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アラフォー帆走生活(KAZI連載)
『 グッドフォーチュン 』 March, 2014 text by Koji Ida
兵庫県西宮市。 僕がこの街で暮らし始めて14年が過ぎた。
ここに住む一番の理由は、当然ながらヨットに乗るためだ。全日本インカレやジャパンカップも開催される新西宮ヨットハーバーを中心に、まさしくヨットレースの西のメッカ。本誌の読者なら誰でも、「西宮」と聞けばヨットのことを思い浮かべるだろう。しかしながら、世間一般では違う。甲子園と、えべっさん。日本中の高校球児が憧れる球場と、年の始めの「福男選び」や「奉納マグロ」で有名な西宮えびす神社。それらが、皆の知る西宮なのだ。
今年も1月10日の福男選びはテレビニュースなどで話題となった。ある局は生中継までやっていたし、僕も昔、早起きして開門前に並んだことがある。この行事、正式な名称は「開門神事福男選び」と呼ぶらしい。あくまでも神事であり、競技ではないとのこと。現在では、開門前の先頭に並ぶ順番も前夜の抽選で決めるそうで、足の速さよりも「抽選でいい場所を引く」とか「すべって転ばない」など、まずは“幸運”が大きな鍵となっている。そもそも勝ち負けを競うのでなく、誰が神様に“選ばれるのか”を試すものなのだ。
そう考えると、僕らのヨットレースも福男選びと同じではないだろうか。実力のあるセーラーは、ちゃんと勝負のポイントを見極めて、戦略と戦術を駆使して勝利にアプローチするのだろう。でも、僕の場合は違う。
スタートで他のフネに邪魔されませんように。 風上航で自分が進んだほうに風が振れますように。 僕のところだけ、強い風が吹きますように。 ライバル艇のラダーに藻やゴミが引っ掛かりますように。 ついでにマークタッチもさせてください、お願いします。
レース中の僕は、そんなことばかりを神様にお願いしている。 もしかして、皆さんは違うのか?
タクティシャンというポジションは、僕の中では別名「占い師」。だって、目に見えない風の変化を予測し、自分のフネだけ誰よりもいい風が吹く場所を帆走らせるなんて。そんなの、誰が見たって神業だ。必要なのは、コンパスよりも水晶玉。きっと優秀なタクティシャンには、強力な背後霊が付いているに決まってる。霊感のない僕がそんな連中に対抗するには、神頼みしか手段がない。
アラフォーの僕は、四十歳代の最初の試練である本厄を無事にクリアした。あとは今年の後厄をどうやって乗り切るか。やはりこれも神様にお願いなのだ。小難しい説教をくれるホトケ様には頼まない。不真面目な僕が欲しいのは“教え”ではなく“幸運”なのだから。
というわけで、寒い冬もようやく終わり、春のレースシーズンの始まり始まり。皆さんも、2014年の最初のレースで「福セーラー選び」をしてみてはいかがか。誰が勝つのか、ではなくて、誰が風の神様に選ばれるのか。今年も皆さんの乗る宝船に、良き風が吹き、ささやかな幸運が届きますように。
そして一番の大きな幸運は、僕だけに。 僕だけに届きますように。 ■
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