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アラフォー帆走生活(KAZI連載)

 

『 乞食セーラーのススメ 

 July,2015

 text by Koji Ida

 

 

 

の愛艇おんぼろディンギー。

推定船齢30年以上のレーザー級なのですが、先日とうとう寿命が来てしまいました。

5月のゴールデンウィーク最初の日。

風は爽やかな軽めのシーブリーズでした。

クローズホールドでバングをキュンと引いて、軽快にハイクアウトを楽しんでいたら、「バッキーン」と何かが壊れる不吉なノイズ。

それと同時にマストが根元からガクンと傾きました。

 

ありゃりゃ、やっちまったな。

なにぶん相当に年寄りなフネですから、FRP自体が経年劣化でボロボロです。

「マストホールが割れたら、もうオシマイだね」と思っていたのですが、その不安視していた部分が完全に壊れてしまいました。

運よく風が弱かったので無事にハーバーへ戻ることができましたが、壊れたところは修理できそうにありません。

 

 

あーん、どうしよう。

せっかく楽しい大型連休が始まったというのに、僕は自由に乗れるフネを失いました。

この連休だけでなく、これからのセーリングライフが大ピンチ。

僕のナケナシのお小遣いでは中古艇さえ買えません。

もしもフネを買おうと貯金しても、奥さんが「ヨットを買うなんて、お小遣いが多すぎるのね」と、僕のヘソクリを没収するに決まっています。

もしかして、これが人生で最後のセーリングになるのだろうか。

そんな憂鬱な気持ちのまま、ゴールデンウィークが過ぎてゆくのです。

 

 

フネを失くしてから一週間後のウィークエンド。

家の中でクヨクヨ悩んでいても仕方がないので、とりあえずヨットハーバーへ行ってみます。

そこなら何か良いアイデアが浮かぶかもしれません。

でも、壊れた愛艇を眺めていても、修理ができるわけでなく、その辺に新しいヨットが落ちているわけでもありません。

 

あれれ。

そこにヨットが落ちてるじゃないか。

 

ハーバーのバースエリアの隅っこに、何艇かの古いディンギーが集めて放置されておりました。

その中には、僕の壊れた愛艇より船齢の若いものもあります。

もしかしてと思い、シャイで内気で人見知りの僕ですが、勇気を振りしぼってハーバーの職員さんに聞いてみました。

 

あのー、このフネたちって、もしも捨てるのでしたら僕が貰ってもいいでしょうか?

 

「うん、いいよ。タダであげるよ。」

 

えー!? マジっすか。

この喜びをどう表現したらいいのだろう。

タダで貰ったのはこれまでと同じレーザー級。

見た目はボロボロですが船齢は10年くらい若返りました。

マストホールもしっかりしてるし、これなら安心してプレーニングを楽しめそうです。

 

その日は一日中、拾ったヨットのハルを洗ったり、デッキパーツを付け替えたり。

その作業はしんどくても、またヨットに乗れるんだと思うと嬉しくって仕方がない。

こんなウキウキな気持ち、みんなにも分けてあげたい。

 

 

というわけで、自分のヨットが欲しくても、お金がなくて諦めている皆さん。

とくにオコヅカイ制で苦しんでいるサラリーマン・セーラー諸君。

こんな乞食セーラーは如何でしょうか。

 

ヨットハーバーを見渡せば、しばらく誰にも乗られていないセイルボートが必ずあると思います。

ダメ元で、「このフネ、要らないなら貰えませんか?」と聞いてみたら、意外とスムーズにゲットできるかもしれませんよ。

そのときの喜びは、まさしくプライスレス。

 

だって、タダよりも安いものはないのですから。■

 

 

 

  

 

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