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ディンギーノッてる?(KAZI連載)

 

『働くセーラー 』

 September, 2010

 text by Koji Ida

 

 

「全日本実業団ヨット選手権」というイベントをご存知でしょうか。

 

雑誌などではあまり紹介されないこの大会。

名前のとおり企業で働く人たちの会社対抗のヨットレースで、今年で56回目を数えました。

 

バブル崩壊やリーマンショックの影響で企業スポーツのあり方が見直され、セーラーにも辛く厳しい時代が続いています。でも何故か、一番影響を受けているはずの、この実業団選手権がとっても盛り上がっているんです。

 

大会フォーマットは470級が1チーム1艇のフリートレース、スナイプ級が2艇1チームの団体戦。さすがに470級は若さと資金が必要なので参加数はちょっぴり減少傾向なのですが、スナイプ級はオープン参加も含めて20チーム40艇以上が全国から集まります。毎回、国体のリハーサル大会の一環として開催されるので、地元の人たちの歓迎も楽しみとなり、多くの参加者が集まるのでしょう。今年の大会は、8月末に山口県の光市で開催されました。

 

参加するチームには、バリバリの体育会系実業団もいますが、エンジョイ優先の同好会的なチームもいます。選手の顔ぶれは、往年の名セーラーから大学卒業したばかりのフレッシュ・セーラーまで、老若男女で多種多様。でも、みんなの共通点は“働きながらセーリングを続けている”ということ。みんな「働くセーラー」なのです。

 

昔はフネやセールの購入や保管の費用、大会遠征費などをすべて会社が支援してくれるところもありましたが、いまは殆どが個人負担というチームも多いでしょう。僕もナケナシのお小遣いから遠征費を捻出し、職場の白い目を避けてコッソリ有給休暇をとり、この実業団選手権に参加しました。

 

ヨットレースに出るために、毎日一生懸命働き、お金を貯めて、休みを確保する。歳をとれば仕事だけでなく、家庭のこともしっかりやらなきゃいけません。実業団選手権は、そんな楽ではないライフスタイルを続けている、熱いセーラーたちの集まり。だから、夜のレセプション・パーティーも選手たちの熱い宴会芸(参加した人は知っている、オトナのエンターテイメント)があったりして、とっても大盛況。この大会に参加するたびに、日本経済を支えるサラリーマンの逞しさに感心しっぱなしの僕なのです。

 

“働かずにヨットができる”もしくは“ヨットで食っていける”なんて、この国では本当に限られた人だけ。いまの日本のレースイベントでは観戦料やテレビ放映権などの収入はありませんし(オリンピックでさえ誰も観ないし)、企業が魅力を感じるような広告宣伝効果も期待できません。そんな収入源のないイベントに参加することで選手が収入を得ようなんて、無理があるに決まっています。という訳で、この国でセーリングを続けるためには、働くことが最低条件なのです。

 

世の中はまたも就職難の時代になっているようですが、若い人たちはしっかりと働けて、しっかりとセーリングができる仕事を見つけてください。そして、この実業団選手権にもドシドシ参加して欲しいと思います(会社勤めじゃなくても、社会人であればオープン参加OK!)。

 

この大会は、レース結果だけを競うものではありません。

レースの疲れがどっぷり残る大会翌日の月曜日に、しっかりと働くことができるか。もしくは、働いているフリができるか。

 

それができて初めて、真の「働くセーラー」なのです。

僕も働くセーラーとなって満15年が経過しました。

いまでは、とっても「フリ」が得意です。

 

 

 

 

 

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