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アラフォー帆走生活(KAZI連載)
『 海の庭師 』 August,2015 text by Koji Ida
突然ですが、いま僕は芝生を育てることに夢中です。 この春に引っ越した福岡の家には、狭いながらも陽当たりの良い庭があるのです。 でも、住み始めたときは枯れ草と土だらけの無残な姿。 ああ、これではダメだ。 僕の理想は、週末の晴れた日に、お庭一面に広がる青い芝生のうえで、家族みんなでバーベキュー。 今日は風も吹いていないし、セーリングはお休みだ。 子供たちの笑い声を聞きながら、お肉を焼きつつビールを楽しもう・・・なんてね。 目を閉じてイメージするだけで、とっても幸せな気分になれるのです。
よし、芝を植えようじゃないか。 お父さん(僕)がステキな芝生を育ててやるぞ。 そんな軽はずみな決意が、すべての失敗の始まりでした。 なにしろ僕は、生まれてこのかた芝生どころかチューリップさえ育てたことがない園芸ど素人。 しかも、とってもズボらな性格です。
お金がないので高価な育成済みのマット芝は買わず、種から蒔くことにチャレンジ。 適当に土を耕し、ホームセンターで買ってきた安い西洋芝の種を適当に蒔いて、適当に水をかける。 そんな1回目の種まきは、いつまで経っても発芽してくれません。 その失敗に反省し、芝生の育て方を少しづつ勉強です。 2回目、3回目、と種を蒔いて、2ヶ月でやっと少しだけ緑に育ってくれました。 でも、まだまだ理想の「お庭でBBQ」にはほど遠い。 いつになったら夢が実現できるのだろうと、毎朝、途方に暮れながら水を撒いております。
しかしながら、芝生の育て方を調べていると面白いことに気付きました。 植物なんて、水と肥料をしっかりやればいいと思っていたのですが、芝の場合は、適度に刈って刺激を与えないと、強くて綺麗な芝生に育たないそうです。 しかも、最初に刈る高さは少しにして、徐々に短くしていくんですって。 十分に育っていないときに刈り過ぎると、今度は芝が枯れてしまうそうです。 へぇ〜、なんだかスポーツ選手を育てるのに似ています。
セーリング競技の場合、初心者が見よう見真似で勝手に始めるということは不可能に近い。 複雑な道具を使うし、間違った知識では海の上で危険が増える。 だから、かならず「指導者」が必要になる。 その教える側の手腕が、この国の競技レベルに大きく影響している。 ヨットレースで勝つための技術や知識を伝えるのは当然のこと。 コーチングで選手の様子をよく観察しながら、適切な刺激を与えて、若いセーラーを強く育てていかなくてはならない。
まさしくセーリング競技の指導者は「海の庭師」と呼べるのではないだろうか。
東京オリンピックまで、あと5年。 セーリングに限らず、様々な競技スポーツがそこに向かって強化や普及の輪を広げ、活動を加速させるだろう。 その流れの中で他の競技に負けないためにも、海の庭師たちにさらなる活躍をお願いしたい。
そんなことに思いを馳せながら、毎朝お庭に水を撒いております。 きっと良い指導者は、芝を育てるのも上手いんだろうなぁ。 我が家の芝生は、緑がまばらで土のほうがまだ多い。 しかも、ところどころが枯れてきました。 ありゃりゃ大失敗ですな、これは。
残念ながら僕には、庭師のセンスはないみたい。 きっと指導者になっても、選手を枯らしてしまうに違いない。■
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