BACK NUMBER  esseys of sailing and life.

 Back to index

アラフォー帆走生活(KAZI連載)

 

『 求む、個性派セーラー 

 March,2016

 text by Koji Ida

 

 

 

ある、冬の日曜日。

とてもよく晴れた一日だったのですが、僕は海へは出ずに家族を連れて福岡市内の日帰り温泉へ。

もう歳も歳だし、無理は禁物なのです。

玄界灘は水温も低いしね。

寒い季節はセーリングよりも、ゆっくりと熱い湯舟につかって汗を流すのが一番じゃわい。

まあ本当の目的は、湯上がり後のビールですけど。

 

というわけで日帰り温泉。

露天風呂に入ろうと外へ出ると、そこには大型の液晶テレビが設置されていて、ちょうど大阪国際女子マラソンの中継が放映されてた。

レースはもう終盤で、福士加代子選手(ワコール)がぶっちぎりトップ。

 

へえ、福士さんだ。

まだ現役で頑張っているのですね。

もう10年以上も前でしょうか。

僕がスナイプ級でレース活動をしていた頃、京都府体育協会の年間表彰式に呼ばれたのですが、その式典にマラソンを始める前の福士選手も出席されていました。

すでに彼女は陸上トラック競技の女王として有名だったので、ウワー、スゲー、あの福士さんだぁ!と感動したのを思い出します。

そうか、あの頃は僕も表彰式に呼ばれるアスリートだったのか。

露天風呂に寝そべりながら、湯面から浮かぶ自分のビール腹と、軽やかに走るランナーたちの姿を見比べる。

ああ、歳月の流れはなんて残酷なのだ・・・。

 

えっと、話がそれました。

マラソン中継の実況を聞いていると、このレースはリオ五輪の代表選考を兼ねているらしい。

福士選手はギリギリで派遣基準タイムを切る結果を出したのですが、ゴールするまで観ているこっちもドキドキです。

でもそれ以上に印象に残ったのは、ゴール直後の福士選手のガッツポーズやインタビューへの受け答え。

翌朝のスポーツ紙やTVニュースでも、「リオ決定だべぇ!」というコメントを大々的に紹介していましたね。

よくもまあ42キロも走ったあとに、そんなユニークなセリフが出てきますな。

ランナーとしての実力もさることながら、彼女の強烈な個性がマラソン界を盛り上げている。

 

 

セーリング競技においても、そんな個性的な選手が出てこないだろうか。ヨットレースの観戦は、僕ら愛好者でさえあまり面白いとは感じない。

 

これからリオや東京五輪でメディアに取り上げられる機会も増えるだろうが、取材する側はこの競技のどこにフォーカスしていいのか悩むはずだ。でもセーラーにタレント性があれば番組や記事もつくりやすい。

 

「セーリングに面白い選手がいるぞ」と報道関係者に認められれば、注目を集めてヨットブームを起こすことも夢じゃない。

JSAFはメダル獲得のための競技力向上だけでなく、選手の個性を高めるための指導に取り組んではいかがか。

吉本興業などに協力を仰ぎ、取材のときに面白いリアクションがとれるスキルを選手に習得させるのだ。

 

あと五輪ヨットレースの中継も、全艇にオンボードマイクを搭載させて、選手の会話や独り言を収録するのはどうだろう。

選手たちはマイクがあることを意識して、レース中の一喜一憂を声に出して過剰気味に表現するのである。

そのほうがいろんなドラマが感じられて飽きのこない中継になるはずだ。

スキッパーとクルーが喧嘩しているところをマイクが拾い、「あのペア、じつは昔から仲が悪いんですよね」などと解説者がカミングアウトしたりして。

アハハ。GPSで航跡なんかを観るよりも、こっちのほうが断然に面白いでしょう。

 

真剣にセーリング競技に取り組まれている皆さん、不真面目な発想で申し訳ない。

でも、この競技を盛り上げるためには、不真面目な個性も必要なのではないかと僕は思う。

露天風呂のテレビ前に人だかりを作れるような、そんな個性派セーラーの出現を望む。■

 

 

 

  

 

 Back to index

 

 

 

 esseys of sailing and life.  BACK NUMBER