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ディンギーノッてる?(KAZI連載)

 

『 タラレバのススメ 』

 December, 2009

 text by Koji Ida

 

 

ナイプ級の全日本選手権に出場した。ここ数年は育児と平日の仮の姿(会社員)での仕事に忙殺されてセーリングどころではなかったが、子供たちが成長した(4歳と2歳)おかげで、今シーズンは少し海に出る回数を増やすことができた。

 

奥さんの心が広いのか。それとも、家から僕を追い出したかっただけなのか。理由はどちらとしても、ヨットに乗れることがとても嬉しかった。奥さん、本当にありがとうございます。

 

とは言っても、スナイプに乗って練習したのは3〜4回程度。ローカルレースにも2度ほど出たが、多くの時間を風待ちで過ごした記憶しか残っていない。

 

そのレースのひとつが全日本選手権の出場枠をかけた予選だったのだが(前々回紹介した“スナイプ★ドッグ”のとき)、ものの見事に練習不足を隠し切って、無事にクオリファイを獲得できた。同じレースに出ていた学生選手たちは毎日朝から晩まで練習しているのに、どうしてこんな僕に負けちゃうのだろう。そんなことを考えてしまい、自分の才能が怖くなって、幾日も眠れない夜が続いた。えっと嘘です。毎晩ぐっすり眠っています。

 

という訳で、全日本選手権の本番である。ゲレンデは蒲郡。きっと、とんでもない強風レースが待ち受けているのだろうが、もしかしたら僕たちが優勝しちゃうかも、と根拠なく自分に期待する。だって僕は、誰よりも自分のことが大好きだから。

 

そしてレースが始まり、ぱかっと蓋を開いてみると、僕の理由無き自信は毎秒13メートルの風速で南東方向へ吹き飛ばされてしまった。まあ、僕が37歳で、クルーの相棒が39歳。アスリートとしては峠を過ぎた年齢なので、結果が付いてこなくても仕方がない。そろそろ諦めて、若い連中に潔く席を譲ろうか。そんなふうにセンチメンタルな感傷に浸りたいのだが、実はそれも許されない。なにせ僕より前を帆走っているのは、同世代か年上の連中ばっかりなのだから。どっちかっていうと、アナタ達が先に辞めといてくれよ。そしたら今回も僕らが優勝だったのに。

 

そういえば、昔はコーチや先輩たちに「タラレバを言うな!」と、チクチク指導されたものだ。でもタラレバ抜きで、負けた悔しさをどう発散したらいいんだい。そんな指導者ほど、お前があそこでリコールしなければ・・・、なんて説教してるじゃないか。

 

振り返ると、僕の競技生活はタラレバばかりだ。

 

高校総体の最終レース。フィニッシュ前にあいつに抜かれなかったら、僕が優勝だったのに・・・。そのときの“あいつ”は大学でチームメイトになったので、散々愚痴ってやった。たった0.3点差で全国制覇を逃したのだから、タラレバ言わなきゃやってられない。

 

大学4年のときのインカレだって、最終レースを残してクラス優勝を目前にしていたのに、ヘロヘロな風でスタートさせられて、逆転されてしまった。あんな変なレースがなければ、優勝旗を持って帰れたのに。

 

今回の全日本スナイプだってそうである。ちゃんと練習してたら、僕らが負けるわけがないじゃん、といった具合。本当に往生際の悪い人間です。

 

しかしながら、タラレバが出るからこそ、次への闘志が湧いてくる。タラレバを言えるからこそ、勝つために何が足りなかったかを知っているのだ。みんなも、どんどんタラレバを言ってくれ。負けた悔しさを押し殺しても健康に良くないぞ。でもタラレバを言った以上は、その根拠を証明するために、勝つまで続けないといけないぞ。それを誓った上で、遠慮なくタラレバを言ってくれたまえ。

 

そんなこんなで、新年あけましておめでとうございます。皆さんのセーリング・ライフが今年も良きものとなりますように。そして今年もうちの奥さんが許してくれたら、どこかの海で会いましょう。 

 

 

 

 

 

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