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Fullhike style of J-snipe |
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race report 020
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昨年は、無風によりノーレースとなってしまった同志社ウィーク。全日本インカレでも風に恵まれなかった琵琶湖に、どれだけ選手が集まるのか懸念されたが、それでも多くのスナイプセーラーたちが今シーズンに名乗りを上げるため、春の湖上に集結した。
text by Koji Ida photographs by Koji Ida |
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久々のレースレポートである。本紙で掲載した前回の原稿が一昨年の全日本スナイプだから、相当サボったことになる。サボった期間の長い分だけ再開するのも緊張するが、今シーズンは出来る限りレースに参加してレポートしていきたいと思うので、以前と変わらぬ駄文で申し訳ないがお付き合い願いたい。
全国から66チームのスナイプセーラーが集結し、同志社ウィーク2008が開催された。国内のオープンレースとしては、江ノ島で行なわれる東日本スナイプと並び、一番のビックフリートを形成する大会である。東日本スナイプが夏場に行なわれるのに対して、同志社ウィークが大学ヨット部に新入生の加わる前の三月に開催されることを考えれば、この国で最も選手召集力のあるイベントといっても言い過ぎではない。
この大会は同志社大学ヨット部OB会主催ということになっているが、その春に同校を卒業する四回生が中心となって企画・準備し、後輩たちに実戦練習の機会を与える、という趣旨ではじまったものである。それゆえ同大ヨット部の卒業式的な意味合いも持っており、そんなセンチメンタルな想いを含んでいることが全国に伝わって、まだ雪解け水に凍える琵琶湖へ多くのセーラーを呼び寄せるのかもしれない。
社会人トップ選手たちからすれば、この大会はそのシーズンの開幕戦として認知されており、出場しなければ今シーズンを出遅れることになる。新チームを結成したばかりの大学ヨット部からすれば、このシーズン最初のレースで結果を出すことにより、全国のライバルに対して「今年の○○大学は強い」と意識させることができる。それぞれの選手とチームが、それぞれの思惑をもって、今シーズンに「宣戦布告」をするために琵琶湖へ集う。同志社ウィークというイベントに多くの選手が集まる理由には、そういった真意が隠れているのではないだろうか。
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レース初日、琵琶湖は春の高気圧に覆われた。初夏以降であれば地表が温められて、琵琶湖中心部から柳ヶ崎沖に向かって北よりの風が吹き込んでくるのだが、この春の時期はそこまで地表の温度上昇が期待できない。「今年もノーレースだろうか・・・」と不安に思いながら午前中を風待ちで過ごす。しかしながら予想よりも気温があがり、正午前になって北から3〜5m/sの風がコンスタントに湖面を支配した。その風で、比較的ショートなコース設定であったが3レースを実施することができた。
初日の成績は、白石・大井ペア(ノースセール・ジャパン)が、3−4−2位で9点とスコアをまとめ、トップに立つ。松崎・田中ペア(豊田自動織機)が13点(1−11−1)、西居・橋本ペア(松喜屋)が15点(2−5−8)と僅差で追う。同志社ウィークという大会の特色は、そのスタートにある。シーズンが始まったばかりで、レース経験の浅い学生選手が大半を占めるこの大会では、毎レースのようにゼネラルリコールが繰り返される。ビックフリートでのスタート技術が未熟な選手たちは、スタートラインの位置を把握できない状態でアプローチしてくる。せっかくトランジット(スタートラインの延長線上の風景)を確認していても、最初からそれを視認できないポジションに位置取っているため、ラインと自艇の距離を計ることが出来ない。それは目隠しをしてスタートラインに並んでいるのと同じであり、艇団は黒色旗ルールも無視して歪なラインを形成する。スタート一分前からフリートの半分以上がライン上に位置していたり、はたまたスタートホーンが鳴った瞬間でも十艇身以上ラインまで距離があるときもある。そんな予測不可能な集団を如何にかわしてグッドスタートを決めるか。選手たちの技術が向上したシーズン後半とは違い、この時期のレースではこの点に注意を払わなければ、スコアをまとめることは出来ない。 |
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そういった意味で、この特性を十分に理解していたのが地元琵琶湖で活動を続けるベテランの西居・橋本ペア。彼らは三つのレースすべてで有利サイドからのピンエンドスタートを決めた。不確かな集団にあわせるのではなく、固定されたターゲットにあわせてスタートを決める。そこに集中することで、第一上マークの順位を安定させることに成功している。逆にリコール集団に飲み込まれ、黒色旗ルールに引っかかってしまったのが安部・山近ペア(シルトロニック・ジャパン)と児玉・杉浦ペア(豊田自動織機)。ワールドや西半球などのハイレベルなレガッタを主戦場とする選手の方が、この落とし穴にはまりやすいのかもしれない。また筆者のように、この特性を知っているがゆえに消極的なスタートをすると、上マークまでの距離が短いのでポジションを挽回することができず、スコアを崩してしまうことになる。攻めれば出るし、守れば上がれない。そんな難しさを持ったレガッタである。
