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アラフォー帆走生活(KAZI連載)

 

『 そこの立ち読みしている君へ 

 April, 2015

 text by Koji Ida

 

 

 

い君、ちょっと待ちたまえ。

君だよ。いま書店で、KAZI誌を立ち読みしている君のことだ。このページをめくり飛ばさずに、少しだけ僕の話を聞いてくれないか。

 

 

一体どうしたんだい。野球やサッカーじゃなくて、こんなマイナースポーツの専門誌を立ち読みするなんて、なにか理由があるんじゃないか。ははーん、分かった。四十路を過ぎた僕には、君が高校生か大学生かの区別もつかないが、どうやら新しい学校での新人勧誘で、ヨット部に入らないかと誘われたんだな。それで、インターネットの情報だけではよく分からないので、本屋のスポーツ雑誌コーナーへ調べに来たというわけだ。どうだ、図星だろ。

 

最初に言っておこう。君は、とても重要な選択に直面している。ヨット部に入るのか。それとも入らないのか。それは君の今後の人生に大きな影響を与えるだろう。いま君が思っている以上に、とても大切な選択だ。

 

たとえば君は、ヨット部に入らなかったら何をするつもりなんだ。いままでやってきた部活や趣味の延長線をたどるのか。それは違うだろ。新しい何かを始めたいから、ヨット部に悩み、この雑誌を手に取ったのではないか。悪いけど、グラウンドや体育館でやる競技スポーツなんて、どうせみんな似たり寄ったりだ。でもセーリング競技は違うぞ。海は、君が知らないことで溢れている。新しいことを始めたいなら、未体験のフィールド(海)へ出ようじゃないか。

 

えっ、なになに? アルバイトをして、両親の仕送りや授業料の負担を少しでも減らしたいだって?偉いじゃないか。僕はそういうのに弱いんだ。人を泣かせるんじゃないよ。でもね、考えてごらん。君の両親は、君にアルバイトさせるために学校へ通わせてくれたのか。それは違うと思うぞ。より素晴らしい人間に成長して欲しいと願って、送り出してくれたんだろ。君をコンビニの店員にさせるのが目的じゃない。ヨット部には、君を成長させるための要素が詰まっている。厳しい自然環境の中で行うスポーツだ。楽しいことよりも、苦しいことのほうが遥かに多い。でも、その苦労を乗り越えた先に何かがある。それを君は、勧誘された先輩たちの表情から感じ取ったんじゃないのか。だから君は悩んでいるんだ。違うか。それに一言いっておくが、バイトで金を稼いでも、どうせ合コンやパチンコで使っちゃうぞ。人間は誘惑に弱い生き物だからな。誘惑に負けてバイト代を浪費するよりも、ヨット部に入って強い人間になれ。それが両親への恩返しだ。

 

ヨット部に入ることで、君はいろんな可能性を手に入れる。マイナー競技だから、いまからでも東京オリンピックに選手として出場できるかもしれない。言い過ぎかもしれないが、可能性は他の競技種目よりは遥かに高い。それにヨット部で帆走技術を身に付ければ、君の気持ちと決意次第で、日本一周や太平洋横断のような冒険セーリングにも挑戦できる。地球上の広大な海の面積と等しく、君の可能性を広げられるのだ。

 

兎にも角にも、ヨット部に入るという選択肢に出会えた君は幸せ者だ。世の中のほとんどの人間が、この選択肢に気付かずに人生を浪費していく。君は、この上ない幸運の持ち主と言ってもいいだろう。この絶好のチャンスを無駄にせず、正しい選択をして欲しい。あと、来月号からは立ち読みじゃなくて、ちゃんと購読してね。この雑誌は、ヨット部生活に活かせる情報が満載だよ。■

 

 

 

 

 

 

  

 

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