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アラフォー帆走生活(KAZI連載)

 

『 散歩ついでにAC観戦(前編) 

 January,2017

 text by Koji Ida

 

 

 

一月。僕の暮らす街にアメリカズカップがやってきました。

開催の1週間くらい前からでしょうか、福岡では地下鉄のホームやバス停など、あちらこちらに告知ポスターが貼り出され、テレビCMも頻繁に流れます。

なんだか街中がアメリカズカップ一色に彩られたみたい。

一体この宣伝費用はどこから出てきたのだろう。

きっと、プロ野球のソフトバンク・ホークスが優勝した際のパレード予算が回ってきたに違いない、と勝手に勘ぐる僕なのです。

 

そんな集中的な宣伝PRのお陰で、ヨットレースを知らない職場や取引先の人たちから、

「アメリカズカップはどこから観られるの?」

「お前は出場しないのかよ?」

と、いろんな質問が雨あられ。

僕の人生で、周囲がこんなにセーリングを話題にしてくれたのは初めてのこと。ホークスから優勝をもぎ取った北海道日本ハムファイターズの選手諸君に、ぜひとも感謝状を送りたい。

 

 

大会スケジュールを確認すると、レース本番の二日前に、小戸ヨットハーバーに設営されたベースキャンプでACボートを下架するらしい。

本物のヨット好きなら、この貴重なシーンは見逃せません。

平日なので勤め先に休暇を申請したら、

「なにか用事があるのかい?」と、職場の上司から理由を問われました。一日中、ヨットが吊り降ろされるのを眺めるのですけど、なにか文句がありますか?と答える僕に、上司は呆気に取られてキョトン顔。

いかなる管理職も、ヨット好きの不良サラリーマン(43歳)を制御することはできないのです。

 

木曜日の朝。

「パパは今日、会社ずる休みなの?」

と無垢な質問をしてくる娘たちを小学校へ送り出してから、自転車でベースキャンプへ向かいます。

ハーバーには既に大勢のギャラリー。

アハハ。ヨット好きの不良サラリーマンが大集合だ。

秋晴れの澄みわたる空の下、光沢鮮やかなAC45が一艇ずつ、クレーンでウィングセールを建てて、そのまま海に降ろされていきます。

 

うひょー、かっちょいい。

その風景を隣接する公園から眺めていると、

「デカイなぁ、一体なにがあるんじゃね?」

と訊ねてくる散歩中のご老人たち。

課外活動で通りがかった園児たちは、ウィングセールの国旗をみて、

「あれは、ニッポーン!」

「こっちはアメリカー!」と大はしゃぎ。

 

アメリカズカップは、ボートを吊り降ろすだけでもエンターテイメントなのですね。

僕も会社を休んだ甲斐がありました。

不良サラリーマン、バンザーイ。

 

 

そして迎えたレース本番。

僕はヨット仲間からの海上観戦の誘いもお断りし、特設ビーチ会場のチケットも購入しませんでした。

折角のチャンスに勿体無いことですが、取材や報道はプロのメディアにお任せすればいいわけですから、僕が近くで観る必要はありません。

僕は僕なりに、一般市民の人たちに混じって、彼らと同じ距離感でアメリカズカップを観たかったのです。

ヨットを知らない日本のギャラリーの目には、世界最高峰といわれるヨットレースがどのように映るのか。

それを誰かがちゃんと見届けないと。

ただヨット関係者たちだけで集まって、アメリカズカップ最高だぞー、と自己完結してしまったら、単なるマスターベーションに終わってしまいます。

スポンサーに気を遣う報道メディアは、内容や印象を無視して、歴史的な大成功だと褒め称えるに違いない。

 

ですから僕は、散歩のついでくらいの気持ちで、アメリカズカップを観戦することにしたのです。

けっして、チケット料金が高額だからとケチった訳ではありません。

まあ、半額だったら買ったかもしれませんけど。

 

というわけで、文字数があふれ出したので、お話は来月号に続きます。■

 

  

 

 

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