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race report 006
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昨年ワールドの勢いに乗るアメリカ。王国の威信を復活させたい開催国ブラジル。来年、自国開催の世界選手権を盛り上げる為にも、結果を残したい日本。それぞれの想いと自身の背負う国の名誉を懸けて、熱い戦いが繰り広げられた。
text by Koji Ida photographs by Miki Ida |
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南半球で7月は冬にあたる。日本から見れば、この惑星の正反対に位置するブラジル。リオ・デ・ジャネイロの真冬は、我々の思う冬ではなく、日本の初夏と梅雨の間に似たような気候。海岸の砂浜は余りにも白く、海の青さとのコントラストが瞼に焼きつく。今回、レース会場となったのは、リオ・デ・ジャネイロ中心街から車で3時間ほど離れた、カボ・フリオという観光地。そこは南米というよりは、アジアのリゾート地のような印象を受ける。ブラジルといえば、スナイプ王国。数多くのスナイプトップセーラーを生み出し、またそこからオリンピックメダリストやアメリカズカップセイラーを輩出している。そんなヨット王国で、第28回 国際スナイプ級 西半球兼東洋選手権大会が開催された。
今大会は、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、USA、日本の計5カ国22艇の参加で開催された。西半球に加盟しているコロンビア、バハマ、チリ等の国々が経済不況等の要因で不参加となり、出場国数としては寂しさを感じるが、競技レベルとしては全く例年と変らない。逆に出場艇数が絞られた分、更にハイレベルなフリートとなる。 優勝候補としては、前回大会優勝、昨年のワールド優勝のディアス/ロジャース組(USA)。今大会でも連覇を狙い、早い時期から現地入りして、チャーター艇の調整、レース海面の情報収集と、万全の準備を施す。同じUSAチームとしては、昨年ワールド準優勝のスザボ/ジャーニー組、北米タイトルを持つコメット/コメット組と、充実した顔ぶれである。 対する開催国のブラジルからは、昨年ワールド4位、2001年ワールドチャンピオンのパラデダ/パラデダ組、昨年ワールド5位のワンダレー/ゼイテマン組など6チームが参加。昨年ワールドではアメリカ勢に屈服する形となったが、今回は地元開催でもあり、王国復活を懸けて、全力で本大会に挑む。
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昨年ワールドでは、経済不況の為にベストメンバーが参加できなかったアルゼンチンも、前々回準優勝のフマガロ組を筆頭に5チームがエントリー。昨年ワールドでエントリー出来なかったウルグアイからも、1艇が参加。国内での登録艇数は少ないが、その技術レベルは他の南米諸国に引けを取らない。 日本からは、井田/山崎(島津製作所)、森田/藤田(本田技研熊本)、皿澤/伊藤(アイシン・エーアイ)、松崎/石崎(豊田自動織機)、内田/内田(逗子開成)の5チームがエントリー。来年の世界選手権自国開催もあり、今大会での好成績が求めらる。 世界選手権であれば、トップ5に入れる実力を持ったチームが15艇は居る、そんなハイレベルな参加メンバーである。上マークを5位で回航しても、たった一つの選択ミスで、最後尾まで順位を落とす。一瞬の油断も許されない、胃の痛くなるようなレースである。
レース海面は、海岸線が大西洋に面して大きく弓形に屈曲し、湾に流れ込んできた潮流が複雑に絡み合う。沖合いの小島がマーク前のシフトをトリッキーに導くが、それ以外は安定した風軸を妨げるものはない。アップウインドは岸に向うレグが有利に見え、シフトの幅が狭いことから、スタートからレグ中央まで、我慢比べのような帆走り合いが続く。上手さではなく、強さ、速さが求められる、そんな海面である。
大会初日、沖合いから4〜5m/sの順風コンディションで、3レースを実施。この日は、ウルグアイ組が1−1−2位と圧倒的なスコアでフリートをリード。しかしながらパラデダ組も2−3−1位と僅差で続く。日本チームは、内田ペアが最初の2レースを5−9位と纏めるが、3レース目で20位とスコアを崩す。他のチームも現地ビルダーのチャーター艇でのセッティングが未だ合わず、上手くスピードが引き出せない。初日が終った時点では、唯一自艇を持ち込んだ皿澤/伊藤ペアが11−13−7位で、日本選手最高の総合9位。
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大会2日目、風速が7〜9m/sと上がり、フィジカルの強さが最も要求されるコンディションとなる。この日は2レースが実施され、パラデダ組が1−3位、ワンダレー組が3−1位とブラジル勢がスコアを分ける。初日トップのウルグアイ組は14−14位と大きくスコアを崩し、優勝争いから脱落。ディアス組、スザボ組のUSA勢も全く調子が上がらず、スコアを挽回することが出来ない。日本チームとしては、井田/山崎が9−5位と尻上がりに調子が上げ、総合で8位に順位を上げる。
大会三日目、風速は5〜7m/sと若干落ち、2レースが実施された。6レース目が実施されることにより、1レースカットが成立する。カット成立により、パラデダとワンダレーの2チームに優勝争いが絞られることとなる。この日の2レースをパラデダが3−5位、ワンダレーが2−3位と、若干ワンダレーが差を詰めたが、総合では僅差でパラデダが1位をキープ。日本勢としては、第7レースで井田/山崎と皿澤/伊藤ペアがワンツーフィニッシュを達成。スタート後、岸よりの左海面有利と予測され、フリート全体がスターボで左へ伸ばしていく中、艇団を風上側で押さえ続け、終始リードを保ったまま上マークを回航。その後のダウンウィンドレグでも後続艇団と差を広げ、歓喜のフィニッシュ。スナイプの国際大会で、日本勢がワンツーでフィニッシュするのは初めての快挙だと思うのだが、筆者自身が調子に乗るので、これ以上は書かない。井田/山崎は最初のレースを18位とスコアを崩したが、このトップフィニッシュとカットレースの発生により、総合順位を7位に上げる。
四日目のレイデーを挟んだ最終日、この日も2レースが予定されていたが、低気圧通過後の凪で、朝から風待ちが続く。午後1時過ぎに陸上AP旗が降下し、選手達は海上での待機となる。国際レースでは、特にこのスナイプ王国ブラジルでは、ハイクアウトを伴わない風では、レースは実施されないようだ。2〜3m/sのブローは海面を覆っているのだが、結局ノーレースフラッグが掲揚され、7レースを持って大会は終了した。
