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ディンギーノッてる?(KAZI連載)
『 告白』 November, 2011 text by Koji Ida
告白します。
この連載を始めさせていただいてから7年近くが経過するのですが、右下の僕の紹介のところの“ハイクアウトをこよなく愛する”っていうやつ、真っ赤な嘘です。
いままで黙っていてゴメンナサイ。 本誌の編集者の人が考えてくれて、第一回目のときから入れてくださった紹介文なのですが、そんな男気あふれる信念なんて僕には毛頭ありません。
ディンギーでもキールボートでも、順風での心地よい“ちょいハイク”は大好きです。でも、フルハイクの姿勢はできれば避けたい苦痛の苦行であり、僕にとっては「ビール禁止」に次ぐ厳しい拷問。当て字をするなら、“Hight苦・嘔吐”なのです。
高校ヨット部に入ったとき、最初に乗ったヨットはスナイプ級でした。平日の放課後、クルーが部活を休んでしまった一つ上の先輩が「一緒に乗ろうか」と入部三日目の僕を誘ってくれました。
風は沖からの7m/sくらいのコンディション。フネの上で何をしていいのか分からず、とりあえず先輩に言われるままにフットベルトに足をかけて、お尻をずりずりデッキから落として・・・。
生まれてはじめてのハイクアウト。
「もっと反って!もっと反って!」と先輩が肘でグリグリ要求してきます。
ああ、なんて辛いんだろう。
苦しさに歯を食いしばりながら、どこを見ていいのかも分からず、メインセールを見上げます。
でっかいなぁ、セールって。
こんな大きい帆がなければ、こんな姿勢しなくていいのに。神様お願いします、早く時間が過ぎて、この虐待から開放されますように。
しばらくクローズホールドを走って、二回目のタッキング。
ジブシートがリリースできず、生まれてはじめてのキャプサイズ。(沈)
センターボードを紐で結んでいなかったので、アルミ製の重い平板はそのまま海底へ。
センターがなくては沈も起こせず、先輩とひっくり返った白いハルの上にまたがり、レスキュー艇が助けに来てくれるまで小一時間ほど波の中を漂います。
その日から、三年間をFJ級(トラピーズ艇)で頑張ろうと、強くココロに誓う僕なのでした。
時は流れ、トラピーズのぬるま湯に慣れきった大学一年の夏。
470級のクルーをしていた僕にスナイプ級へコンバートの話がありました。
いいっすよ、と僕は即答で承諾。
うちのクラブでは、毎朝クルーがマストを立てる習慣になっており、体力のない僕はこれがとっても大嫌い。
ヨンナナのマストは太くて重いし、トッピングやらスピン張りやら余計な艤装が多くて面倒くさいし。
で、「やった!スナイプのほうがマスト軽いぞ!」と喜んじゃったのです。
あ〜あ、頭が悪いんですね、僕って。
いまその瞬間に楽することが最優先で、先のことも考えず、過去の教訓も忘れちゃうから活かせない。
その日から、20年間ハイクアウトを強いられる羽目になりました。
だいたい、世の中にハイクアウトが好きな奴なんているんだろうか。もしもいるとすれば、相当な筋トレ馬鹿かマゾヒストですね。(失礼)
でも、ハイクアウト自体を否定することはできません。ヨットがボートスピードを上げるために、最もシンプルで有効な手段であることを知っています。
継続するのは辛いけど、やれば誰でも速くなる。それがハイクアウトなのです。
僕にとってハイクはHight苦なので、こよなく愛することはできません。でも、その苦痛の先にあるものが大好きだから、ハイクをサボる訳にはいかないのです。
だって、勝利に勝る美酒はなし、って言うでしょ。
辛いハイクは、最高に旨いビールへ繋がっているのだから。 ■
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