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race report 014

 

 

16年ぶりに日本で開催されたスナイプ世界選手権。台風の影響で、なかなかレースが実施できず、選手たちにフラストレーションが蓄積される。そんな中、やっと三日目に開始された初日の3レースで、松崎・杉浦ペア(豊田自動織機)がトップに躍り出た。そのニュースを聞いて、筆者は我慢できず、蒲郡へ足を運んだ。

 

text & photographs by Koji Ida

 

「絶対に応援に行くからね!」と周囲には話していた。でも本当は、蒲郡へは行きたくなかった。大会運営の人たちや、スナイプ協会の人たちが「来なきゃ駄目だよ」と声を掛けてくれるのだが、どうしても気が進まない。舵社からレポートのオファーもあり、最終日のセレモニーだけは観に行く予定を入れていたのだが、それもドタキャンするつもりでいた。レースが開催される平日は「仕事の都合で・・・・・・」という理由でお断りした。正直な話、理由じゃなくて、言い訳だ。最近、記者の真似事のようなことをしているが、自分はまだ現役選手なのだなぁ、とつくづく感じた。観たくなかったのだ。日本人選手が負けるところも、自分たち以外の日本人選手が勝つところも。

 

そんなモヤモヤの気持ちでいるときに、ガスティーフォトの松本さんからメールが入った。「松崎チームが絶好調で、3レース終了時で多分トップ」。このニュースが、私のモヤモヤをすべて吹き飛ばしてしまった。何をしてるんだ、早く行かなくては・・・・・・。

 

 

 

良く、台風の影響で延期されたレースが、閉会式の日までずれ込んで実施される予定になっていた。朝の4:30に起き、鈍行の始発電車に乗って、相棒の家族と待ち合わせる京都へ向かい、そこから車で蒲郡へ。大会のメンテナンススタッフで蒲郡に滞在している知人が「まだかよ、最終レースが終わっちゃうぞ」と電話してくる。気持ちが焦る。既に最終レースはスタートしたらしい。松崎・杉浦ペア(豊田自動織機)は前日のレースで総合3位に成績を落としていたが、この最終レースでどうなるか分からない。

 

なんとかレースが終わる前に海陽ヨットハーバーに到着したが、既に第2上マークを回航しているらしい。「スロープでみんなを待つかぁ」と思っていたところ、大会スタッフの方が「今から観覧艇を呼び戻しますから、フィニッシュには間に合いますよ」と手配してくれた。10分もしない内に観覧艇が帰ってきて、筆者たちを乗せて、再びレース海面へ。観覧艇は、レース艇に引き波の影響を与えないように、大回りしてフィニッシュラインに向かう。

 

ドキドキしてくる。レース海面に近づき、何艇かのスナイプがぼんやり見えてきた。観覧艇は徐々に減速し、フィニッシュラインらしきところの近くで停まった。そのラインに向かって、既にトップ艇がポートタックでアプローチしている。5桁のセールナンバーの上に、JPNの文字が見える。吉岡・古川ペア(SIESTA)だ。その後に、杉山・金田ペア(静岡ガス)、高村・丸山ペア(本田技研熊本)、そして松崎・杉浦ペアがシングル後半でフィニッシュ。「ディアスは?ディアスはどこ!?」と、上位には確認できないディフェンディング・チャンピオンの姿を探して、さらに心臓の鼓動は高鳴る。

 

のとき、「は〜い、フィニッシュしたから観覧艇はハーバーに戻りまーす」と、操縦士さんの声。その操縦士さんは、この今の瞬間がどんな瞬間なのかを、ちょっと理解されていなかったようだ。筆者は操縦士さんに抗議しようとしたが、やめた。最後にちょこっと来ただけの人間が「もう少し観たい」と主張するのは、単なる我侭に思えた。

 

ハーバーに向かう観覧艇の上で、最終結果はどうなったかとドキドキしながらも、やはり観に来るべきではなかったのかなぁ、と考える。複雑な気分である。

 

