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アラフォー帆走生活(KAZI連載)

 

『 本当の理由 

 June, 2014

 text by Koji Ida

 

 

誌の先月号まで短期連載されていた、「タッキングの理由」。

皆さん、ちゃんと読まれましたか。

 

僕は、この企画への協力をスナイプ級の選手にお願いしたこともあり、とっても興味深く読ませていただきました。470級も含め、詳細なレポートを書いてくださった全日本上位のトップセーラーの皆様、本当にありがとうございました。この場をお借りしまして、厚く御礼申し上げます、ぺこり。

 

 

それにしても、トップ選手たちのコース引きに対する個々様々な考え方しかり、それを特集記事に纏め上げた松本和久さんの切り口しかり。もう、それは哲学ですな。タクティクス&ストラテジーとは、レーシングセーラーの個性とアイデンティティーが浮き彫りになる部分なのです。僕のような三流セーラーだって、レース仲間とコース哲学を論ずるだけで終電まで呑めちゃいますからね。酒癖が悪いので、誰もその話に付き合ってくれないけど。

 

ただ僕の場合、自分のタッキングの理由を考えてみると、純粋な戦術と戦略だけで、タック・ポイントを決めたりはしていないことに気付きました。現実のヨットレースでは、もっと複雑な事情があるのです。

 

まず、日本のセーリング界では、体育会の学連ヨット部出身者が多いので、それなりの上下関係が存在する。それは今も昔も変わらない。怖い先輩とミートしたら、ちょっと離れた場所で静かにタッキングしなければならない。だって、近くでタックして邪魔すると、レース後にこっぴどく怒られますからね。レガッタを征するためには、精神的ストレスを増やさないように、面倒くさい先輩との絡みは出来る限り避けたほうがいい。あっ、えっと、面倒くさい先輩っていうのは、先輩のことじゃなくって、別の先輩のことです。

 

次に生意気な後輩と遭遇したときは、容赦なくタイトカバーのタッキング。別に素通りでもいいんだけど、あえてキツーイ場所でバシッと決める。出る釘は徹底的に打ちまくり、若い芽は摘んだあとに除草剤も撒いておく。弱肉強食の競技スポーツの世界で長く活躍したいなら、自分より若い世代の成長を喜んではいけない。ココロを鬼にすることも真のアスリートには必要なのだ。まあ、僕は笑いながらタック打ちますけどね。

 

これらの戦術を、僕は“年功序列タクティクス”と呼んでおります。この戦術に、風の振れやマークの位置などは一切関係ありません。

 

 

その他にも、常に上位を帆走る優秀な選手を探して、とりあえず同じ方向へついて行く“コバンザメ作戦”。逆に、いつもコースを大外しして順位を落とす選手を近くに発見したら、すぐにタックして反対方向へ逃げる“疫病神に近寄るな作戦”。この2つの戦略は、自分で考えたコースプランよりも当たる確率が非常に高い。読者の皆さん、嘘だと思うなら一度試してごらんなさい。

 

このように、相手を見てプランを決めるのが僕のコース哲学なのだが、皆さんの場合はどうなのでしょう。案外、多くのセーラーが僕と似たような感じだったりして。今回、企画に協力いただいたトップ選手たちにも、そのままじゃレポートには書けない本当の理由があったに違いないのだ。そうでしょ?あったんでしょ?

 

というわけで、次回は「タッキングの“本当の理由”」という特集企画はいかがですか。まあ、絶対に採用されないと思いますけどね。 

 

 

 

 

 

 

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