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アラフォー帆走生活(KAZI連載)

 

輪からヨットが消える日』(前編)

 July, 2012

 text by Koji Ida

 

 

いに、その日が来てしまった。

オリンピックからヨットが無くなる日。

 

遠い将来、いずれそんなときが訪れることは覚悟していたが、まさかこんなにトントン拍子で決まるなんて・・・。

 

発端は、2012年5月5日。

国際セーリング連盟(ISAF)がリオ五輪の種目にカイトボードを採用し、ウィンドサーフィンを外すという決定を下したことが引き金だった。

 

 

1984年大会からセーリング競技の一種目として採用されたウィンドサーフィン。このロス五輪を最初とする商業主義オリンピックにおいて、そのスタイリッシュな新種目を身内に迎え入れることは、当時のセーリング界にとって革新的な出来事であったのと同時に、最後の切り札だったと言えるだろう。

 

それまでの歴史では、ドラゴン、ソリング、スターといった腰の重いキールボート種目が五輪ヨットの主役に鎮座していたが、このウィンドサーフィン採用が大きな分岐点となって、1996年アトランタ大会でレーザー級、2000年シドニー大会で49er級など、普及とメディア受けを強く意識した種目が採用されている。

 

ウィンドサーフィンは五輪のセーリング競技の中で、救世主的な役割を担ってきた。国際オリンピック協会(IOC)はジャック・ロゲ会長の体制以降、各競技団体に採用種目の予選参加国数増加や選手数の男女均等化など、様々な要求を続けている。それらマイナー競技には不利な課題に対して、唯一貢献し、セーリング全体の数字の低さを薄めてきたのは、まさにウィンドサーフィンなのである。

 

野球やソフトボールが外される中、セーリングがいまだ五輪競技でいられるのは、ウィンドサーフィンのお陰と言っても過言ではない。それなのに、リオ五輪では外された・・・。

 

 

当然ながら、これに不満を表明したのが国際ウィンドサーフィン協会(IWA)だ。もともと、カイトボードとどちらかを投票で決める、とした時点で納得がいかなかった。

 

カイトが採用されることには賛成だ。しかし、それがウィンドサーフィンを外す理由になるだろうか。流行や競技人口を評価して選ぶなら、すべての艇種で投票を行うべきだ。オリンピックに相応しいとする評価項目、それらすべてにおいて他のヨット種目に負けるはずがないのだから。

 

IWAは、リオ五輪採用種目の選定をイチからやり直すようISAFに申し出るが、これを門前払いされる。IWAは、相手がISAFでは話にならないと判断。この問題をスポーツ仲裁裁判所(CAS)へ提訴することをIOCへ通知した。

 

もしも、五輪の種目採用に関する問題がCASまで上がれば、世界で初めてのケースとなる。そのため、各国のメディアがこれを大きく取り上げた。この報道に過剰に反応したのが中国である。北京五輪の女子ウィンドサーフィンで金メダルを獲得したという立場を使って、スポーツ界でも国際的発言力があるということを国内外に強調したい。そんな思惑があったのか、なかったのか。胡錦濤国家主席が「ウィンドサーフィンを五輪から外すのは大間違いだ」とコメントを発表。一国の元首が五輪採用種目に言及するという異例の事態となり、世界中がウィンドサーフィン問題に注目する状況になってしまった・・・。

 

(次号へ続く)

 

※この物語はフィクションです。登場する個人および団体の皆さん、僕のことを怒らないでください。

 

 

 

 

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