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アラフォー帆走生活(KAZI連載)
『 冬のウェットスーツの憂鬱 』 February,2016 text by Koji Ida
先日、インターネット通販でウェットスーツを購入しました。 今まで着ていたものが古くなったので、その買い替えです。
冬のディンギー用に、とりあえず最も安価なものをチョイス。 デザインや機能性は二の次です。 僕のお小遣いには限りがあるし、ビール腹でふくらんだ中年体系では、なにを着ても動きづらくて不細工なのだ。 セーリングウェアに限らず、ボディーラインの出る衣服って残酷ですね。世のポッチャリ女性たちの苦しみが分かります。
そんなことはさて置き、冬のディンギー乗りは、ウェットスーツ派とドライスーツ派に分かれると思う。現在の僕は前者だ。
高校でヨット部に入り、はじめてドライスーツを着た先輩の姿を見たときは、なんじゃこりゃ!?と驚いた。 首や手首のラテックス(ウェア内への浸水を防ぐゴムのところ)のモコモコ具合が、なんだかアラブの王様みたい。 お世辞でもカッコいいとは言えません。 その第一印象のせいだろうか、高校も大学ヨット部時代も、僕はずっとウェット派。まあドライスーツは高額で買えなかっただけですけどね。
社会人になって最初のシーズンに、はじめてドライスーツを購入した。いまではもう発売されていないかもしれないが、上下がセパレートで腰の部分のラテックスをくるくる巻くタイプのやつです。 足のラテックスが靴下のようになっていて、冬の冷水に触れなくて済むのだ。 なんて天国。こんなに快適だったら、もっと早く買うべきでした。
ウェットスーツのデメリットは、なんと言っても練習二日目以降の朝の着替えに尽きる。冬の寒い季節、前日の練習で濡れたウェットスーツが翌朝に乾いていることは有り得ない。 濡れて冷えたスーツに脚を差し込み、袖を通す。 うひょー、つめたい。 その極寒の刺激ゆえに、まずは着替える前にココロの葛藤と戦わなければならない。 それは冬の朝に布団やコタツから出られない小学生の気持ちに等しい。
この葛藤に負けてクラブを辞めてしまったヨット部員、じつは結構たくさんいるはずです。 もしも、どんな季節でも翌朝までに必ず乾くウェットスーツがあったら、ディンギーヨットの競技人口は倍増していたのではないかと僕は思う。
ウェアメーカの皆さん、開発をよろしくお願いします。 これは君たちの使命だ。
一方でドライスーツは手入れが面倒くさいし、寿命が短い。 ラテックスが少し硬くなると、着るときにそこから裂けて防水性を失ってしまう。 大学ヨット部の冬合宿では、朝の着替えタイムに「わぁ、やっちまったぁー!」という叫び声をよく耳にしたものだ。 ラテックスが破れてしまったのですね。 ワッハッハ。ざまあみろ。 当時ウェット派の僕は、着替えの苦痛を共有できないドライ派の連中を妬んでいたので、彼らの悲哀の表情が愉快だった。 他人の不幸は蜜の味。 僕はココロの狭い人間です。
結局、僕がはじめて買ったドライスーツも3シーズンくらいで駄目になったと記憶している。 同じドライを新調するお金も無く、そこでウェットスーツ派に復帰しました。 いまは二日連続でディンギーに乗る機会は少ないので、濡れて冷えたスーツの着替えに耐えることはない。 それを寂しくも感じるが、まあそんな機会があったとしてもココロの準備ができません。 四十歳を過ぎたオヤジでも、コタツから出られない小学生と同じなのだ。■
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