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ディンギーノッてる?(KAZI連載)

 

『憧れの紅葉見物 』

 October, 2010

 text by Koji Ida

 

 

「今年は、どこか紅葉でも観に行かないかい?」

 

暑く長い夏が終わり、秋の気配を感じる今日この頃。(この原稿を書いているのは10月初旬です)

 

僕は毎年のように冒頭の提案を奥さんにするのです。

 

この季節には不自然な日焼け顔の僕も、一応は日本人の端くれですから、紅葉の名所でも歩いてココロを洗濯したくなるのですな。

 

しかしながら、この提案が実現されたことは、一度たりとも ありません。

 

9月末から11月は、祭日も多くて気候もとっても行楽日和。なのにどうして、行楽シーズンはレースシーズンなのでしょうか。僕の活動するスナイプ級は全日本選手権が11月に行なわれることが定例なので、それに向けた練習や遠征準備も含めると、この季節は週末に海から離れることはできません。

 

ですので、いつも冒頭のような提案をしても「どうせ今年もクチだけなんでしょ」と、奥さんもまったく期待していない。いやいや僕も紅葉を観たくないわけではなくて、でもレースがあるから仕方がないじゃないか・・・なんて言い訳をしても、紅葉見物を約束できる訳でもなく、ブツブツブツ・・・と独り言が増える季節なのです。

 

国体やインカレ、各ワンデザインの全日本選手権などなど。秋のイベントに携わっているセーリング関係者は、みんな同じように紅葉見物に憧れているはず(家族や恋人に愚痴られているはず)なのです。

 

自宅から日帰りで行ける紅葉名所は沢山あるのに、ひとつも行ったことがありません。他の季節に訪れて、「もしも紅葉の時期にここへ来たら、とても綺麗だろうねぇ」という会話を繰り返す。ハワイやカリフォルニアで暮らしていれば、こんな悩みはなかっただろうに。四季のある日本でセーリング競技を続けるというのは、とっても損をしているのかもしれません。

 

そんなくだらないことで悩んでいる僕なのですが、今年はちょっと違います。幼稚園の運動会だったり七五三だったり、子供の行事が多くてセーリングどころではないのです。スナイプ級でコンビを組む相棒も同じような感じなので、練習日程もたてられず、逆に休みがポツポツ取れるようになりました。この秋は、奥さんとの約束を初めて守れそうな予感です。(まだ確約はできませんけど)

 

結婚して十年目の今年、いままでヨットばっかりの僕につき合わせてきましたから、今年くらいはセーリングから離れて、秋の行楽を楽しむのもいいでしょう。

 

そんなこんなで、奥さんと紅葉の話題で盛り上がります。(ウチの奥さんは栃木県出身なので)「いままで行った場所ではやっぱり日光でしょ、那須高原も良かったし、中禅寺湖なんかも・・・」。

 

それを聞いて僕は、ちょっと前のKAZI誌にアクアミューズでの中禅寺湖ツーリングが紹介されていたのを思い出す。

 

「じゃあ、セーリングカヌーを買って、湖畔の紅葉を観に行こうか!」と提案すると、「・・・・・・」。

 

 “結局はヨットかよー!”という奥さんの無言のツッコミが聞こえてきた僕なのです。虫の音が心地いい、秋の夕べ。 

 

 

 

 

 

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