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天才が本気で動き出した。国内で抜群の戦績を残しながら、国際レースでは実力どおりの結果が出せず、もがき苦しんでいる。しかしながら、新しいクルーを得て、世界で戦えるハードも揃え、言い訳の出来ない環境を整えた。今年、森田友蔵は完成する。
text by Koji Ida photographs by Miki Ida /Gusty Photo Service
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高校スナイプ最後の世代。インターハイや国体の少年種目からスナイプが姿を消す最後の年に、彼は高校3年目を迎える。同い年には、94・95年と連続で全日本スナイプに準優勝する岩瀬選手(アイシン精機)、00年全日本スナイプ優勝の今井選手(TEAM Bros)がいる学年である。西武ライオンズの松坂選手に真似て、筆者は勝手に“森田世代”と呼んでいる。最後の生粋スナイプ乗り達の世代。
高校時代は、実力者の揃う年代でありながら、インターハイ2位、国体3位という結果を残す。福岡大学時代は、2回生から常勝校のレギュラースキッパーとして、全日本インカレ団体戦に出場。4回生時にはスナイプチームのリーダーとして、クラス優勝を成し遂げる。
大学卒業後の全日本スナイプでは、97年の琵琶湖大会で優勝し、99年の境港大会を除いて、全て3位以内に入賞する。九州選手権、中国選手権、西日本ウィーク、同志社ウィーク、獲得したタイトルは本人でも数え切れない。世界選手権および西半球選手権に、日本代表として出場すること6回。日本のエースとして、常に先頭を切って、世界に挑み続けている。
ボートのポテンシャルを最大限に引き出す能力、海面の特性や変化を見極める能力、勝つ為に必要な要素を高い次元で身に付けていることを、彼の戦績が裏付けている。彼がレースに出れば、必ずと言っていいほど優勝に絡んでくる。例え途中でスコアを崩しても、レース回数をこなせば、必ず優勝を狙える位置で最終レースを迎える。良いスタートを切ろうと思えば、彼の風上の位置は真っ先に避けるべきである。下マークを同じような順位で回航しても、次のミートでは10艇身前、更に次のミートでは20艇身前と、面白い程にアッサリと差を広げられる。『どうして、そのシフトが読めるんだ?』彼と同じレースに参加した選手は、そんな印象を強く残す。ブローを探す時、海面全体を見渡すよりも、彼の進行方向を見る方が手っ取り早い。持っている技術と、その安定感は国内最高であり、それについて誰も疑う余地はない。だが、そういう彼も全日本スナイプでは未だ優勝は一回のみ。国際レースでも歯がゆい結果を積み重ねている。何が足りないというのか。 |
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まずはクルーの問題。森田選手の場合、96年の全日本スナイプから、短〜中期間でクルーが変っている。どうしても同じ所属の選手でないと、大会参加が許されないというチーム事情があり、なかなかクルーが固定できなかった。瀬戸口選手と組み出した時は、ハイレベルな二人がコンビを結成することにより話題を集めたが、瀬戸口選手自身のシングルハンドでの活動もあり、満足のいく練習は出来なかった。 国際レースで結果が出ない要因には、ハードの問題もあった。彼が国内で乗るボートはオクムラ製。国際レースでは、このオクムラを持ち込むか、現地でチャーターするかという選択しかなかった。オクムラを持ち込んだ時には、どうしても海外艇との特性が違い、レースが噛み合わない。チャーターで参加しても、普段からオクムラに慣れる彼には、ハンドリングの感覚が合わない。普通の選手なら気付かない違いであるが、常人以上の感覚を持ち合わせる彼だからこそ、どうしても違和感を感じてしまう。その違和感が、スタートやコース展開で焦りを生じさせ、歯車が狂ってしまう。
しかし、昨年の全日本スナイプでコンビを組んだ、福岡大学の後輩である藤田選手が、春から同チームに入ることが決まった。クルーが固定されることにより、安定して活動ができるようになった。また、昨年にピアソンの新艇を購入し、国際レースに照準を絞った活動を開始。初レースの全日本スナイプでは、慣れない艇での予期せぬトラブルの発生で、惜しくも優勝は逃した。しかしながら、風速10m/sオーバーの状況で、レース中にラフワイヤーが切れても シングルでフィニッシュするのだから圧巻である。藤田選手と組むことにより、以前の瀬戸口選手と比べると体重が格段に軽くなるのだが、強風下のシリーズでも、終始トップレベルのスピードを見せつけた。 |
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筆者は、97年サンディエゴでの世界選手権の時に一緒に遠征てから、親しくさせてもらっている。私も彼も、初めてのワールド、初めての海外艇チャーター、初めての海面、と初めてづくしの大会であった。その時の彼の海面を見極める分析力、ボートのポテンシャルを引き出す能力に感心した。明らかに日本チームがチャーターした中では、一番古く程度の悪い艇であったにも係わらず、二度のシングルを取り、日本選手の中では最高の16位となる。それ以降、度々同じレースに参加しているが、国際レースでも、国内のローカルレースでも、彼のモチベーションは殆ど変らない。どんなレースでも勝利を求め、その為の努力は惜しまない。勝利への強い意志と、それを達成させる為の努力を継続できることが、彼の最大の才能だと思う。それでいて、周囲の選手を気遣い、後輩達の指導にも熱心である。彼の中には、クールな分析力と熱いハートがバランス良く共存しているように見える。
この十年近く、国内のトップに君臨し、周囲からは弱点の欠片も見つけられない天才が、その本人にしか分からない僅かな弱点を、ひとつひとつ潰そうとしている。完成しそうで出来なかったジグソーパズル、最後の数ピースが手に入った。あとは、そっと埋め込むだけである。■
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森田 友蔵 Yuzo Morita 1975年生まれ、香川県高松市出身。高松商業高校でスナイプを始め、福岡大学ヨット部を経て、本田技研熊本ヨット部へ。スナイプ級の世界選手権と西半球選手権に、合わせて6回出場。今年7月ブラジルでの西半球選手権に向けて、準備を進めている。171cm 68kg A型 |
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