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race report 013

 

 

15カ国から、52艇104名の選手が集まる、2年に一度のビックイベント。ホスト国である日本代表ペアたちは、如何にして海外のトップセーラーを迎え撃つのか。

 

 

text  by Koji Ida

 photographs by SnipeWorld2003

 

郡市の海陽ヨットハーバーにて、2005年7月23日(土)〜31日(日)の期間、「愛・地球博記念パートナーシップ事業」として、第42回国際スナイプ級ヨット世界選手権大会が開催される。

 

2年に一度、奇数年に開催される世界選手権には、前回大会優勝者および前年の欧州チャンピオンと西半球チャンピオンがシードされるのを除けば、登録艇数の比率によって割り振られた国枠を、各国の予選で勝ち取った選手たちのみが出場することを許される。今大会も、15カ国から52チームの出場が予定されている。

 

今回注目される選手としては、前回大会の優勝者で、アメリカでもっとも権威のある「ロレックス ヨットマン オブ ザ イヤー」を受賞したオギー・ディアス選手が一番にあげられる。2002年西半球選手権、2003年世界選手権、2004年マスターズ世界選手権、と三大タイトルを勝ち取り、史上初めてのグランドスラムを達成した。今年52歳になる大ベテランが、連覇を目指して、トレードマークのカウボーイハット姿で日本に上陸する。これに対抗するのは、前回大会準優勝で、全米選手権を四連覇したジョージ・ゼイボ。スター級でのキャンペーンにより、体重をかなり増量しているが、妻のステイシーとコンビを組むことにより、ペアでのベストウエイトを維持している。スター級でも、今年のキールウィークでラッセル・クーツに競り勝っての準優勝。さらにレーシングセーラーとしての完成度を高めて、初の世界タイトルを目指す。

 

 

 

 

 

 

 

ナイプ王国ブラジルからも実力者が揃う。2001年世界選手権チャンピオンで、オリンピック470代表のアレックス・パラデダ。前回ワールド4位で、昨年の西半球準優勝のワンダレー。今年のブラジル王者で、パラデダと最後までオリンピック代表を争ったベスレム。そして、65歳を迎える大ベテラン“クレイジー”イヴァーン。欧州からも、前回大会3位でヨーロッパ王者のサンチェス兄妹(スペイン)、“イタリアの伊達男”ソレリオ兄弟、毎回違う美人クルーとコンビを組むバーガー・ジャンセン(ノルウェー)など、ワールド常連選手がエントリーしている。

 

日本からは、国内の予選を勝ち抜いた10チームが出場する。中でも、全日本選手権を二連覇している加原・上田ペア(ベネッセコーポレーション)に期待が掛かる。国際レースでの経験は少ないが、その分、大きな可能性を秘めている。地元愛知県からも、松崎・杉浦ペア、児玉・田中ペア(ともに豊田自動織機)の2チームが出場。自然の影響を受けるヨットレースだけに、「地の利」が大きく左右する。そのアドバンテージを一番活かせる地元チームの活躍を期待して欲しい。その他の日本代表メンバーは、吉岡・古川ペア(チームSIESTA)、白石・後藤ペア(ノースセール・ジャパン)、森田・藤田ペア(本田技研熊本)、高村・丸山ペア(本田技研熊本)、瀬戸口・岩瀬ペア(本田技研熊本)、原田・鈴木ペア(法政大学)、杉山・金田ペア(静岡ガス)。この場で紹介するまでもない、近年では最強の代表メンバーが揃った。中でも、現役学生である原田・鈴木ペアに、斬り込み隊長として、最初から飛ばして頑張ってもらいたい。

 

大会の注目は、もちろん優勝争いであり、日本人選手の活躍であろう。ポイントは、夏は軽風が予想される蒲郡の海を、どうやって克服するか。日本代表選手の多くは、蒲郡での経験を十分に積んでいる。地元チームだけでなく、オリンピック選考を経験したペアも、この蒲郡でのレースは大いに期待していいと思う。課題は、暑さ対策をしっかりとできるかどうか。国内での長丁場のビックレースは、殆どがシーズン最後の秋か冬に集中している。夏の猛暑の中で、ガチンコのシリーズレースを戦うことは少ない。筆者も、2001年のJ/24西宮ワールドで、日本の真夏の怖さを経験した。このときも7月末の日程であり、一番の敵は“暑さ”と、そこからくる疲労であった。世界選手権で最終日に笑う為には、すべてのレースにおいて、少しのミスも許されない。息の止め合いにも似た我慢比べ。息が苦しくなった者から脱落していく。集中力の持続が勝負の分かれ目となる。ブラジル選手など、猛暑に慣れた地域の実力選手に競り勝つためにも、日本人選手はコンディション面での注意が必要だ。協会からの指導やサポートが皆無なので、選手自身で個人管理を十分に徹底して欲しい。

 

もう一つの注目ポイントは、ハードの勝負。現在、世界の主流を占めるピアソンが連勝記録を伸ばしている。アメリカ勢の有力選手は、ピアソンの新艇を持ち込んでくるし、日本代表もピアソンに乗るペアが多い。しかしながら、加原・上田ペア、吉岡・古川ペアなどが、国産のオクムラボートで世界に挑む。海外選手でも、日本ビルダーの艇をチャーターする有力ペアも多く、一体どこのボートが勝つのか、非常に興味の沸くところである。同じように、セールメーカの競争も見所である。ノースセールとクァンタムが二分していたマーケットに、イタリアのオリンピックセールが乗り出してきた。昨年から国内で主流を占めるノースセール・ジャパンのラジアルモデルも、最初に挑むビックイベントである。国内ビルダーと国内開発セール。筆者としては、是非この国産ハードに活躍してもらいたい。日本のスナイプを支える人たちの為にも、輸入するばかりでなく、輸出もできるような環境をつくる切っ掛けとして、大きなアピールの場となって欲しい。

 

他の艇種に比べ、選手層の幅が広いのもスナイプの特徴である。参加選手で最高齢は、65歳を迎えるイヴァーン・ピメンタール選手(ブラジル)だろう。ブラジルオリンピックチームのコーチも務める彼は、単なる参加賞狙いではなく、「クレイジー」という異名を持つ超実力派。経験は若さを上回る、ということを結果で教えてくれるだろう。また、この世界選手権では、性別の限定がないので、多くの女性選手も参加する。大会に花を添えてくれるだけでなく、男性選手顔負けの実力を魅せてくれる。日本の女性選手は、是非実際に観てみて、参考にして欲しい。

 

界中の老若男女が集まり、海の上では熱くレースを競いあうが、陸の上ではアットホームな雰囲気が漂うだろう。その日のレースが終わった後には、各国の選手同士がヨットハーバーで談笑している風景が観られるはずだ。カルフォルニアの爽やかさ、南米諸国の陽気さ、北欧の高貴さ、南欧のラテンのムード。それらが日本文化と融合し、図らずとも、愛・地球博の目的も果たしている。スナイプ級ヨット世界選手権は、世界一を決めるハイレベルな競技会であるとともに、世界中のヨット好きたち、海好きたちが集う、2年に一度のビッグ・カーニバルとなる。もしも出来るのであれば、貴方も現地に足を運んでみて、その輪の中に入るべきだ。貴方の目指すものや求めているもの。それが何なのかを見つけるヒントが、そこにあるはずである。■

(文中敬称略)

 

 

 

 

 

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