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[column]  鷸が跳ぶ

 

002 「オリンピック」

text by Koji Ida

 

 

 

年はオリンピックイヤーである。セーリング競技においても、代表を目指す選手たちが激しい戦いを繰り広げている。この国でセーリング競技に係わるものとして、選手たちには悔いのないように、選考レース、本番のレースを戦ってもらいたいと思うし、メダル獲得を目指して頑張って欲しいと思う。一方、注目され、応援されるオリンピック候補選手を見て、正直に「羨ましいな〜」とも思う。

 

ご存知のとおり、スナイプはオリンピック採用艇種ではない。国際的な普及度合いをみれば、オリンピックに採用されていても良いのだが、昔いろいろあったそうで・・・。しかしながら最近になって、国際スナイプ協会ではオリンピック採用に立候補するという動きが出て来ているようである。北京、もしくは その次での採用が実現されるかもしれない。

 

しかし、スナイプがオリンピック艇種になれば、良いことばかりではないと思う。競技人口や競技レベルは格段に上がるだろう。だが、真にオリンピックを目指せば、キャンペーン費用は多大なものとなる。なんらかの経済的なバックグラウンドを持たなければ、キャンペーンを続けることは出来ない。唯でさえ“お金が掛かるスポーツ”として一般に認識されているセーリング競技であるのに、更にお金を掛けなければならなくなるのは哀しいことである。今の470とレーザーを比べても、ハードに関する必要費用には大きな差があると思われる。スナイプについても、オリンピックに採用されるのであれば、更にワンデザイン化を進めて、ハードの選択や開発に費用が掛からないようにして欲しいと願う。

またオリンピック種目になれば、どうしても選手の活動が4年周期になってしまう。オリンピックキャンペーンを張れるのは、1〜2回程度であろう。トップ選手は、4〜8年の周期で燃えつき、その競技から離れてしまうのかな、と心配をしてしまう。今のスナイプ選手は「スナイプが好きだから」という理由で乗っているのが殆どであり、その動機が長く続くから、選手寿命も長くなっていると思う。しかし「オリンピックに出たいから」という動機になれば、その競技生活はキャンペーン期間に限られてしまうのではないか。高年齢でもセーリングが継続できることを宣伝文句にしているスナイプとしては、選手寿命が短くなるのは哀しいことである。

 

方、オリンピックで、自分のやっていた艇種で、日本人がメダルを取る光景を観てみたい、という感情も大きくある。私も含めた日本人は、特にオリンピックというイベントが大好きな民族らしい。私には、ヨット=オリンピック、という発想はナカナカ出てこなかった。私にとってのオリンピックといえば、陸上であり、水泳であり、体操であり、柔道であり・・・。小さい頃から、テレビ中継で観てきた競技である。それらの競技はブラウン管を通して、様々な感動を与えてくれた。だから憧れた。でもヨットは私の幼少期に何も与えてくれなかった。競技の性質上、メディアが扱ってくれないのは仕方がない。協会として、セーリング競技独自のビデオを製作する等、オリンピックでの日本人選手の活躍を映像で残し、皆に伝えるようなことを検討して欲しいと思う。

 

セーリング競技の場合、一国一代表のオリンピックよりも、そのクラスの世界選手権やアメリカズカップの方が“ヨットで一番”を決めるのに相応しい大会だとも思う。オリンピックのそれはそれで、価値は変らないと思うのであるが、他のメジャー競技と合わせて観ると、どうしても脇役的に感じてしまう。それよりもヨット関係者だけで行う、ヨット競技者が主役となる大会の方に魅力を感じる時もある。セーリング競技の発展をオリンピックだけに依存するのではなく、独自開催の大会でも盛り上げれるようにならなければいけないと思う。スナイプ世界選手権は、まさしく「スナイプの祭典」であるが、オリンピックは「スポーツの祭典」であって、「ヨットの祭典」ではない。オリンピックだけに頼れば、その採用から外された後に、無残な衰退だけが待っているように思える。

 

スナイプの選手も、スナイプに拘らず、どんどんオリンピック種目に挑戦していって欲しい。他国ではスナイプ出身者がオリンピック代表となるケースも多く、メダルを獲得している選手も少なくない。日本でも昔は、スナイプと470のどっちでも速い、という選手が結構いたのだが、最近はそんな人も減っていると思う。私も大学でスナイプに乗り始めた頃は「大学4年で全日本スナイプを優勝して、卒業後は470でオリンピックかな」と根拠のない構想を持っていた。叶う、叶わないに関係無く、夢を持つだけならタダである。逆にオリンピック艇種で活動する選手もスナイプのレースに参加して欲しいと思う。ワンデザインでのレース経験は、艇種がどうであれ、少ないよりは多い方が良いであろう。迎え撃つスナイプ専門選手も気合が入る。

 

こんな風に、スナイプの将来を考えながら、今年のオリンピックを観戦するのも乙な物ではないだろうか。私も現地に行けるのであるなら、是非観戦したい。出来れば水泳か陸上を。私にとって、ヨットは観るスポーツではなく、やるスポーツだから。■

 

 

 

 

 

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