|
BACK NUMBER esseys of sailing and life. |
|
|
アラフォー帆走生活(KAZI連載)
『 博多の海で 』 November, 2014 text by Koji Ida
「ガッハッハ。おまえ、最高のタイミングやなぁ!」。
大学ヨット部の先輩たちがバカ笑いしている。 何が面白いのかというと、10月に転勤で博多へ引っ越してきた僕のことだ。
僕の母校は全日本インカレ団体戦になると、OB会で大応援団を結成する。昨年は西宮で、おととしは琵琶湖。連続して関西圏で開催された。卒業して20年。いまだにOB会で下っ端の僕は、自宅(西宮)が近いこともあり、2年連続で観覧艇の運転手。今年こそ紅葉見物にでも連れてってよー、という家族の意見もそっちのけ。11月の行楽シーズンの連休を、すべて母校ヨット部の応援に捧げてきたのだ。
しかしながら、それも去年までのお話し。今年のインカレ開催は、はるか遠く福岡の小戸ヨットハーバーだ。現地での応援は九州在住のOBにオマカセして、僕は西宮の海から後輩たちの健闘を祈りましょう。
・・・と思っていた。 なのに、インカレ直前に博多への転勤辞令。がびーん。 それを聞きつけたOB会の先輩たちは、「よっしゃ。じゃあ今年もおまえが運転手ね。ウッシッシ。」と大喜び。
なぜだ。なぜこのタイミングで博多に転勤なのだ。 僕は、目には見えない大きな力の作用を感じずにはいられない。
思い返せば、高校3年の最後のレースは福岡とびうめ国体だった。大学4年のインカレも、今年と同じ小戸ヨットハーバー。僕のセーリング人生で、節目の年には必ず博多の海にやってくる。でも一体、42歳になる僕に、なんの節目があるっていうのだ。
もしかして、後厄。 そうか、そういうことだったのか。
というわけで、最後の厄払いを兼ねて、全日本インカレ団体戦を観戦いたしました。上マーク回航で上がるスピンの色に、「おおー!」と歓声をあげたり、「ありゃりゃ」とため息をこぼしたり。OB観覧艇では、去年の卒業生から何十年もインカレを見続けている大先輩まで、老若男女がみんな一緒になって声援を送っています。中には、息子さんが母校ヨット部に入って、父兄として応援している先輩も。なんだか、ヨット部という大きなファミリーの良さを感じるのです。
ただ残念ながら、母校の後輩たちは、望んだ結果を得られなかった。素晴らしいセーリングで、最後まで諦めずに全力を尽くしてくれたけど、それ以上に勝ったライバル校が一枚上手だった。悔しいけれど、それが勝負の世界だ。勝者を称えるとともに、敗れた後輩たちにも拍手を送りたい。20年前の僕らと同じように戦い、敗れた若いセーラーたち。あのときと同じ、この博多の海で。
そのインカレの風景は、僕らの20年前の記憶に類似し、胸の奥がキュンと締めつけられる。きっと彼らにとっても、この海が忘れられない場所になるだろう。大学生という人生で最も多感な時期に、刻まれる強烈な記憶と感情。それが毎年繰り返されることで、インカレというイベントを独特な雰囲気にさせている。そしてまた新しい世代が、次のシーズンへ向けて準備を始めるのだ。
大会が閉幕し、先輩から言われた。「おい。来年のインカレは江ノ島だから、それまでに横浜くらいへ転勤しといてくれよ」。えっ?ちょっと勘弁してくださいよ。まだ博多に来たばっかりなのに、それは流石にありえません。
いや、待てよ。もしかして・・・。■
|
|
|
esseys of sailing and life. BACK NUMBER |
|