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アラフォー帆走生活(KAZI連載)

 

業 』

 April, 2012

 text by Koji Ida

 

 

の春、うちの長女が幼稚園を卒園し、小学校へあがります。奥さんはその準備に大忙し。時の経つのは早いもの。部屋の奥に飾られた真新しいランドセルを眺めていると、なんだか僕までドキドキしてきます。三月は日本中が卒業式のシーズン。街中のあちこちで、別れあり涙あり。この国が、もっともセンチメンタルな気分に包まれる季節ではないでしょうか。折角なので、娘に便乗して自分自身の卒業式を思い出してみます。

 

 

さすがに園児の頃は覚えてない。

小学校や中学校の卒業式も、おぼろげな記憶。

 

高校のときは、進学の決まった大学ヨット部の春季合宿に参加していて、卒業式は欠席。

 

大学では、ヨット部の四回生は卒業式と同日程でヨットレースを主催する風習になっており、OBの人たち曰く、「これがオマエ達の卒業式だ」とのことでした。

 

ですので、学校の卒業式は欠席。卒業証書は見たことないので、本当に卒業したのかどうか、今更ながら不安です。

 

 

 

なーんだ。僕は卒業式というものに、これといった記憶がない。まあ、堅苦しいセレモニーは好きじゃないので、自分を可哀想とも思わなかった。僕はセーリング界のトップアスリート(当時の自称)なのだから、普通の人たちと同じじゃないのは当然のこと。それに、卒業式に出て、いったい何を卒業するのだろう。若かりし僕は、尾崎豊さんの名曲を口ずさみながら、とんがっている自分の姿に酔っ払っていたのです。臆病者なので、夜の校舎で窓ガラスは壊しませんけどね。

 

 

 

ちょっと前に、某大学が欧米諸国にあわせて九月入学への変更を検討している、というニュースを耳にしました。四月入学というのは日本だけのようで、留学生を受け入れ、国際化を促進するためには、国際標準の九月入学にするほうが都合いい、という考えから来ているそうです。

 

でもね、やっぱり日本には、卒業も入学も、桜の咲く春がいい。そんな風情を無視した国際化など、まったく必要ありません。それにヨット部の場合、九月に新人勧誘しても、入った部員はすぐに冬支度じゃないか。インカレは何月にやるんだい。単純に五ヶ月遅れだとすると、四月っすよ。やっと冬のオフが明けて、シーズンが始まったばかりじゃないの。大学側は、我らマイナー競技のこともちゃんと考えた上で検討してくれたまえ。

 

 

 

卒業を英語に訳すと、グラデュエーション[graduation]。それによく似た言葉で、グラデーション[gradation]というのがある。ある色が、別の色へぼかしながら段階的に変わっていく様子のこと。卒業式も、この色の変化と似ているのかもしれない。

 

そこで何かがハッキリと変わるわけではないのだが、そこが基点となり、変化の中心となっている。その場所にいては分かりづらいけれど、ちょっと離れてみたり、あとから振り返ってみると、その違いに気付くことができる。

 

それがきっと、卒業なんだな・・・。

 

なーんてね。

こんな歯の浮くフレーズがつらつら書けてしまうのも、世の中がセンチメンタルに包まれているからなのだ。

 

今年も、この国の多くのヨット部員たちが、学校の卒業と同時に、ヨット部を卒業されたことだと思います。これからセーリングを続けようが、続けまいが、その卒業で何が変わったのかは、もっと後にならないと分からない。でも、いつかきっと気付くはず。兎にも角にも、卒業生の皆さん、ヨット部生活お疲れ様でございました。

 

 

 

 

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