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アラフォー帆走生活(KAZI連載)
『 アマチュアよ、大志を叫べ 』 August, 2013 text by Koji Ida
あれれ、それだけしか出場してないの?
今シーズンの欧州ディンギーサーキット。4月のプリンセスソフィア杯(スペイン・マヨルカ島)で開幕し、この原稿を書いている時点ですでに6大会が終了している。2016年のリオ五輪を目指す、各国の代表候補が集うシリーズレースだ。しかしながら、インターネットでのニュースを見る限り、ヨット種目の日本選手で継続して出場しているのは、49erと470級男子で各1チーム。いくらロンドン五輪の直後だからって、メダルを目指すチームなら、いまからどんどん海外で経験を積まなくっちゃ。僕ごときがこんな心配をするのは大きな御世話だろうが、五輪を目指す選手がもっと出てこなかったら、この国の、競技スポーツとしてのセーリングは本当にオシマイなのだ。
たしかに、セーリング競技に限らず、五輪を目指すことは生半可な決意では出来ない。時間的、経済的な条件を満たそうと思えば、普通に働いていては難しい。バブル崩壊とリーマンショックを経験した現在では、選手の夢のためだけに出資してくれるスポンサーは限りなく少ない。キールボートでプロを名乗るセーラーたちも、何かしらの副業による収入で生計を立てているのが実情だ。とすれば、世界を目指すディンギー選手たちは、「アマチュア」としての立場を受け入れて、その中で出来る限り、戦うための条件を満たしていくしか方法はない。
もしアマチュアとしてヨットレースを戦う決心をしたら、まずはその目標を大きな声で宣言するべきだと僕は思う。トレーニングや遠征のために仕事を何日も休む。キャンペーン中にそんな状況は必ず発生する。そのときに職場や家族からの協力が得られるか。それを理解してもらうためには、まずは自分の目指すものを周囲に知ってもらわなくてはならない。僕はオリンピック挑戦の経験はないが、社会人でスナイプ級でのレース活動を始めたとき、全日本選手権での優勝を目標に決めた。当時の僕の実力を知る人たちは「冗談でしょ?」という反応。いまでもそのときの悔しさを覚えている。そして、なおさら闘志が湧いてきた。
職場の上司には、仕事帰りの居酒屋で「日本一を目指す部下と、平凡に仕事だけしている部下、どっちが欲しいですか」と熱っぽく説得した。夜はわざと本社工場の周りをジョギングして、帰宅途中の同僚たちに、僕の流している汗を見てもらう。そんな(したたかな)努力の結果、レースで長期休暇する際には職場のみんなが僕の仕事を分担で引き受けてもられたり、同僚が海外遠征費のためにカンパを募ってくれた。いまでも、応援してくれた人たちへの感謝の気持ちで一杯だ。競技活動と仕事の両立は本当にしんどかったが、このときに出来た人間関係が、いまの生活にも継続して役立っている。
まあ、僕の経験談などはどうでもいい。ただ実際に、昔はもっと多くのセーラーがいろんな立場やスタンスで世界を目指していたように思う。沢山の周囲の人と絡み合って、支援をもらって、挑戦していた。その厳しい代表争いがあったから、真の意味での“日本を代表するセーラー”を五輪や世界大会へ送り込んでこられた。いまの若いセーラーたちは、そんな努力も嫌がるのだろうか。そうじゃないだろう。
だからアマチュアセーラーたちよ、まずは自分の目標を高らかに宣言して欲しい。そして、その真剣さを見える形にして欲しい。そうすれば、きっとみんなが応援してくれるはず。このKAZI誌も、そんな選手を記事で取り上げて、応援を募る場所になって欲しい。
「こいつだよ!昔さあ、俺が応援してやったんだよね!」
リオ五輪のテレビ中継を観ながら、そうやって盛り上がる日本中のオヤジたち。その中のひとりに僕もなりたい。 ■
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