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アラフォー帆走生活(KAZI連載)

 

『 前略、新入生様 

 May,2016

 text by Koji Ida

 

 

 

略、新入生様。

春からの新しい生活には、もう慣れましたか。

入学から少しばかり月日が経ちましたので、そろそろ部活やサークル活動を決めなければいけないと、ちょっと焦っている人も多いことでしょう。

折角のキャンパスライフですから、勉強とアルバイトだけで終わってしまったら勿体無い。

何かのクラブに入って、思いっきり青春を謳歌するべきと思います。

きっと貴方もそう考えているから、部活選びで悩んでいるのですね。

でも、選択支肢が多くて決めるのが大変でしょう。

僕にも何かお手伝いができればいいのですが・・・。

あっ、そういえばご存知でしたか。

貴方の学校には、ヨット部があることを。

 

 

ええっと、はじめまして、自己紹介が遅れました。

僕は高校、大学、社会人とヨット部に入り続けて、生涯ヨット部30回生のオジサンです。

こんなに長い部員生活ですが、好きでやっているというよりは、辞めるタイミングを見失ったというのが本音のところ。

しかしながら、ヨット部に入って後悔したことはありません。

・・・いや、それは嘘でした。

逃げ出したくなるのは、いまでも日常茶飯事です。

厳しい自然環境の下での競技ですから、楽しいことばかりではありません。

でも、それが逆に大きな魅力のひとつと言えるでしょう。

セーリングという、非日常的なスポーツに出会えたことで、いまのところ素晴らしい人生が送れていますし、そのことをいつも神様に感謝しております。

 

 

ところで、貴方は入学式の後でヨット部員に勧誘されませんでしたか。

この季節としては不自然な日焼け顔をした連中がいたでしょう。

そう、それがきっとヨット部です。

彼らは日焼けサロンに通っているわけではありません。

冬の間も、凍える海の上でずっと練習してきたのです。

そりゃあ辛いですよ。

風と波しぶきは肌に刺さるような冷たさですし、シートで擦れた手指の皮は赤々と捲れ、激痛でシャンプーもできません。

でもね、そんな辛さを仲間たちと励まし合って乗り越えていくことに、彼らは価値を感じているのです。

貴方も、その仲間に入ってみては如何でしょうか。

 

 

そういえば、試乗会には参加されましたか。

貴方にとって未知のスポーツにお誘いするのですから、まずは実際に体験していただくのが良いかと思います。

ただ、ひとつお断りしなければいけません。

この試乗会では、セーリングを教えてくれる先輩たちが熱心すぎて、少し鬱陶しく感じるかもしれません。

でも許してやってもらえませんか。

普段は人目に付かないマイナー競技なので、こうやって他人に伝えられることが嬉しくて仕方がないのです。

でも、いざヨットに乗られたら、貴方は少なからず感動を覚えるでしょう。

気付かないほどの弱い風なのに、その力だけでフネが進んでいく不思議な感覚。

煩わしいエンジン音はありません。

聞こえるのは、ハルと水面が弾くシャパシャパという微かな響きだけで、すぅーっと静かにヨットが滑っていくのです。

 

どうですか。素敵だと思いませんか。

えっ、入部を前向きに考えてくださるですって。

ありがとうございます。

生涯ヨット部30回生の僕にとって、貴方という新しい仲間を迎えることは、この上なき喜びです。

ヨット部での新生活を十分に楽しんでください。

 

そろそろ時間なので、本日のお話しは、ここまでにしておきますね。

ハイクアウトと呼ばれる強風下での姿勢についても説明したかったのですが、まあそれは、正式に入部されてからにしておきましょう。■

 

 

 

  

 

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