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ディンギーノッてる?(KAZI連載)
『 新人勧誘をやめよう 』 March, 2010 text by Koji Ida
この号が発売されるのは、桜咲き乱れココロときめく春のシーズン。競技ヨットの業界では、高校や大学のヨット部員が新入生を自分たちの仲間に招きいれようと、キャンパス中を走り回っている季節です。
「全国のヨット部諸君、日本ヨット界の未来は君たちの勧誘活動にかかっているんだぞ!ぜひとも頑張ってくれたまえ!」と応援する気持ちで一杯だった、ちょっと前までの僕。
でも今は違います。勧誘でヨット人口を増やして欲しいなんて、これっぽっちも思いません。これっぽっちも。
最近の少子化の影響か、草食男子急増に起因するのか、一部のヨット部以外では部員減少が大きな問題です。これはセーリング競技に限らず、スポーツ全般における傾向なのでしょう。ヨットという道具を維持管理するため、部内競争で競技力を高めるため、部員数を増やしたいのはどこのチームも同じです。
ゆえに、新入生に対して先輩部員たちはやさしく丁重に向かい入れます。「お願いだから、ヨット部に入ってください(ペコリ)。お願いだから、ヨット部を辞めないで下さい(ペコリ)」っていう感じ。新入生は神様ですね。でも僕の勝手な意見ですが、そこまでして競技人口を増やさなくてもいいですよ。
セーリング競技の魅力って? 人によって思うところは違うでしょうが、最近の僕にとっては、やはり自分を成長させてくれるところ。ヨットって、人の内面を鍛える“育成スポーツ”なんだと感じています。
新人勧誘のときにみんな言います。 「ヨットって簡単だよ」→いえいえ、とっても難しいでしょ。 「ぜんぜん怖くないから」→僕は今でもすっごく怖いです。 「誰でも出来るからさ」→誰でも出来ませんって。辛くて、すぐにみんな辞めちゃうんだから。
厳しい自然を相手にするスポーツだから、難しくて、怖くて、誰でも簡単にできる競技じゃない。だから、やればやるほど自分自身が鍛えられる。辛さのあとに大きな達成感が待っている。それがセーリング競技の魅力っていうか、本質なんだと思うのです。アナタもそう感じませんか?
いまの若い人たちがイメージする競技スポーツって、どんなものなのでしょう。競争に勝って、結果をださなければ成功じゃない。中学高校くらいまでは部活で続けても、その成功につながらないと思ったら、格好悪いし、やる意味がない。
でも、やってるだけで意味があるんですけどね。僕らの頃は泥臭いスタローンやシュワちゃんが銀幕のスターでしたが、いまはジョニー・デップやデュカプリオ様の時代です。汗をかくのは余り格好よくないのでしょう。爽やかさ×病弱さ、が一番なのです。それなら、毎日お風呂に入ってゴハンのオカワリを控えたらいいだけですから、簡単なものです。自分を鍛える場所なんて探さなくてもいい。
そんな軟弱な若者たちを、僕の愛する競技に、とっても泥臭いセーリング界に、頭を下げてまで招き入れなくても結構です。競技人口が減っても構いません。部員が減ってインカレ団体戦に出られなくたって、他にもステイタスの高いレースは沢山あります。ヨット部がなくなったって、どこかに乗れるフネは必ずあります。どんなに競技人口が減っても、僕自身が感じるセーリングの魅力は変わらないし、これからも変わらず海へ出続けるから。
いま勧誘活動をされている学生セーラーの皆さんは、いくら若くても僕と同じように、すでにセーリング競技の魅力を知っておられるはず。だから、勧誘なんてしなくていいです。紹介だけしてください。セーリングの魅力を紹介していただくだけで十分です。それで興味を持った若者がいたら、一度ヨットに乗せてあげてください。勧誘なんていりません。「やりたかったら教えてあげるよ、厳しいけどね」っていうくらいが丁度いいと思うのです。
全国ヨット部諸君、日本ヨット界の未来は君たちの紹介活動にかかっています。ココロよりお願い申し上げます。 ■
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