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アラフォー帆走生活(KAZI連載)
『 散歩ついでにAC観戦(前編) 』 January,2017 text by Koji Ida
十一月。僕の暮らす街にアメリカズカップがやってきました。 開催の1週間くらい前からでしょうか、福岡では地下鉄のホームやバス停など、あちらこちらに告知ポスターが貼り出され、テレビCMも頻繁に流れます。 なんだか街中がアメリカズカップ一色に彩られたみたい。 一体この宣伝費用はどこから出てきたのだろう。 きっと、プロ野球のソフトバンク・ホークスが優勝した際のパレード予算が回ってきたに違いない、と勝手に勘ぐる僕なのです。
そんな集中的な宣伝PRのお陰で、ヨットレースを知らない職場や取引先の人たちから、 「アメリカズカップはどこから観られるの?」 「お前は出場しないのかよ?」 と、いろんな質問が雨あられ。 僕の人生で、周囲がこんなにセーリングを話題にしてくれたのは初めてのこと。ホークスから優勝をもぎ取った北海道日本ハムファイターズの選手諸君に、ぜひとも感謝状を送りたい。
大会スケジュールを確認すると、レース本番の二日前に、小戸ヨットハーバーに設営されたベースキャンプでACボートを下架するらしい。 本物のヨット好きなら、この貴重なシーンは見逃せません。 平日なので勤め先に休暇を申請したら、 「なにか用事があるのかい?」と、職場の上司から理由を問われました。一日中、ヨットが吊り降ろされるのを眺めるのですけど、なにか文句がありますか?と答える僕に、上司は呆気に取られてキョトン顔。 いかなる管理職も、ヨット好きの不良サラリーマン(43歳)を制御することはできないのです。
木曜日の朝。 「パパは今日、会社ずる休みなの?」 と無垢な質問をしてくる娘たちを小学校へ送り出してから、自転車でベースキャンプへ向かいます。 ハーバーには既に大勢のギャラリー。 アハハ。ヨット好きの不良サラリーマンが大集合だ。 秋晴れの澄みわたる空の下、光沢鮮やかなAC45が一艇ずつ、クレーンでウィングセールを建てて、そのまま海に降ろされていきます。
うひょー、かっちょいい。 その風景を隣接する公園から眺めていると、 「デカイなぁ、一体なにがあるんじゃね?」 と訊ねてくる散歩中のご老人たち。 課外活動で通りがかった園児たちは、ウィングセールの国旗をみて、 「あれは、ニッポーン!」 「こっちはアメリカー!」と大はしゃぎ。
アメリカズカップは、ボートを吊り降ろすだけでもエンターテイメントなのですね。 僕も会社を休んだ甲斐がありました。 不良サラリーマン、バンザーイ。
そして迎えたレース本番。 僕はヨット仲間からの海上観戦の誘いもお断りし、特設ビーチ会場のチケットも購入しませんでした。 折角のチャンスに勿体無いことですが、取材や報道はプロのメディアにお任せすればいいわけですから、僕が近くで観る必要はありません。 僕は僕なりに、一般市民の人たちに混じって、彼らと同じ距離感でアメリカズカップを観たかったのです。 ヨットを知らない日本のギャラリーの目には、世界最高峰といわれるヨットレースがどのように映るのか。 それを誰かがちゃんと見届けないと。 ただヨット関係者たちだけで集まって、アメリカズカップ最高だぞー、と自己完結してしまったら、単なるマスターベーションに終わってしまいます。 スポンサーに気を遣う報道メディアは、内容や印象を無視して、歴史的な大成功だと褒め称えるに違いない。
ですから僕は、散歩のついでくらいの気持ちで、アメリカズカップを観戦することにしたのです。 けっして、チケット料金が高額だからとケチった訳ではありません。 まあ、半額だったら買ったかもしれませんけど。
というわけで、文字数があふれ出したので、お話は来月号に続きます。■
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