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[column] 鷸が跳ぶ |
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010 箱根方式text by Koji Ida
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哀しきことに、今年の全日本スナイプの琵琶湖予選で、筆者達ペアは予選落ちしてしまった。勝負事だから、結果が出せなければ次のステップに上がれないのは当然のこと。この「哀しさ」の存在があるからこそ、逆に好成績を納めた時の「嬉しさ」が、より一層うれしいものになっていく。それはそれで、筆者の敗北も競技を盛り上げる役に立っているのかな〜、と自分を慰める。
という訳で、予定よりも若干早くシーズンオフがやってきた。自分のヨットを全く忘れて、全日本インカレを観に行く。ウキウキのんびり快適観戦ライフである。
年代別カテゴリーの一つである全日本学生選手権。今更ここで書くまでもないが、最大でも一年に一回、生涯で4回しかチャンスが与えられない。観覧艇の数は国内レースではダントツの多さであろう。卒業生や後輩、女子マネージャーなどなど、普段 この競技種目ではお目にかかれない「大勢からの応援」というものに遭遇できる場所。そんな限り少ないチャンスであるにも係わらず、地方予選というステージで姿を消さざるを得なかった選手達の「哀しさ」。
その哀しさを、今年の筆者は よく分かる。だが、この「哀しさ」「嬉しさ」のギャップが大きいほど、競技スポーツというのは盛り上がるものである。
筆者が大学を卒業して後、学生選手権では色々な変更が行われた。その一番大きなものがチャーター制度であろう。チャーター制度の導入は良かったのか、悪かったのか。
支出を減らすために、チャーターした艇でヨットレースに参加する。これは普通のことである。何の問題もないはずなのだが、これを強要し、強制的に平等にしようとしたところが、無理の生じた原因と思う。去年と今年のインカレ、筆者もチャーター艇を受取って、学生と一緒に整備するという体験をさせて頂いた。
学生達は、筆者の愛するセーリング競技の為に、4年間の全てを懸けてくれた。筆者と同じように、この競技を愛してくれた。彼等が燃え尽きようとする集大成の大会。そこで運命を託すボートは、どう見ても彼等4年間の競技への愛情ほどには、同じような愛情を注がれなかったチャーター艇たち。抽選後に、そんな艇を受取る選手の表情を、この制度を決めた人達は見ているのか。一番程度の悪い艇を指差して、「お前がこれに乗るんだ」と、言い渡さなければならない立場にある筆者の気持ちを、その人達は分かってくれるのだろうか。少しでも分かってくれているのであれば、それでいい。
このようなことになるのは、遅くともチャーター制度1年目が終った時点で、既に分かっていたことである。筆者のように、セーリング競技を続けるOB達には、分かっていたはずである。分かっていながら黙認してきた私達に、一番の責任があるのかもしれない。学生達には、この場を借りて、お詫びしたい。
今後も色々な『レース形態の変更』が検討されているようであるが、その目的の多くは、「部員減少に対応する為」であったり、「艇体購入費用を削減する為」のものばかりのようだ。確かに必要なことかもしれないが、これだけでは「部員が少なくてもいい、お金が集められなくてもいいヨット部」が増えていくだけではないだろうか。
もっとインカレを盛り上げる為の変更を検討して欲しい。もっと観て面白い大会になれば、より多くのOB達が会場に足を運び、学生達と一緒に母校を応援する。そうなれば、母校の活躍を期待するOB会からの援助金も増えるかもしれない。感動が沢山の大会になれば、冬場にクラブを辞める下級生も減るだろうし、多くの仲間を集めようと、新人勧誘も更に真剣になるだろう。
日本のセーリング競技は、観戦するファンを殆ど全く増やそうとしなかった数少ない競技スポーツだと思う。やり方を工夫すれば、絶対に観戦ファンを増やせる方法があるはずである。観ている人が多くなれば、やっている選手も活気が出るのは当然のこと。観戦ファンを増やせる大会は、多くの卒業生というファン予備軍を持っている、全日本インカレでしか有り得ない。
例えば、今年のプロ野球パリーグのプレーオフ。プレーオフの形式自体には問題もあったが、野球というスポーツの面白さを今まで以上に伝えてくれた。何十年もやっていて、毎年毎年お客さんを集めようと考え続けているプロ野球でも、まだ新しい可能性が残っていたのである。まだ何も始めていないヨットレースは、まだまだ大きな可能性が残されているはずである。
例えば、箱根駅伝。この大会の見所は、もちろん優勝争いが一番であるが、それだけではない。タスキ中継所の時間制限、翌年のシード権獲得など、トップ争い以外でも思わず注目してしまうところが沢山ある。
ポイントは、「哀しさ」と「嬉しさ」のギャップを、如何に多く、如何に大きく、生み出すことが出来るか。
現在のヨットのインカレは、結局 優勝争いだけでしかない。優勝する実力も実績も未だ持っていないチームは、当然ながら入賞や何位以内という目標を設定するだろう。しかしながら、それは内部から見れば価値ある目標であるが、観客からは物足りないものである。
じゃあ、6位以内は翌年も全日本インカレの出場権を貰える、としたらどうだろう。今まで、1位と2位では天国と地獄ほどの差となるドラマが、6位と7位の間でも生れることになる。そうなると、毎年7〜10位くらいのチームのやる気はどうなるだろう。水域別に見ても、いつもなら一校しか枠のない水域から、6位以内に入賞するチームが出てくれば、翌年は二校が出場できることになる。強い水域がより多く出場できるということである。そうなれば、大学毎の強化ではなく、水域単位での強化活動も活性化するのではないだろうか。今まで全日本インカレに出られなかったチームにも、実力順の正当なチャンスが膨らむことになる。
さあ、どうだろう。チャーター艇方式よりは、ずっと選手もファンも盛り上がる提案だと思うのだが。『哀しさ』だけを増やす “変更”ではなく、『嬉しさ』も増やす“変化”を期待する。■ |
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