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アラフォー帆走生活(KAZI連載)
『 海なし県 』 February, 2014 text by Koji Ida
全国のKAZI愛読者の皆様、あけましておめでとうございます。
この原稿を書いているのは、2014年の元旦。
今日は朝から西風がいい具合に吹いていて、庭木の枝たちを勢いよく揺らしています。空は青く澄んだ快晴で、真冬にしては感じる気温もそんなに寒くありません。ディンギーでプレーニングを楽しむには、持って来いのコンディション。この原稿を書き終えることができれば、すぐに海へ飛び出して、年初めのスプラッシュ・ウォーターを存分に満喫することでしょう。しかしながら、それは叶わない。
だって僕はいま、海から遠く離れた栃木県にいるのですから・・・。
なんのご縁があったのか、12年前に結婚した奥さんの出身地が、栃木県の下都賀郡というところ。KAZI誌を読まれている人には、まったく馴染みのない土地ですね。宇都宮市の少し南に位置するこの場所は、大島優子(AKB48)と斉藤和義(ミュージシャン)を輩出した町と言えば聞こえもいいですが、見渡す限り、田んぼと畑しかありません(下都賀郡の皆さん、ごめんなさい)。
我が家では、8年前に長女が生まれてから、お正月と夏休みは、この栃木の実家で多くの時間を過ごすことにしています。なにしろ住んでいる場所(兵庫県西宮市)が遠いので、そんな長期休暇のときにしか帰省できません。そして僕は、この町が気に入っている。まわりは田んぼばっかりだから、当たり前にコメが美味い。滞在中、毎日のように食べる宇都宮餃子は、もはや大好物だ。実家に集まってくる親戚はみんな気持ちのいい連中ばかりだし、関東平野の雄大な景色は、日常に疲れたココロを癒してくれる。夏は川遊びも楽しめるし、冬にはいい温泉が沢山ある。そう、なんの文句もない、心地いい場所。
ただ一点、「海が無い」ということを除けば。
西宮から栃木の実家までは、いつもクルマで移動します。東名高速から望む駿河湾が、この帰省旅行で見える最後の海。ここを通り過ぎると、次に帰ってくるまでの約1週間は、海に出会うことがありません。海から徒歩15分のところに生まれ育ち、そこでヨット部に入り、そのまま25年以上もこのスポーツを続けている人間にとって、一週間も海が見えない生活は、ちょっと渇きすぎてしまうです。昨晩にみた初夢は、なぜかデニス・コナーらしき白人スキッパーのメルジェス24に乗って、僕はジブトリマーをしておりました。デニスがあせってスタートに失敗して、そこで目が覚めたのですが、僕は新年早々、とってもヨットに飢えているみたい。
当然ながら、栃木の親戚一同は、ヨットのヨの字も知りません。そりゃそうですよね、テレビや新聞にはほとんど出てきませんし、このKAZI誌だって栃木では(僕の立ち寄った限りでは)本屋さんに並んでいないのですから。それが少し寂しいのです。ヨットにも乗れず、ヨットのことを話す相手もいない。
こんな海なし県でも、セーリングの話題ができるように、競技の認知度をもう少し上げることができないだろうか。東京五輪が決まっても、セーリングが注目される順番は、下から数えたほうが早いでしょう。アメリカズカップで巨大カタマランが飛んだって、日本国民の9割以上は知りません。でも、栃木県民ですらヨットに興味を持つような良いアイデアがあれば、この国でセーリングをメジャーにできるはずだ。そして僕は考える。今日も口いっぱいに餃子をほお張りながら、僕は必死に考える。
「そうだ、この餃子の皮でヨットのセールを造ったら、ものすごく注目されるのではないか!」。
そんな馬鹿なことしか思い浮かばない、新年の始まりなのです。 今年もアイムソーリー。 ■
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