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アラフォー帆走生活(KAZI連載)
『 引越しカートップ 』 May,2015 text by Koji Ida
三月の末。ワタクシ事で恐縮ですが、14年間を過ごした西宮を引き払って、福岡へ引っ越しました。
勤務先の転勤に伴なう引越しです。 ヨットハーバーが目の前の、とってもお気に入りのマンションだったのに、ここから出て行かなくてはならないなんて・・・。
ずっと前から覚悟はしていたのですが、いざ当日になると、やるせない気持ちで一杯なのです。
運送業者が西宮のマンションから荷物を積み出すのは午後でしたから、僕は午前中にハーバーへ行って、愛艇のおんぼろディンギー(レーザー級)をカートップに積み込み、事務所で退会の手続きを済ませ、お世話になった職員さんにペコリ。艇置料も安かったし、とても使いやすくて便利なハーバーだったので、ここを離れるのがとても残念。
夕方に家財の積み出しが終わり、カートップ姿のクルマに家族を乗せて出発します。うちの奥さんや子供たちは、この街でたくさんのトモダチができました。僕の転勤が理由でみんなを引き離すことになるので、申し訳ない気持ちで押しつぶされそう。
出発の前になると、とても大勢の人たちが集まって、我が家の旅立ちを見送りに来てくれました。お別れのあいさつが長引いて、なかなか出発することができません。涙を流してくれている人もいます。
不謹慎ですが、自分の家族がこんなに愛されていることを知り、嬉しかった。なんだか、僕の愛艇まで別れを惜しまれているみたい。
そんなセンチメンタルな惜別のあと、福岡を目指して夜の高速道路を走ります。途中のサービスエリアでディンギーを縛っているベルトの緩みをチェックする。フネを積んでいるので、そんなにスピードは出せません。福岡の新居に到着したのは、深夜の3時。疲れました。こんなにヘトヘトになった遠征は久しぶりです。
翌朝9時。運送業者が到着して、家財を新居へ運び込みます。 カートップのディンギーは降ろす暇もなく、クルマに積みっぱなし。 荷物の運び入れが終わったのが14時。
部屋の中に積み上げられた段ボール箱の山を見ると、「じゃあ、僕はハーバーでフネを降ろしてくるね」なんて、口が裂けても言えません。 まずはこの荷物を少しでも片付けなければ、奥さんにひどく恨まれ、二度とヨットに乗る自由は与えてもらえない。 そんな空気を察知して、僕はせっせと段ボールの山と戦うのです。
やっと福岡のヨットハーバーにフネを降ろせたのは、その翌日。 職員さんにご挨拶し、事務所で手続きを済ませ、クルマからフネを降ろす。学生のときから何度も訪れたハーバーですが、新しい環境での始まりに、なんだかドキドキ緊張します。 転校生って、こんな気持ちなのでしょうか。
そんな思いを巡らすのも、つかの間。 すぐに家へ戻って、また段ボールの山と戦う。 この戦いを早く終わらせないことには、僕はいつまでもヨットに乗れないのだ。
兎にも角にも、新しいセーリングライフの始まりです。 またもヨットハーバーの近くに新居を決めました。 家のベランダで風を感じたら、ウェットスーツをリュックに詰め込んで、自転車でハーバーへ。
いままでと同じ生活だ。 きっとここでも、素晴らしい風が僕を待っている。■
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