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race report 001

 

 

  

この惑星で一番速いスナイプセーラーを決める、二年に一度のビックイベント。日本チームが苦戦する中、劇的な展開の末に、ディアスがグランドスラムを達成した。

 

 

text by Koji Ida

photographs by Miki Ida 

 

 

 

ウェーデンの南西部、マルメとヘルシンボリの間に位置するランズクローナという街は、オートキャンプやゴルフで短い夏を過ごそうと、ヨーロッパ中から多くの人々が集る。海の向こうには隣国デンマークがはっきりと見て取れる。街は小さく、その中心を離れると、果てしなく広大な穀倉地帯がひろがっている。バイキングの歴史を育んだこの地に生きる人々は、その先祖からくる先入観とは反対に、温厚で静かな印象を受ける。世界一といわれる社会保障制度が、この海賊の末裔たちを穏やかにしてしまったのだろうか。短い夏には、ザリガニ料理とフライドポテト、デンマーク産のビールさえあればいい。午後10時頃に夕闇が訪れる白夜の世界。将来への不安や仕事でのストレス、日本で蓄積された多くの汚物が、この地では自然に浄化されていく。そんな北欧の地で、スナイプ世界選手権は開催された。外界と遮断された選手たちは、純粋にレース結果だけを求めて、気持ちを高めていく。

 

月4〜9日の6日間、世界から18カ国60艇が参加。前回ウルグアイ大会で優勝したパラデダ(ブラジル)、前年の西半球とマスターズで優勝しているディアス(USA)が今回のタイトル候補筆頭。パラデダは連覇を、ディアスは史上初のグランドスラムを懸けて、このワールドに挑んでいる。また、全米タイトルを何度も獲得しながら、国際レースでは結果を残せていないスザボ(USA)も、例年以上に良いコンディションでスウェーデン入りしてきた。日本からは前年の全日本スナイプ上位者として、井田・山崎(島津製作所)、森田・丸山(本田技研熊本)、岡・小林(関西学院大OB)、松崎兄弟(豊田自動織機)、宮口・小林(京産大)、古賀・白岩(長崎総科大)、内田夫妻(逗子開成)、橋本・大東(中央大)の8チームがエントリー。

 

大会前半は、北からの風で6−8m/sのコンディション。地形による影響で、波高は低いが沖合いで非常に速い潮流が発生し、選手達を悩ませる。

大会初日は、サンチェス兄妹(スペイン)が 6−2位と纏めて、首位に立つ。僅差でスザボが続く。ディアスは、第1レースでトップを取り、順調なスタートかと思われたが、第2レースで痛恨の720度ペナルティ。パラデダも第1レースで20位と躓く。優勝候補の2チームが出だしで崩れたことにより、混戦が予想される立ち上がりとなった。日本人選手としては、橋本・大東が、14−9位とスコアを纏め、初日を終って総合9位につけ、久々の日本人選手上位進出に注目が集る。期待の森田・丸山は、チャーター艇のボートスピードが上がらず、初日42位と予想外の苦戦。

二日目、優勝候補の2チームが実力を発揮する。パラデダが2−6位、ディアスが7−2位とスコアを抑え、総合でも3位と6位につめてくる。初日好調の橋本・大東は、49−18位とスコアを崩し、井田・山崎は第3レースで5位に入るが、続く第4レースでスタートポジションを誤って、49位と大ブレーキ。この第4レースでは、松崎兄弟が5位、岡・小林が10位でフィニッシュし、日本選手が健闘をみせる。しかしながら、松崎兄弟はエントリーミスがあり、痛恨の10%ペナルティー(+6点)。

三日目、午前中の長い風待ちの後、第5レースを実施。このレースにより、ワンカットが発生。この日、2位でフィニッシュしたディアスが総合トップに立つ。パラデラは痛恨のリコールにより、優勝争いからは脱落。運営サイドへ猛烈に抗議をしたが、結果が覆されることはなかった。スザボがトップフィニッシュを果たし、総合でも3位。優勝争いが、段々絞られてきたところで、レイデー(予備日)の休息に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“道具の差、スピードの差がない”と言われる種目特性の中で、そのスピード差が存在することは致命的な問題である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イデー明けの5日目、予定の第6レースが行われた。大会前半の北風は止み、南東方向のシフティーな陸風のコンディションとなる。この日のトップは、宮口・小林。極端なアウター有利設定のスタートラインを果敢に攻め、第1上マークから終始トップを守り切ってフィニッシュ。総合成績は自身の望む結果ではなかったが、国代表としての意地を見せてくれた。スザボが2位、ディアスが4位でフィニッシュ。サンチェスが25位と叩いてしまい、上位2チームの一騎打ちとなって、翌日の最終レースを向かえる。

