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ディンギーノッてる?(KAZI連載)

 

ノ色』

 October, 2011

 text by Koji Ida

 

 

「いままで一番綺麗だった海はどこ?」。

 

職場の同僚などによく聞かれる質問だ。

ヨットレースで何度も海外遠征に(会社サボって)行っていたから、いろんな海を見てきたでしょ、その中でどの海が一番だったのよ、ということである。

 

スナイプ級の国際大会で訪れた、ブラジルのカボフリオという街の海岸は、真っ白な鳴き砂のビーチがとても印象的だった。スウェーデンの西岸、デンマークと挟んだ北欧の海も、遠浅の砂の色を含み、なんとも言えない風景を醸し出していて、いつまでも忘れられない。もちろん日本の海だって綺麗なところは沢山ありますよ。ああ、たくさんの海を見てきたから、どれが一番だとは決めづらいなぁ・・・。なんて、遠くを見つめる仕草で自慢げに語り出す。僕が優越感にどっぷり浸れる、とても嬉しい質問なのです。

 

でも哀しいかな、一番汚い海は即答できてしまう。

それは西宮。いま僕が暮らしている最寄りの海だ。

 

毎週末にレーザーで繰り出すホームウォーターは、冬場はまだマシなのだが、夏に水温があがると、この上なくブラウン・カラー。プレーニングでスプレーを浴びれば、白いラッシュガードがウ○コ色に染められそうだ。間違って海水を飲んでしまったら、一日中気分が悪い。そんなときはすぐに帰宅して、麦とホップで調薬した発泡性の消毒液(アルコール度数5%前後)で、胃の中をたっぷり洗浄することにしております。

 

今年の海の日の連休に、近所の子供たちを連れて実家の境港に帰省した。目的は海水浴。日本海に面した島根半島の海水浴場は、海の色も、砂浜の色も、とても眩しかった。子供だけでなく、その母親たちも大喜びで大興奮。みんな海のすぐ近く(西宮)に住んでいるのに、なんだか複雑な気持ちだ。僕の住む街には、子供たちが「泳いじゃいけない海」がある。田舎の海が眩しく映れば映るほど、哀しくなってしまうのだ。

 

なんで僕は、あんな汚い海でヨットに乗っているのだろう。やっぱり乗るなら綺麗な海がいいなぁ。そんな思考が頭をよぎる。でも、みんなが綺麗な海へ集まれば、またその海を汚すだけのような気もする。

 

という訳で、柄にもなく海の色と環境汚染についてネットで調べてみました。僕ってエライでしょ。色とは、そのものに反射して目に入ってくる光の波長。都会の海、とくに東京湾や瀬戸内海のような閉鎖性水域では、工場や生活排水に含まれる窒素やリンが植物プランクトンの栄養素となって繁殖し、その色が海を茶色く見せるそうだ。工場排水は国や自治体の排出規制によって年々改善しており、大阪湾での汚染の原因は、いまや生活排水に占める割合が大きいらしい。

 

ふと思うと、都会の汚れた海の上で最も長い時間を過ごすのは、ヨットをやっている人間ではないだろうか。週末の西宮沖なんか、セイルボートが占領しているといっても過言ではない。とくにスプレーを浴びまくるディンギーセーラーは、その海の色をよく知っている。水面の色の変化で風を予測し、順位を競い合うスポーツなのだから。スキューバをする人は綺麗な海しか潜らないし、デートで海を観に来たカップルも、距離をおけば何処の海でも多少は綺麗に見えてしまう。

 

だから海の色を守るためには、ディンギーセーラーが立ち上がり、世の中に叫ばなければならないのだ、と勝手に決めました。だから皆様ご協力をお願い申し上げます。食器の洗い方の工夫やお米のとぎ汁の再利用などで、生活排水による汚染を改善することができるそうですよ。僕の孫かひ孫の世代で、子供たちが西宮の砂浜で水遊びをする。そんな風景が観られたら、きっと嬉しくて泣いちゃうだろう。 

 

 

 

 

 

 

 

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