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race report 016

 

 

久々に自艇参加形式となった全日本学生選手権。日本セーリング界のメッカ、江ノ島を舞台に開催された今年の大会は、予想外の微風シリーズとなった。しかしながら、混戦が予想されたコンディションにも関わらず、強いチームが、その強い理由を十分に表現して、優勝旗を勝ち取った。

 

text by Koji Ida

photographs by Koji Ida

/Gusty Photo Service

 

964年、東京オリンピック開催に向けて整備された、日本で初めての競技用ハーバー。それが、今年の全日本インカレの舞台となった江ノ島ヨットハーバーである。この国のディンギーレーシングにおける歴史をつくってきたこのゲレンデで、スナイプにとっては今シーズン最後のビックイベントが行われた。

 

大会前、筆者の予想としては、全日本インカレ個人戦で上位を占めた日本大学、その個戦で優勝した西村選手と昨年の団体戦個人成績2位の出道選手を擁する同志社、日本代表として今年のワールドにも出場した原田選手が牽引する法政大学、畠山監督、小松コーチという体制で徹底強化を進めてきた早稲田、これにスナイプ王者の伝統を継承する福岡大学。これらのチームでクラス優勝を争い、470級と併せた総合優勝の狙い方によって、レースの行方が変わってくる、という風に思っていた。

 

優勝争いの予想は大きく外れなかったが、外れたのは風である。江ノ島の強風対策。三次元で展開されるレースに対応する為、琵琶湖のチームを指導する筆者としては、そこに一番の重点をおいていた。しかし、期間中に日本全土をすっぽり包んだ秋の高気圧の影響により、大会四日間の内、三日目までは完全なベタシリーズ。だが、ここまで微風になれば地元有利もないだろうし、スコアの乱れた展開になるだろうと見込んでいた。しかしながら、二日目終了時点で同志社が一度首位に立つものの、それ以外は法政、日大、早稲田の関東三校が、総合優勝とクラス優勝の双方を争いながらのレースとなった。

 

決戦は、四日目の最終日に託された。それまでの三日間で首位に立った法政大学、それを追う日大、早稲田、同志社、そして躍進を見せる鹿児島国際。点差はごく僅かであり、その日は低気圧が近づいてきて、少しは風が吹きそうだ。2レースが実施されれば、結果はどこに傾くか分からない。そこで逆転優勝を狙うチームは勝負をかける。

 

まず第一レース。同志社が一気に攻勢して、1−3−16位というスコアで逆転に可能性を残す。しかし、その他の上位校も大きくは崩さない。最終となった第二レースでは、早稲田がさらに驚異の1−3−5位というスコアで総合優勝に望みをつなぐ。逆に同志社はここで力尽きて脱落。しかしながら、総合優勝を争う法政、日大はしっかりと安定したスコアでまとめ、法政が逃げ切ってクラス優勝を勝ち取り、日大はスナイプの後にもう1レース実施された470クラスで2−6−7位と爆発し、総合優勝を成し遂げた。

 

勝負を分けた要因は、3艇で戦っているのか、6艇で戦っているのか、というところではないだろうか。総合優勝を争いながら、リスクを回避しながら最善を尽くせた関東三校。クラス優勝だけにすがることとなった同志社。両クラスでの総合優勝を目標にしてきた彼らにとって、最終日にクラス別だけを目指さなくてはならない状況は、そう簡単に受け入れられるものではない。同じことは、福岡大学の470クラスにも言えたのではないだろうか。

 

初めてスナイプでのクラス優勝を獲得した法政大学も、総合優勝が視野にあったからこそ、つかめた栄冠であると思う。しかしながら、今大会を「スナイプで勝った」と記録に刻むか、「総合で負けた」として記憶に残すか。筆者がわざわざ言うまでもなく、その捉え方によって、法政大学が強さを継続できるかどうかに関わってくる。クラス優勝だけでも、十分に誇れる結果ではある。ただ、大会終了後の会場の歓喜の色は、オレンジではなく、ピンク色に燃え上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

といえば、今年のインカレを観戦していて、ひとつ引っ掛かるものがあった。レースの途中結果を見ていると、やはり日大が強い。しかしながら筆者は、海上でレースを観戦しているときはそんなに強い印象を受けない。「そんなに前を帆走っているように見えないのに、何で結果は良いのだろう・・・・・・」と思っていた。何か存在感を感じないのである。むかし筆者が現役のときには、日大のチームカラーからくる威圧感というのは、相当なものだったと記憶している。でも、陸の上にいても、海の上でも、彼らは昔どおり速いのであるが、妙に爽やかなのである。その答えに、やっと大会三日目に気づいた。

 

「あっ!ピンクちゃうやんか!?」

 

こんなことを書いたら若い人たちに笑われるかもしれないが、筆者の世代では「ピンク日大、イエロー福大、ブルー同志社」というデッキカラーが決まりであり、「色つきに負けるな!」が合言葉であった(筆者が勝手に言っていただけかも・・・・・・)。なのに、目の前にいる日大はホワイトデッキの艇に乗っているのだ。若いOBに聞いてみると、「え?日大って昔はピンクだったんですか?」と言ってくる。もう少し若くないOBに聞いてみると、「なんか色つきは黒色旗ルールで読まれやすいから、白に変えたって聞いたことがありますよ」とのこと。近年、三大会も連続でインカレを観ているのに、チャーター艇だった為に気づかなかったのだ。デッキカラーの変更は、確かに理にかなった判断と思うのだが、ピンクという「色」に勝つことを目標に青春時代をすごした筆者としては、哀しくて仕方がない。筆者の想い出を奪った、黒色旗ルールとそのルールをつくる切っ掛けとなったゼネリコメーカーたちを許せない。 