陸に戻ると、大会役員の人から「松崎は2位らしい。逆転は出来なかったよ」と伝えられる。しばらくすると、トップフィニッシュの吉岡・古川ペアがコーチボートに曳航されて帰ってきた。選手だけでなく、サポートに来ていた中村匠選手と鈴木國央選手もスッキリとした表情。他の日本人選手たちもハーバーに帰ってきた。スロープで艇を引き上げる表情は、選手それぞれに違う。

 

準優勝の松崎ペア、入賞の杉山ペアの表情は明るい。最終トップをとった吉岡ペアもそうだ。だが、それ以外の日本人ペアは対照的である。筆者の顔をみて「来るのが遅いよ〜」と抗議してくる。結果への責任を、すべて筆者に擦り付けるかのように。皆、相当疲れている表情。結果が悪ければ、感じる疲労も倍増である。大会直後の彼らの表情は、完全に勝ち組と負け組に分かれているが、筆者もどちらかといえば、後者の方だろうか。

 

 

こに来た目的のひとつは、舵誌の取材である。当然ながら、その役目を果たす為には、活躍した日本人選手に話を聞かなくてはいけない。なのに、松崎ペアにも、杉山ペアにも近づくことを躊躇ってしまう。筆者は、負け組の方の人間だから、ヘラヘラと勝者の輪に入ることが出来ない。

 

それから、ホンダ熊本の選手たちと昼食をとり、いつものようにパラデダ(アレックス)に下ネタで挨拶をして、ジョージにキールウィーク(スター級準優勝)のオメデトウを言って、イヴァーンと無駄話をして・・・・・・。これだけはしよう、と決めていたことが出来たので、閉会式を待たずに、ハーバーをあとにした。それ以上、そこにいるのが辛かった。勝った者と、勝てなかった者のコントラストが、強烈に映っている。そんな風景の中で、勝っても負けてもいない自分がいることに、我慢することが出来なかった。

 

帰路の車の中で、その日のことを想い出す。ラストシーン。着艇した後、5歳になる松崎選手の長男、真生くんが笑顔たっぷりで、準優勝のふたりの頭にビールをかける。筆者は、その風景を少し離れた場所から眺めていた。彼らがこの日の為に払ってきた犠牲を知っているが故に、涙が出そうになる。そのとき、3歳になる相棒の長男が真生くんの姿を観て、「僕もパパにビールかけたい」と、おねだりした。相棒の夫人が「再来年、ポルトガルでね」と頭をなでる。

 

蒲郡ワールドという物語のラストシーン。結局、筆者はラストシーンしか観ていない。だが、このヨットレースというドラマは、一話完結ではない。次回へ続く。その次回が終われば、そのまた次回へ続いていく。次の物語が読みたくて、次の物語を自分で書きたくて、待ち遠しくてしかたがない。■

(文中敬称略)

 

Snipe World Championship 2005

    28-30 Jul 2005    Gamagori-city Japan

 

 

1st

Diaz/Kelly

USA

 41

2nd

Matsuzaki/Sugiura

JPN

 50

3rd

Defazio/Medici

URU

 56

4th

Tabares/Gonzalo

ESP

 58.75

5th

Bethlem/Gomes

BRA

67

6th

Sugiyama/Kaneda

JPN

67

7th

Paradeda/Paradeda

BRA

69.75

8th

Silveira/Stefani

URU

70

9th

Wanderley/Zietemann

BRA

73

10th

Pimentel/Bianchi

BRA

76

 

 

 

 

16th

Kodama/Tanaka

JPN

93

21th

Morita/Fujita

JPN

110

23th

Shiraishi/Goto

JPN

114

25th

Yoshioka/Furukawa

JPN

123.75

27th

Kahara/Ueda

JPN

140

32th

Takamura/Maruyama

JPN

151

33th

Harada/Suzuki

JPN

151

34th

Setoguchi/Iwase

JPN

152

 

 

 

 

 

 

 

 

 51boats/5races(no cut)

 

 

 

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