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race report 017

 

 

55艇と例年以上のビックフリートとなった琵琶湖のローカルレース、メイレガッタ。世界に近づき、さらに上を目指すトップ選手たちと、まだ始動して間もない学生チームたちが同じ海面で競い合う。必然として生まれるその距離差が、高いものをより高く感じさせてくれた。

 

Text & photographs by Koji Ida

 

 

夏の到来を感じさせる5月の連休。この時期、琵琶湖の風物詩といえば、大津市の琵琶湖漕艇場で開催される日本最大規模のボートレース、朝日レガッタである。その同じ時期に、同じ琵琶湖で「メイレガッタ」という中規模のディンギーレースが毎年開催されている。学生がフリートの大半を占めるこの大会は、各大学の新入生も加わって、その年の新戦力が初めて出揃うオープンレース。チームの力量と今後の課題を見出す最初の機会として位置づけられている。今年の大会は、中部水域の実業団トップチームが参加したこともあり、55艇というビックフリートでの大会となった。

 

大会一日目。朝からしばらく風待ちの後、昼前には北から6〜8m/sの安定した風が湖面を覆い、それまでの初夏の陽気を吹き飛ばす。この日は4レースが実施されたが、昨年の蒲郡ワールドで準優勝という快挙を成し遂げた松崎・杉浦ペア(豊田自動織機)が、1−1−1−2位という圧倒的スコアで世界レベルを周囲に魅せつけた。その松崎ペアと、昨年の全日本スナイプ優勝の児玉・田中ペア(豊田自動織機)、同大会4位で今年の西半球選手権代表の武居・伊藤ペア(アイシン・エーアイ)。今大会の全レースにおいて、この3艇が段違いのスピードでフリートを支配する展開となった。惜しくも1レース目で武居ペアが、3レース目では児玉ペアが黒色旗ルールで失格となってしまったが、この3艇の全く隙のないレース展開は、スナイプにおいても“格差の時代”が到来したのかと思わせるほど、後続艇との距離差を生み出していた。

 

 

 

 

 

 

日目。またもしばらく風待ちの後、北風と南風がぶつかり合う。最終的に南西からの風、地元の選手が呼ぶ“三井寺の風”となる。左右の岸から小刻みに湧き出て、素早く走り去る大小様々な形を成したパフ。決してレース海面全体に均等な影響を与えない周期の短い大きなシフト。初めて琵琶湖でこの風に遭遇したセーラーは、8割以上が琵琶湖を嫌いになる、と筆者は推測する。長年、多くの選手たちを泣かせ続けたこのオフショアも、南岸のマンション開発が進み、風の流れ道も10年前とは少しづつ変わってきているようだ。この、どんなスピード差も関係なしにしてしまうトリッキーな風の中、児玉・田中ペアが1−1位と前日の失格の鬱憤を晴らす。しかしながら、この日も7−2位と纏めた松崎・杉浦ペアが圧勝でレガッタを制した。学生ながらも全レースをシングルで纏めた西村・前田ペア(京都産業大学)が2位と健闘。中部勢に唯一対抗していた琵琶湖の雄、吉岡・福本ペア(同志社OB)は、5レース目に19位とスコアを乱してしまい、3位に甘んじた。

 

ここ数年、豊田自動織機チームは同時期に博多湾で開催される西日本ウィークに出場していたのだが、今年は何故か琵琶湖にやってきた。その理由を松崎選手に尋ねてみると、「あっちは森田(本田技研熊本)がいなくなったから……」と、ライバルの海外赴任を理由にした。しかしながら、どうやら本当の目的は“軽風下でのスピード強化”にあったようだ。世界タイトルに最も近づいた日本人が、まだスキッパーとしては手にしていない日本タイトルを真剣に欲している(松崎選手は88年大会でクルーとして全日本優勝)。その同僚の意志に呼応するかのように「俺もマイアミ(西半球)をキャンセルして、ポルトガル(ワールド)を目指すんだ」と児玉選手。初タイトルを目指す世界2位ペアと、世界へのリベンジを誓う現ナショナル・チャンピオン。今年の全日本スナイプが開催される牛窓では、軽風でのレースが多くなるだろう。彼らはそれを攻略する為、コンディションの似た琵琶湖へトレーニングに来たという訳である。

 

筆者としては、9連休をもらいながらも、ヨットに乗ったのはこの大会の二日間だけ。子供が生まれてから最初の連休なので、それはそれで有意義に過ごせたと思っている。ある連休の、ほんの僅かなひととき。その短い時間で魅せつけられた、高い技術レベルと熱い意志。例年以上にヨットに触れることのできなかった連休ではあったが、なぜかいつも以上に充実感を味わえている。高い山が、そこにくっきりと見えたから、これから登っていくのが楽しみだ。■

(文中敬称略)

 

 

May Regatta 2006

3-4 May 2006

Total

 

1st

松崎・杉浦(豊田自動織機)

14

2nd

西村・前田(京都産業大学)

34

3rd

吉岡・福本(東洋紡/京都銀行)

43

4th

井田・浅利(島津製作所/同志社大学)

44

5th

西村・板垣(同志社大学)

54

 

  6races(no cut)

 

 

 

 

 

 

 

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