談が長くなったが、今年から自艇参加のインカレに戻った。それにより、選手たちの負担は大きく軽減されたことが、彼らの表情からすぐに分かる。毎日の出艇前の艤装や、着艇後の整備や補修に多くの時間を費やす必要はない。昨年までの選手たちの表情は、陸上にいるときも苦痛にゆがんでいた。しかしながら、その負担から開放された今大会では、選手たちは陸上にいる時間の全てを、海上でベストを尽くす為のピーキングに充てることができる。強いものがチャーター艇のトラブルに足元をすくわれるようなことがなくなったのだ。混戦となりやすい微風シリーズであったにも関わらず、レガッタの展開は上位と下位のチームを昨年以上にくっきりと分けるものとなっている。

 

スナイプでも学連艇や艇齢制限などの規制が導入されたが、チャーター艇制度のように選手の足を引っ張るようなものではない。今後のインカレも、強いチームが強く帆走る大会となるだろう。特筆すべきは、5位に入賞した鹿児島国際大学。高校時代に成績は残せていないが、やる気のある地元高校生を勧誘し、冬場も徹底して練習を繰り返してきた。トヨタ自動車ヨット部からピアソン三艇を中古で購入し、自艇インカレに向けての準備もしっかりと進め、今回の躍進につなげている。筆者の高校時代の恩師が鹿児島国際(旧鹿児島経済大学)OBの為、全日本スナイプのときから注目していた。「吹けば帆走るだろう」と思っていたのだが、吹かなくてもこの成績である。毎年上位を占める常連校だけにチャンスがあるのではない。しっかりとした計画と、そのプランに則った行動と、その行動を可能にする情熱。それがあれば、短期間でもきっちりと結果を残すことが出来るし、優勝を争うことも出来る。そのことを今年の鹿児島国際は証明してくれた。

 

主観的で誠に申し訳ないのだが、もうひとつ、ここに記事として残しておきたい選手がいる。同志社の三番艇スキッパーとして出場した片上奈美選手である。彼女は同校では初めてレギュラーを勝ち取った、大学からヨットを始めた女性スキッパーである。インカレ出場も今年が始めてという彼女が、全レースに出場し、プレッシャーに打ち勝って、しっかりと最後まで優勝争いを戦い抜いてくれたことに、にわか指導者の筆者としては脱帽である。昨年までは殆どが下働きばかりで、乗艇回数やレース経験に恵まれている訳ではなかった。それが四回生になった今年からの頑張りで、自信をもってインカレに送り出せる技術と精神力を身に付けてくれた。筆者としては「もっと早くから経験を与えてやれれば・・・・・・」と後悔も残るが、あとに続く同じ境遇の選手たちに、大きな希望を与えてくれた彼女の功績は、決して小さいものではない。この場を借りて、お礼を言いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はり、いい海には優秀な選手が集まるのだなぁ、と実感する。大会会場である江ノ島ヨットハーバーを歩いていると、さすが日本セーリング界のメッカだけに、いろいろな人に出会うことができる。筆者などの若輩者に、あこがれの中村健次選手(関東自動車工業)が「おう!久しぶり!」と声を掛けてくださる(覚えてもらってて感動!)。アテネ五輪メダリストの関選手や轟選手(同じく関東自動車工業)が「いつもチェックしてますよ、フルハイク!」なんて言ってくれる。君たち、次に筆者と会うときは、ちゃんとメダルを首にぶら下げとくように!。

 

「去年から引きずっていたモヤモヤが取れました。一緒にやっていた仲間たちが勝ってくれて、本当に嬉しいですね」と満面の笑みでコメントしてくれたのは、昨年クラス6位、総合でも2位と悔しい思いをした日大OBの武居選手(アイシンAI)。「絶対、来年の小戸も応援に行きますよ」。こんな若いOBたちの気持ちも背負って、選手たちは戦っているのだ。今年、悔しい想いをして大学ヨットを引退する四回生たちは、武居選手と同じような気持ちで、来年の小戸インカレを何処かで見守ることだろう。そうやって、喜びと哀しみが繰り返し引き継がれていくのが、インカレというレースの本質であるように思う。大会終了後の会場には、勝者と敗者の色がくっきりと分かれ、コントラストを生み出している。喜びも哀しみも、そこまでに賭けてきたものが大きければ大きいほど、それらを隠しきることはできない。

 

最終日の午後に降り出した雨の中、トラックに艇を積み込んで、帰り支度に急ぐ選手たち。自艇参加に戻った今年の全日本インカレ。レースが終わったあと、昨年まではそこに置いてくるだけだった。だが今年は、疲労の蓄積された身体と気持ちに鞭を打って、自分たちのボートを積み込まなくてはならない。その重い荷物とともに、それぞれの想いを胸に詰め込んで・・・・・・。■

(文中敬称略)

 

All Japan Intercollegiate 2005

36 November  2005

Total

1st

日本大学

605

2nd

法政大学

633

3rd

早稲田大学

649

4th

福岡大学

817

5th

明治大学

910

6th

同志社大学

1013

 

Snipe class (23teams 69boats 6races)

1st

法政大学

276

2nd

日本大学

326

3rd

早稲田大学

345

4th

同志社大学

402

5th

鹿児島国際大学

404

6th

明治大学

448

 

470 class (23teams 69boats 7races)

1st

日本大学

279

2nd

早稲田大学

304

3rd

福岡大学

346

4th

法政大学

357

5th

第一経済大学

452

6th

明治大学

462

 

 

 

 

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