Fullhike style of J-snipe

 index  cover sailors file race report column about this page

 

race report 007

 

予選と呼ばれるレース。その性質上、通過者と落伍者の境界線をくっきりと残酷に色分ける。全国各地で行われた全日本予選は、そのまま来年ワールドへの一次予選の役割を果たす。琵琶湖では、大量に発生した藻が 多くの選手達の気持ちを嘲笑うかのように、それらの夢を絡めとっていく。ある者は笑い、ある者は泣き、暑い夏が終わりを告げた。

 

 

text & photographs by Koji Ida

 

 

日本スナイプ選手権や全日本インカレ、日本のスナイプにおいて、これら“チャンピオンシップ”に分類される全国規模のヨットレースは、地方予選を勝ち上がらないと出場することは出来ない。そのことが“全日本”の価値を高め、出場すること自体をひとつのステイタスまで持ち上げている。11月の全日本シーズンに駒を進める為に、全国各地で予選が繰り広げられた。琵琶湖スナイプ選手権も、全日本スナイプの出場枠を賭けた大会である。

水域の全日本スナイプ出場枠は、その年のSCIRA登録艇数の比率で割り振られる。今年、琵琶湖に割り振られた枠数は「6」。本大会は、琵琶湖で一番を決める、と言うよりは、この6つの椅子取りゲームの意味合いの方が遥かに強い。

 

9月の琵琶湖。大津沖では非常に大量の藻が発生し、選手達だけでなく、運営サイドまで悩ませる。筆者自身も、秋の琵琶湖でヨットに乗ることが余りないので、その藻の多さに驚きっぱなしである。琵琶湖の水位の管理基準が変り、ここ数年はこの時期の水位が低くなる為、光合成が活発になり、大量発生するのであろう。8月下旬 のインカレ予選では、モーターボートから観戦して、その藻の存在を知ってはいた。だが、学生達に「藻なんか関係ないよ!気合だろ!!」などと気楽に言っていたのだが、いざ自分で体験してみると、どうしようもない藻の量である。一分間帆走したら、一回はセンターボードを全部上げて、ラダーに掛かった藻を取りに行かないと、次のマークに辿り着くことは出来ない。

 

この「藻が多い」というコンディションは、皆に平等であることに変りはない。しかしながら「藻に掛からない様に」という意識は、選手達から海面全体を見る時間を奪うと共に、ボートスピードの優劣を無くしてしまう。速いボートが勝つ訳ではなく、海面をじっくり見れる訳でもない。暗闇の中を、手探りで進むようなレース展開。その中では、中途半端な技術は意味をなさず、高い集中力と、勝利への意志を維持し続ける者だけが、結果を残すことが出来る。また逆に結果を意識し過ぎる者は、その焦る気持ちを藻に絡み取られて、泥沼に嵌まっていくかのように見えた。

 

その中で、圧倒的な強さを周囲に印象づけたのが、松永・山崎ペア(柳ヶ崎セーリングクラブ)。6レース中、4レースでトップフィニッシュを決めるが、残念なことに、その内の1レースがリコールとなり、惜しくも6枠に入ることが出来なかった。しかしながら、スタート後の最初のシフトを掴んで、2タックでフリート全体を抑える位置を確保する安定したポジショニング、また古い艇とセールでも、最低限のスピードを維持する感覚と集中力、国内トップクラスの470セイラーが、非常に高いレベルにあることを証明してくれた。クルーの山崎選手も、松永選手と同じ同志社OBのファイヤーマン。彼の鍛え続けた身体には、琵琶湖の風は弱すぎて、スタートラインから勢い余って飛び出してしまったようだ。

 

 

 

 

躍進の龍谷大。

インカレでも琵琶湖代表として頑張って欲しい。 

 

 

 

 

セーリング技術の高さを見せた松永(右)・山崎(左)ペア。

他の470選手も是非スナイプのレースに参加願う。

 

 

スナイプ一年目で琵琶湖チャンピオンとなった出道選手(右)と

高校時代はボクサーだった久保選手(左)

 

 

終的に優勝を決めたのは、出道・久保ペア(同志社)。出道選手は、今年入学したばかりの一回生。指導者が教える間もなく結果を出してくれたので、筆者の存在も意味がないということか。終始安定したスコアで、スナイプデビュー年に飛び級の成績を納めた。今は未だあどけないクリクリ坊主だが、将来が非常に楽しみである。また、躍進が目立ったのが龍谷大学。京産大や立命館の、全日本インカレ個戦でも上位入賞している選手達を押しのけて、2−3位と好成績で全日本出場枠を獲得した。琵琶湖スナイプの前に行われた近北インカレ予選でも、団体戦で立命館に振り切って、3位で全日本インカレへの切符を手にしている。今年の立命館は、全日本インカレでも優勝を争える高い実力を持っていると、筆者は分析していただけに、そこを乗り越えた龍谷大学の勢いに、全日本インカレでの活躍も期待したい。

 

今年の琵琶湖スナイプは、42艇の参加で行われ、6チームが予選通過となった。この全日本枠がSCIRA登録艇数に比例していることは前段に述べた。しかしながら、その比率が水域の競技レベルや予選出場艇数に比例している訳ではない。実際、九州予選は7の枠に対し、出場艇数25。中部予選は10の枠に対し、出場艇数26。琵琶湖では、全日本インカレに出場する3校全てが、毎年のように優勝争いや入賞をしているレベルの高い水域である。ここでの予選は、その少ない椅子を争うが故に、他のフリートとは全く違うものとなってしまう。全日本スナイプにしろ、全日本インカレにしろ、前年度の結果での予選免除枠を拡大して欲しい、というのは、惨めな敗者である筆者の意見なので、あまり効力はないであろう。センターを上げないと前に進めないほど藻がある状況で、センターが上がらなくなり、41番目の艇が下マークを廻ろうとする時に、自艇はサイドマークにさえ達していないという風景。「絶望」という風景を、久々に体感することができた。これも貴重な経験としたい。

 

秋の全日本シーズンを前に、その地方予選で、自身の意志とは関係無く、姿を消す選手は多い。この敗北を心に刻み、次への励みにする者もいる。なんとか次のステージに首の皮が繋がり、気合を入れ直す者もいる。そのレースを境に、ヨット競技から離れる者もいるだろう。しかしながら、その予選はあくまで通過点である。勝とうが、負けようが。続けようが、続けまいが。競技を辞めるものにとっても、人生における、ほんの途中。誰もが通るそのポイントを、通り過ぎた後に何がなせるか。そこは、あくまで通過点。まだまだ、何も終らない。■

(文中敬称略)

 

Biwako Snipe Championship 2004

1112 September 2004

1st

出道/久保

(同志社)

30

2nd

木村/内田

(龍谷大)

34

3rd

栗原/浜吉

(龍谷大)

34

4th

吉岡/西口

(柳ヶ崎SC)

53

5th

尾崎/梶本

(同志社)

56

6th

野口/黒岡

(同大OB/龍大OB)

57

7th

赤星/樋口

(京産大)

62

8th

松永/山崎

(柳ヶ崎SC)

64

9th

兵藤/岡村

(柳ヶ崎SC/SLED)

64

10th

井田/山崎

(SHIMADZU)

69

42boats 6races(no cut)

 

index  cover sailors file race report column about this page

style of J-snipe Fullhike