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アラフォー帆走生活(KAZI連載)
『 くりかえす夏の過ち 』 September,2016 text by Koji Ida
暑い。 風も水もぬるくて、爽快と言うには程遠い。 どうしてこんなクソ暑い日に海へ出てしまったのか。
長い梅雨が明けたばかりのウィークエンド。 やっと訪れた夏に気持ちがハシャぎ、僕は愛艇のレーザー級に乗り込んだ。
しかしながら、午後には吹き上がってくるはずと予想したシーブリーズに裏切られ、ぬるくて頼りない空気がセールの上をすり抜ける。 たまに浴びる波しぶきも、水温があがって心地よさを感じない。
これだったら、子供たちとレジャープールにでも行ったほうが、夏日を満喫できたかもしれないなぁ。そんな後悔の念に包まれたので、セーリングは早めに切り上げて、ハーバーに戻ることにした。
それにしても、真夏の微軽風でのレースや練習はつらすぎる。大学ヨット部を琵琶湖で過ごした4年間。毎年夏休みにインカレへ向けた長期合宿を組むのだが、ベタ凪の日ばかりだった印象が強い。ただ、体育会の運動部という性質から、風が吹くまで陸上で待機しよう、というわけにはいかない。根性論と声だしが大好きなカルト集団は、風が無くてもヨットを出してしまうのだ。
日陰のない湖上で、だくだくの汗を流しながら、ぴくりとも動かないテルテールを見つめ続ける。少しでも気を緩めると、恐い先輩たちから「しっかり集中しろよ!」と怒号が飛んでくる。えっとですね、先輩。いくら集中したって、こんな無風じゃヨットは進みませんよ・・・なんて本音は言えません。
キールボートにしたって、風のない真夏のセーリングは最悪だ。ディンギーよりも身体が水面から離れてしまうから、フォアデッキのクルー以外は波しぶきを浴びることも稀である。炎天下のレースで、スキッパーにダウンビロー(微風時に、艇体重心を低くしてボートスピードを上げるために、暇そうなクルーをドッグハウスの中に監禁する行為)を命じられたときには、アナタそんな性格だと友達ができませんよ、と忠告したくなる。空気のこもった狭苦しいキャビンの中で、いい歳した野郎どもが汗だくのカラダを密着させて、じっと動かずに我慢するのです。ああー気持ち悪い。
たとえダウンビローから逃れ、デッキの上に残れたとしても、スピンやメインセールのトリムワークは、ギラギラと照りつける太陽を見上げ続けなければならない。それはまるで、熱さにむせぶ宮殿で、巨大な天井画を描くルネサンス画家の苦行の如し。えっと、分かりにくい比喩でゴメンナサイ。
兎にも角にも、真夏のセーリングは楽しくない。気持ちよくシーブリーズが吹く日もあるが、ただそれにも増して、灼熱の微風下でのレースや練習がつらすぎて、そっちばかりが印象に残ってしまう。しかしながら面白いことに、真夏がツライと考えるのは、真夏の間だけなのである。この原稿が掲載される9月には、すでに暑さのピークは終わり、皆さんも朝晩の涼しさに過ごしやすさを感じていることでしょう。そして、去りゆく夏をさびしく思い、また翌年のサマーを恋しがるのだ。
人生で43回目の夏を迎えている僕ですが、こんなクソ暑い夏なんて早く終わってしまえ、という今の感情をケロッと忘れて、次の44回目を待ち焦がれるに違いない。そして来年の夏もきっと、クソ暑いベタ凪の中、海へ出るのであろう。
セーラーは、なんてオバカな生き物なのだ。■
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