大会最終日、前日と同様のシフティーなコンディション。ディアスとスザボの点差は6点。この差を守ればディアスの優勝だが、カットレースがあるので、ディアスが20位以下だと自動的にスザボがタイトルを手にすることになる。ここまで、両チームともカットレースを除けば 全てシングルで纏めている。20位以下をとることは考えられない。だが、艇団が第1上マークを回航した後、数分間無風に近い状態となり、それまでの順位が大きく入れ替わった。サイドマークでは、ディアスが20位、スザボが22位で回航。それでもディアスが1艇でも抜けば、優勝が決まる状況である。だが、ここからスザボが挽回する。2上のレグでシフトを掴み、大きく順位を挽回していく。一方、ディアスは艇団から抜け出せない。2上をスザボが9位、ディアスが18位で回航。この差をキープすれば、スザボの逆転優勝が決まる。さらに途中でマークが変更され、下マークからフィニッシュラインまでは、それまでの半分近くまで距離が短縮されている。この状況では、スザボの逆転優勝を誰も疑わなかった。しかし、最終レグでスザボが11位に順位を落とし、逆にディアスが小刻みなシフトに合わせて順位を上げ、5艇ゴボウ抜きで13位フィニッシュ。この瞬間、ディアスが西半球、マスターズワールド、ワールドのグランドスラム三冠を達成した。

 

今回のワールドは、北米勢の活躍が光った大会だった。トップ10の中に4チームが入っており、大会直前のデンマークでのトレーニング等、ナショナルチームとしての活動が結果に結び付いている。南米勢は、経済不況の影響で、一部の有力選手が不参加であったこともある。しかしながら、今までの南米独占の勢力図が、少しずつ崩れ始めた予感が漂う。パラデダも、チャーター艇ながら抜群のスピードを発揮したが、アップウィンドの角度が若干足らず、それ故にスタートを攻め過ぎたことが大きな失敗に繋がった。日本チームも、不慣れなチャーター艇で 最後までボートのポテンシャルを引き出せず、苦戦する場面が多く見られた。ワールドの長いレグでは、ボートスピードを同等まで引き上げないことには、どうしても苦しい展開を強いられることになる。“道具の差、スピードの差がない”と言われる種目特性の中で、そのスピード差が存在することは致命的な問題である。自艇かチャーター艇かを問わず、スピードの向上が日本チームとして一番の課題であろう。

 

この大会中に開催された理事会で、2005年の蒲郡での世界選手権開催が正式に決定された。日本で、スナイプ世界一が決定する瞬間を観ることが出来るのである。奇しくも、最終レースの最終レグでディアスに抜かれ、優勝決定の瞬間を一番間近で目撃したのは、14位でフィニッシュした森田・丸山である。しかしながら、彼らをはじめとする日本人選手が目指すのは“目撃する”のではなく“目撃される”立場である。フィニッシュの瞬間、ディアスがティラーをデッキに打ち鳴らして、歓喜の雄叫びをあげる。その光景は、同じレースに参加した者にとっては、屈辱以外のなにものでもない。目指しているものへ、ほんの数メートルという距離に接近した。しかし、その数メートルを埋める為には、あと何百マイルも帆走らなければならないだろう。次回、優勝決定の場面は誰が目撃するのか。誰が目撃されるのか。■

 

SNIPE WORLD CHAMPIONSHIPS 2003

 

1st

DiazRogers

USA

28.75

2nd

SzaboJanney

USA

32.75

3rd

SanchezSanchez

ESP

37

4th

ParadedaParadeda

BRA

51.75

5th

WanderleyZietemann

BRA

61.75

 

 

 

 

13th

IdaYamasaki

JPN

100

24th

HashimotoDaito

JPN

141

32th

MoritaMaruyama

JPN

171

34th

OkaKobayashi

JPN

181

36th

MatsuzakiMatsuzaki

JPN

188

37th

UchidaUchida

JPN

191

44th

MiyaguchiKobayashi

JPN

211,75

56th

KogaSiraiwa

JPN

288

60boats 7races1cut

 

 

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