レース二日目は、近づいてきた低気圧の影響で朝から薄雲がはっていたために気温が上がりきらない。それゆえに湖面が風紋に覆われることなく、初日3レースのみの結果で大会を終えた。初日に課題を残した選手たちにとってはフラストレーションの蓄積する大会となったかもしれない。しかしながら、次のレースと今後のトレーニングに課題を見出せたということで、シーズン開幕の大会として意味を持たせられたのではないだろうか。この日の風待ちの間、学生選手たちが社会人トップ選手のところへ艤装を見学に来たり、技術的な質問をしてみたり。その風景を眺めていると、風がなくてレースができなくても、この琵琶湖に集まってもらう価値があることを実感できる。ただ筆者のところへ来る学生は、艤装やセーリング技術ではなく、「KAZIの連載、毎月楽しみにしています!」「Fullhikeって、次はいつ更新されるんですか?」という質問ばかり。学生たちにとって、筆者はもうセーラーではなく、ライターとして認知されているようで、嬉しいやら、哀しいやら。そんな複雑な心境で自艇を整備していると、松崎選手や安部選手、白石選手などのトップセーラーが「その艤装はダメでしょ〜」と、いちいちチェックしてくれる。哀しいくらいに沢山ダメ出しされたので、筆者にとっても価値のある風待ちだった。
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優勝した白石選手は、今シーズンは同じノースセール・ジャパン所属である中村匠選手のクルーとなって、来年のサンディエゴ・ワールドを目指すそうだ。近年の国際大会でも結果を出し始め、サンチェス(スペイン)など欧州の実力者も採用しているノース・ジャパンであるが、スナイプで最大のマーケットを持つ北米エリアでは、ここ数年クァンタム・サンディエゴがNo.1シェアを維持している。この牙城を崩すには、クァンタムの本拠地での世界選手権で結果を出すのが一番手っ取り早い、という訳である。筆者としては、特定のサプライヤーを持ち上げるような表現はしたくないが、ビジネス戦略を背負ったキャンペーンに取り組むからこそ、よりよいセールが開発されるだろうと期待する。このキャンペーン自体がノースセール・ジャパンにとって、世界への「宣戦布告」なのだ。白石選手のクルーを務めた大井選手は、470でロンドン五輪を目指すことを決意し、オクムラボートを退社して地元千葉に帰り、トレーニングを始めている。安部・山近ペアと高橋・加藤ペア(豊田自動織機)は、11月にウルグアイで開催される西半球選手権への出場を表明した。それぞれが、来るべき本番に向けて挑戦することを宣言する。二日目の風待ちの間、みんなとの雑談の中にまじっていた、それぞれの「宣戦布告」。今シーズンもセーリングアスリートたちの長い戦いが始まった。■ (文中敬称略) |
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Doshisha Week 200822-23 March 2008 Total |
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1st |
白石・大井 (ノースセール・ジャパン) |
9 |
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2nd |
松崎・田中 (豊田自動織機) |
13 |
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3rd |
西居・橋本 (チーム松喜屋) |
15 |
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4th |
高橋・加藤 (豊田自動織機) |
25 |
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5th |
秋山・三浦 (静岡ガス) |
26 |
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6th |
川副・好本 (同志社大学) |
31 |
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7th |
西村・福本 (京産大OB/同志社大OB) |
35 |
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8th |
中川・小寺 (立命館大OB) |
36 |
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9th |
安森・森本 (三菱重工広島) |
39 |
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10th |
井田・山崎 (島津製作所) |
41 |
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66boats/3races(no cut) |
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