大会を振り返ってみると、スナイプ王国ブラジルが、アメリカに奪われかけた地位を、圧倒的な力で獲り返した、そんな印象を受けた。ブラジル勢が総合で、1位、2位、4位と上位を独占したのに比べ、アメリカ勢はディアスの6位が最高で、スザボが15位、残り3艇も20位、21位、22位と、惨敗した形となった。日本チームは、ブラジルやアルゼンチンの南米勢とは未だ力の差がある。しかしながら、昨年のワールドで上位を占めたアメリカに、結果的に追い抜いたスコアとなったことは、日本のスナイプにとっては大きな前進と思いたい。だが、当然のようにアメリカも、次回ワールドでのリベンジを誓っていることだろう。 レース前は、22艇は少な過ぎるかと心配したが、筆者が思うに、スナイプのレースは、これくらいの艇数でやるのが、いちばん面白いのかもしれない。密集した艇団に絡むことによるリスクが無く、選手達は習得してきたタクティクスやボートスピードを遺憾無く発揮できる。それにより生じた順位は、まさしく実力の順位となる。
ブラジルと日本、その差は何なのだろう。それが理解できれば、対応も可能かもしれない。しかしながら、明確に視覚できるものとして、その差が現れている訳ではない。ただ、そんなに難しいことではないような気がする。筆者にここで断定する資格は無いと思う。だが、敢えて述べるのであれば、例えば強風下で 「如何にパワーダウンを図るか」と考える者と、「如何にもっと体重を外に出して、ヒールを起こすか」と考える者。そんな例えに似た、単純な差であるような気がする。 今年のアテネオリンピックで、ブラジルは日本よりも多い9種目で国枠を獲得している。その中で、今回優勝のパラデダは470級の代表であるし、49er、トーネード、スター級の代表選手もスナイプ出身者だ。各種目の世界選手権では、日本選手よりも上位を帆走っているし、レーザーやスターでは、金メダルの最有力候補である。そういった背景を見るに、ブラジル選手の強さというのは、スナイプに特化したものではなく、セーリング全般に共通する、ある種の感覚的なものを身に付けているからだと思う。ブラジルの選手がスナイプでその感覚を習得して、他の種目へ移っていくならば、日本のスナイプ選手は、他の艇種からも積極的に学んで、スナイプにフィードバックしてみれば良い。今後の日本選手に必要なのは、細かいディティールを繕うことではなく、セーリングの本質を、ダイナミックに捉えることではないだろうか。
そんなことを考えながらも、結果的に今大会最終レースとなった第7レース、日本選手がワンツーフィニッシュを獲得した。次回ワールドまでに、最も近い国際レースで、日本が一番速かったということである。「世界の壁」は確かに存在するが、「日本人が勝っちゃいけない」というルールは存在しない。日本人が勝ってもいい。そろそろ、勝ってもいいと思う。■ (文中敬称略) |
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Western Hemisphere & Orient Snipe Championship 2004 5−10 July 2004 Cabo Frio, Rio de Janeiro, Brazil |
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1st |
A.Paradeda/E.Paradeda |
Brazil |
12.50 |
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2nd |
B.Wanderley/R.Zeitemann |
Brazil |
17.75 |
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3rd |
P.Defazio/E.Medici |
Uruguay |
28.50 |
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4th |
E.Chapchap/P.Tinoco |
Brazil |
33.75 |
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5th |
E.Despontin/M.Arrambide |
Argentina |
34.00 |
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6th |
A.Diaz/J.Rogers |
USA |
35.00 |
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7th |
K.Ida/H.Yamasaki |
Japan |
47.75 |
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8th |
F.Norman/D.Rudoy |
Argentina |
48.00 |
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9th |
C.Bianchi/B.Bianchi |
Brazil |
51.00 |
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10th |
F.Calabrese/J.Engelhard |
Argentina |
51.00 |
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12th |
K.Sarasawa/K.Ito |
Japan |
67.00 |
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16th |
Y.Morita/T.Fujita |
Japan |
76.00 |
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17th |
S.Matsuzaki/T.Ishizaki |
Japan |
93.00 |
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18th |
S.Uchida/M.Uchida |
Japan |
96.00 |
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22boats/7races(1cut) |
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