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ディンギーノッてる?(KAZI連載)

 

入部員諸君 』

 June, 2011

 text by Koji Ida

 

 

校や大学ヨット部の新入部員諸君、ようこそヨット部へ。

もうヨット部生活は慣れましたか。

 

はじめまして。

僕の自己紹介をすると、高校でヨット部に入ってから、大学も会社もずっとヨット部員のオジサンです。

数えてみたら今年でヨット部23年生。

そう考えると、なんだかすごい先輩になった気分だ。

調子に乗って、センパイ風をびゅんびゅん吹かせてみよう。

ココロして読め、一年坊主どもよ。

 

 

 

なに?

ヨット部って、海に出る服装が変だって?

 

確かに、23年前の僕もそう思った。

当時は本当に酷かったよ。

ウエットスーツの上にジャージを着ている先輩たち。

オレンジ色の救命胴衣が目に眩しい。

口に出して言えないが、どう見たってカッコ悪い。

生まれてはじめて見るドライスーツ。

首や足のラテックスの部分がふわふわして、アラブかどこかの民族衣装みたい。

思春期ど真ん中のボーイズ&ガールズが、そんなの着るわけないし。

 

誰でもそう考える。

でも心配するな、新入部員諸君。

いちど春の海をジャージだけで出艇してみろ。

その凍えるほど冷たいスプレーを浴びたら、君のオシャレ感覚なんて何の助けにもならないことが分かるだろう。

体温さえ維持してくれるなら、何でも着られるようになるのだよ。心配するな。

 

 

 

なに?

でもトラピーズハーネスだけは着たくないだって?

 

確かに、あれは肩ひも付きオムツにしか見えないな。

それに男子の大切な部分の発育も妨げそうだし(女子の皆さんゴメンナサイ)。

でも心配は無用だ、新入部員諸君よ。

いちどスナイプのクルーでハイクアウトを体験してみろ。

翌日から喜んでハーネスを着るぞ。

僕のときなんか、新入部員同士でハーネスの奪い合いだったね。

「僕、最初に見たときからハーネスって凄くカッコいいなぁって思ってたんです、ぜひFJ級(もしくは470級)にしてください!」

って、平気で言えるようになるから、君も。

だから、まったく心配する必要なし。

 

 

 

なに?

ヨットの用語が難しくて覚えられないだって?

 

確かに、僕も苦労したよ。

セールやマストはもともと知ってますよ。

ブームやバングもなんとなく覚えられそう。

でもなに?カニンガムって。

どこの誰がそこの部分をカニンガムって名付けたの。

綴りも語源も想像できやしない。

そんなの覚えられるわけないじゃん。

むかつくからカニンガムだけは絶対に覚えてやらない、カニンガムだけは絶対に!って屁理屈タレてたら、カニンガム最初に覚えちゃった。

 

そんなもんだよ、新入部員諸君。

だから心配しなくてよし。

 

 

 

なに?

タックとかジャイブとか、難しそうで出来そうにないって?

 

当然だろ。

そんなことが直ぐ出来るほどスポーツ万能だったら、ヨット部なんか入ってないよ。

僕だって、グランドか体育館でやる、女子が見学に来て「かっこいいー、すてきー」って言われるような運動部に入りたかったわい。

運動神経ないから、こんなクラスメートが誰も見に来ない、学校からも陸地からも遠く離れた海の上で、こっそり練習するんじゃないか。

 

だから心配するな、新入部員諸君。

ここでは失敗しても誰も見ていないから。

上手くなるまで、好きなだけ何度でも沈してくださいな。

 

 

 

なに?

やっぱりヨット部って変だから辞めたいんだけど、なかなか先輩に言い出せないだって?

 

余計な心配だ、新入部員諸君。

僕もそうだった。

でも仕方がないじゃないか、君も僕も小心者なんだから。

性格はそう簡単には直せないし、無理に言い出す必要はない。

無理は健康に良くないぞ、無理は。

それに、あのとき辞めなくて本当に良かった、ヨット部を続けて本当に良かった、と心の底から思っている先輩が少なくともここに一人いる。

 

だから何も心配するな、新入部員諸君。

ヨット部に入った君は、かなり良い選択をしているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

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