲間に会っていない奴がいると思うから。

 

お前はもう天国に着いているんだろう。しばらくは会えないと思う。だけど、いつかは皆そっちに行くんだから、それまでにいい風が吹く場所を探しといてくれ。お前も久しぶりに乗りたいはずだ。そっちに行ったら、どっちが本当のエースか勝負しようじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

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